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王子の暗殺劇 2
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「へ、陛下!!私たちは何もしておりません!!」
「父上、どういうことですか?!」
「見苦しい!証拠は挙がっておる。お前たちが暗殺者を雇い、狩場でエリックを狙わせたことは明白だ。」
「そんな!!父上、何かの間違いです!」
ヘンリーとアレクシアがどう叫ぼうと騎士の拘束は解かれない。
「証人をこれへ!」
国王の命令でドアが開き、男が連れてこられた。
「第二王子の暗殺を誰に依頼されたのか申してみよ!」
取り調べにより、ボロボロになっている男は抵抗する気力をすでに失っていた。
「・・・ヘンリー殿下です。」
「貴様!嘘をつくな!」
国王は書類を取り出すと皆に掲げた。
「ここにヘンリーとこの男との間に取り交された契約書もある。ヘンリーのサインと印に間違いない」
「な!そんなばかな!ありえません。父上!きちんと調査を!暗殺依頼で証拠など残すはずがありません!誰かが陥れようとしているのです!」
「兄上、言い逃れは見苦しいですよ。書類で証拠が残るのを嫌がったあなたに、この男が契約書を作らないと引き受けないといったのでしょう?こいつらだって、トカゲのしっぽきりされないよう対処してるんですよ」
「しらない!俺はお前を殺そうとしたことなどない!」
「私が何も知らないとでも?」
エリックはヘンリーの胸ぐらをつかみ引き寄せると耳元で何かをささやいた。
ヘンリーは目を大きく見開くと力をなくしたように崩れ落ちた。
「父上、兄上とアレクシア妃の身柄は私にいただけませんか?当事者の私に取り調べさせていただきたいのです。」
「・・・。許可する。」
エリックの指示で、エリックの護衛たちが二人の身柄を連れて行こうとする。
「陛下、お待ちください。王族の取り調べや身柄拘束は我々近衛騎士第一部隊の役目でございます。それに当事者のエリック殿下では私怨が入る恐れがあるかと存じます。」
と、取り押さえられた二人の後ろで構えている部隊長のカインがもっともな意見を述べた。
私怨から害されても困る、証言を歪められても困るからだ。
国王はじろりとカインを見、エリックを見た。
「エリックに任せる。その結果に不正があれば私が指揮を執る。その時はエリックから王位継承権をはく奪する。エリック、それでよいな?」
「承知しました。では、兄上とアレクシア妃をお連れしろ」
エリックの護衛たちが二人を連れ出すと、ざわめきは収まっていないもののどこかほっとしたような空気が流れていた。
国王は、舞踏会に参加している人々に騒がせたことを詫び、先ほど倒れた第三王子は命に別条がないことが伝えられた。
ヘンリーたちが拘束されたことで、大広間のドアは開放された。しかし、王家の醜聞に立ち会った者たちの、心配や悲観の顔の裏で隠しきれない好奇心と愉楽とで立ち去るものは少なかった。
さすがに倒れたルーフェの母フローラは退出したが、ほかの王族は国外の賓客や国内外の貴族たちへの説明や詫びのため忙しく立ち回っていた。
そこに、大勢の足音が聞こえ、大広間のドアが大きくあけられた。そこにはジェラルドとエリックの護衛騎士数名が近衛騎士第一部隊長のカインを後ろ手に縛りあげて立っていた。
「何事だ?」
「陛下、申し上げます。カイン騎士隊長がヘンリー殿下とアレクシア妃を殺害しようとしたため、取り押さえた次第です。目撃者はヘンリー殿下とアレクシア妃殿下並びに、隠れて護衛していた我々3名、国王直属影部隊の2名でございます。」
国王直属の影が目撃者ではしらを切りとおすのは無理だった。
「なんだと?カイン、どういうつもりだ?」
「わたくしは・・・エリック殿下とルーフェ殿下を害そうとした二人が許せなかったのです。私は王家の為に!」
「エリックには私怨で動くなといった貴様がか?」
「・・・王族を害したものを処するのが私の役目でございます」
「ふん、正式な調べも審議も経ず処刑する。貴様の王家への忠誠とやらはそんなものなのか。よくもそんな恥さらしが近衛騎士に入れたものだね。」
エリックが嘲笑うように言うと、顔を真っ赤にしてカインはにらみつける。
「そうそう、先ほど報告があったんだがお前の家族が皆、自宅で切り殺されていたそうだ。お前がやったのかい?」
間が抜けたような顔でカインはエリックを見た。
「え?」
「お前が王族を手にかけると決意していて、覚悟を決めて先に家族を殺してきたのかと聞いているんだ。」
それを聞いてカインは唸り声をあげて走り出そうとした。縛られて縄でつながれて移動ができないのに血走った目で暴れてもがいた。
「うああああ!!ゆる・・ゆるさない!!よくもっよくも!!ぐああああっ!」
怒りのあまり言葉にならない。
「カイン、家族に王族殺しの汚名を着せたくないからお前がやったんだろ?立派な心がけだね」
さらにあおるエリックに、カインは咬みつくように叫ぶ。
「私が愛する家族を殺すわけがないだろう!!フローラ妃が・・・あの女が!あの女が!殺してやる、絶対に殺してやる!」
広間の者たちが再び注目する中、何人かがそっと動き出した。しかしいつの間にかすべての扉が外側から閉鎖されていた。
「フローラ妃がヘンリー殿下とアレクシア妃を殺せと!そうしないと私の妻と子を殺すと・・・ずっと屋敷で人質に・・・ああ・・・」
カインは泣き崩れてしまった。
「父上、どういうことですか?!」
「見苦しい!証拠は挙がっておる。お前たちが暗殺者を雇い、狩場でエリックを狙わせたことは明白だ。」
「そんな!!父上、何かの間違いです!」
ヘンリーとアレクシアがどう叫ぼうと騎士の拘束は解かれない。
「証人をこれへ!」
国王の命令でドアが開き、男が連れてこられた。
「第二王子の暗殺を誰に依頼されたのか申してみよ!」
取り調べにより、ボロボロになっている男は抵抗する気力をすでに失っていた。
「・・・ヘンリー殿下です。」
「貴様!嘘をつくな!」
国王は書類を取り出すと皆に掲げた。
「ここにヘンリーとこの男との間に取り交された契約書もある。ヘンリーのサインと印に間違いない」
「な!そんなばかな!ありえません。父上!きちんと調査を!暗殺依頼で証拠など残すはずがありません!誰かが陥れようとしているのです!」
「兄上、言い逃れは見苦しいですよ。書類で証拠が残るのを嫌がったあなたに、この男が契約書を作らないと引き受けないといったのでしょう?こいつらだって、トカゲのしっぽきりされないよう対処してるんですよ」
「しらない!俺はお前を殺そうとしたことなどない!」
「私が何も知らないとでも?」
エリックはヘンリーの胸ぐらをつかみ引き寄せると耳元で何かをささやいた。
ヘンリーは目を大きく見開くと力をなくしたように崩れ落ちた。
「父上、兄上とアレクシア妃の身柄は私にいただけませんか?当事者の私に取り調べさせていただきたいのです。」
「・・・。許可する。」
エリックの指示で、エリックの護衛たちが二人の身柄を連れて行こうとする。
「陛下、お待ちください。王族の取り調べや身柄拘束は我々近衛騎士第一部隊の役目でございます。それに当事者のエリック殿下では私怨が入る恐れがあるかと存じます。」
と、取り押さえられた二人の後ろで構えている部隊長のカインがもっともな意見を述べた。
私怨から害されても困る、証言を歪められても困るからだ。
国王はじろりとカインを見、エリックを見た。
「エリックに任せる。その結果に不正があれば私が指揮を執る。その時はエリックから王位継承権をはく奪する。エリック、それでよいな?」
「承知しました。では、兄上とアレクシア妃をお連れしろ」
エリックの護衛たちが二人を連れ出すと、ざわめきは収まっていないもののどこかほっとしたような空気が流れていた。
国王は、舞踏会に参加している人々に騒がせたことを詫び、先ほど倒れた第三王子は命に別条がないことが伝えられた。
ヘンリーたちが拘束されたことで、大広間のドアは開放された。しかし、王家の醜聞に立ち会った者たちの、心配や悲観の顔の裏で隠しきれない好奇心と愉楽とで立ち去るものは少なかった。
さすがに倒れたルーフェの母フローラは退出したが、ほかの王族は国外の賓客や国内外の貴族たちへの説明や詫びのため忙しく立ち回っていた。
そこに、大勢の足音が聞こえ、大広間のドアが大きくあけられた。そこにはジェラルドとエリックの護衛騎士数名が近衛騎士第一部隊長のカインを後ろ手に縛りあげて立っていた。
「何事だ?」
「陛下、申し上げます。カイン騎士隊長がヘンリー殿下とアレクシア妃を殺害しようとしたため、取り押さえた次第です。目撃者はヘンリー殿下とアレクシア妃殿下並びに、隠れて護衛していた我々3名、国王直属影部隊の2名でございます。」
国王直属の影が目撃者ではしらを切りとおすのは無理だった。
「なんだと?カイン、どういうつもりだ?」
「わたくしは・・・エリック殿下とルーフェ殿下を害そうとした二人が許せなかったのです。私は王家の為に!」
「エリックには私怨で動くなといった貴様がか?」
「・・・王族を害したものを処するのが私の役目でございます」
「ふん、正式な調べも審議も経ず処刑する。貴様の王家への忠誠とやらはそんなものなのか。よくもそんな恥さらしが近衛騎士に入れたものだね。」
エリックが嘲笑うように言うと、顔を真っ赤にしてカインはにらみつける。
「そうそう、先ほど報告があったんだがお前の家族が皆、自宅で切り殺されていたそうだ。お前がやったのかい?」
間が抜けたような顔でカインはエリックを見た。
「え?」
「お前が王族を手にかけると決意していて、覚悟を決めて先に家族を殺してきたのかと聞いているんだ。」
それを聞いてカインは唸り声をあげて走り出そうとした。縛られて縄でつながれて移動ができないのに血走った目で暴れてもがいた。
「うああああ!!ゆる・・ゆるさない!!よくもっよくも!!ぐああああっ!」
怒りのあまり言葉にならない。
「カイン、家族に王族殺しの汚名を着せたくないからお前がやったんだろ?立派な心がけだね」
さらにあおるエリックに、カインは咬みつくように叫ぶ。
「私が愛する家族を殺すわけがないだろう!!フローラ妃が・・・あの女が!あの女が!殺してやる、絶対に殺してやる!」
広間の者たちが再び注目する中、何人かがそっと動き出した。しかしいつの間にかすべての扉が外側から閉鎖されていた。
「フローラ妃がヘンリー殿下とアレクシア妃を殺せと!そうしないと私の妻と子を殺すと・・・ずっと屋敷で人質に・・・ああ・・・」
カインは泣き崩れてしまった。
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