22 / 51
父、怒る
しおりを挟む
「お帰り、二人とも。大変だったろう。よくやってくれた。」
ジェラルドは帰宅した二人をねぎらった。
「詳細はエリック殿下からお聞きしたよ。・・・シャルロット、ご苦労だった。」
シャルロットをそっと抱き寄せた。
「シリル、殿下が、お前が学院を卒業したら自分の元に欲しいとおっしゃっていたよ。大変な中、よく頑張ってきたな」
「ありがとうございます!」
「今日はもう疲れただろう、ゆっくり休みなさい。積もる話は明日聞くよ。」
シャルロットはシリルのことを話したかったが、ゆっくり時間を取って話した方が良いとジェラルドの言う通り、湯あみで旅の汚れを落とした後ベッドに横たわった。
思っていたより疲れていたのか瞬間に深い眠りに落ちていった。
翌朝、食堂に行くとジェラルドとシリルがすでに席についていた。
「お待たせいたし・・・」
と言いかけて、シリルの顔を見て止まってしまった。
「ど、どうしたの?」
シリルの左頬は腫れあがり、変色していた。
「なんでもありません。」
ジェラルドは不機嫌な顔をしており、シリルは痛々しい姿をさらしながらも神妙な顔をしていた。
ジェラルドの顔をちらっと見るも
「食事を始めよう。」
と何事もなかったようにパンを手に取った。
食事が終わると、サロンに誘われた。
「お父様、登城はよろしいのですか?」
「遅れると連絡済みだ、心配いらないよ。シャルロットに話がある。」
すでに届けられていたお茶セットでお茶を入れると、一通の手紙を手渡された。
王家の紋章が刻印された手紙だ。慌てて中身を読んで驚いた。
「お、お父様?!これ・・・」
「エリック殿下から婚約者候補への打診だ。まったく、殿下にも困ったものだよ」
頭を抱えながらジェラルドは言った。
「お父様、私には無理です。」
「わかっている。もちろん受けるつもりはない、だが一応お前の気持ちを確認したかった。」
言いながら、昨夜シリルから聞いた衝撃的な事実からしてシャルロットを王家に嫁がせることはできない。
本人がどう思おうとこの話は断るしかないと思っている。
「そうか、こちらで断っておく。」
「ですが、お断りできるのでしょうか?」
「任せてくれればいい。しょうもないことで煩わせてすまなかったな。」
(お父様・・・しょうもないって・・相手は王家ですよ。)
「それで、シリルがいると苦痛が消失すると聞いたのだが本当か?」
「そうなのです!お父様。シリルが触れてくれるとあれが嘘のように消えて行って・・・本当にうれしくて・・・こんなことがあるなんて」
静かに涙を流すシャルロットを優しく抱きしめた。
「そうか、シリルがお前の役に立つか。あいつがそばにいて嫌ではないのか?」
最近態度を変えたとはいえ、シリルのシャルロットに対する仕打ちはジェラルドも知っていた。何度か苦言を呈したが聞く耳を持たなかった。
「はい。でも、私の都合で側にいてもらおうとは思っていません。シリルの時間を奪うことはできませんから。シリルという存在がいてくれるだけで私の心は救われました。」
「シリルがすすんで側にいたいといえば、おいてやれるか」
「お父様、私のことをずっと心配してきてくれたからといって、シリルに無理強いしないでくださいね。」
「もちろんだよ。シャルロットがシリルをどう思っているか聞きたいだけだよ。
「それは・・・そばにいてくれれば心強く思います。今回、シリルがいなければ・・・私は正気を保てなかったかもしれません」
ジェラルドはシャルロットの背中を撫でると
「もう、この役目もこれが最後かもしれないね。寂しいが、喜ばしいことだ。」そういって、笑うと身を離し、登城すると言って出て行った。
ジェラルドは帰宅した二人をねぎらった。
「詳細はエリック殿下からお聞きしたよ。・・・シャルロット、ご苦労だった。」
シャルロットをそっと抱き寄せた。
「シリル、殿下が、お前が学院を卒業したら自分の元に欲しいとおっしゃっていたよ。大変な中、よく頑張ってきたな」
「ありがとうございます!」
「今日はもう疲れただろう、ゆっくり休みなさい。積もる話は明日聞くよ。」
シャルロットはシリルのことを話したかったが、ゆっくり時間を取って話した方が良いとジェラルドの言う通り、湯あみで旅の汚れを落とした後ベッドに横たわった。
思っていたより疲れていたのか瞬間に深い眠りに落ちていった。
翌朝、食堂に行くとジェラルドとシリルがすでに席についていた。
「お待たせいたし・・・」
と言いかけて、シリルの顔を見て止まってしまった。
「ど、どうしたの?」
シリルの左頬は腫れあがり、変色していた。
「なんでもありません。」
ジェラルドは不機嫌な顔をしており、シリルは痛々しい姿をさらしながらも神妙な顔をしていた。
ジェラルドの顔をちらっと見るも
「食事を始めよう。」
と何事もなかったようにパンを手に取った。
食事が終わると、サロンに誘われた。
「お父様、登城はよろしいのですか?」
「遅れると連絡済みだ、心配いらないよ。シャルロットに話がある。」
すでに届けられていたお茶セットでお茶を入れると、一通の手紙を手渡された。
王家の紋章が刻印された手紙だ。慌てて中身を読んで驚いた。
「お、お父様?!これ・・・」
「エリック殿下から婚約者候補への打診だ。まったく、殿下にも困ったものだよ」
頭を抱えながらジェラルドは言った。
「お父様、私には無理です。」
「わかっている。もちろん受けるつもりはない、だが一応お前の気持ちを確認したかった。」
言いながら、昨夜シリルから聞いた衝撃的な事実からしてシャルロットを王家に嫁がせることはできない。
本人がどう思おうとこの話は断るしかないと思っている。
「そうか、こちらで断っておく。」
「ですが、お断りできるのでしょうか?」
「任せてくれればいい。しょうもないことで煩わせてすまなかったな。」
(お父様・・・しょうもないって・・相手は王家ですよ。)
「それで、シリルがいると苦痛が消失すると聞いたのだが本当か?」
「そうなのです!お父様。シリルが触れてくれるとあれが嘘のように消えて行って・・・本当にうれしくて・・・こんなことがあるなんて」
静かに涙を流すシャルロットを優しく抱きしめた。
「そうか、シリルがお前の役に立つか。あいつがそばにいて嫌ではないのか?」
最近態度を変えたとはいえ、シリルのシャルロットに対する仕打ちはジェラルドも知っていた。何度か苦言を呈したが聞く耳を持たなかった。
「はい。でも、私の都合で側にいてもらおうとは思っていません。シリルの時間を奪うことはできませんから。シリルという存在がいてくれるだけで私の心は救われました。」
「シリルがすすんで側にいたいといえば、おいてやれるか」
「お父様、私のことをずっと心配してきてくれたからといって、シリルに無理強いしないでくださいね。」
「もちろんだよ。シャルロットがシリルをどう思っているか聞きたいだけだよ。
「それは・・・そばにいてくれれば心強く思います。今回、シリルがいなければ・・・私は正気を保てなかったかもしれません」
ジェラルドはシャルロットの背中を撫でると
「もう、この役目もこれが最後かもしれないね。寂しいが、喜ばしいことだ。」そういって、笑うと身を離し、登城すると言って出て行った。
62
お気に入りに追加
832
あなたにおすすめの小説
私も貴方を愛さない〜今更愛していたと言われても困ります
せいめ
恋愛
『小説年間アクセスランキング2023』で10位をいただきました。
読んでくださった方々に心から感謝しております。ありがとうございました。
「私は君を愛することはないだろう。
しかし、この結婚は王命だ。不本意だが、君とは白い結婚にはできない。貴族の義務として今宵は君を抱く。
これを終えたら君は領地で好きに生活すればいい」
結婚初夜、旦那様は私に冷たく言い放つ。
この人は何を言っているのかしら?
そんなことは言われなくても分かっている。
私は誰かを愛することも、愛されることも許されないのだから。
私も貴方を愛さない……
侯爵令嬢だった私は、ある日、記憶喪失になっていた。
そんな私に冷たい家族。その中で唯一優しくしてくれる義理の妹。
記憶喪失の自分に何があったのかよく分からないまま私は王命で婚約者を決められ、強引に結婚させられることになってしまった。
この結婚に何の希望も持ってはいけないことは知っている。
それに、婚約期間から冷たかった旦那様に私は何の期待もしていない。
そんな私は初夜を迎えることになる。
その初夜の後、私の運命が大きく動き出すことも知らずに……
よくある記憶喪失の話です。
誤字脱字、申し訳ありません。
ご都合主義です。
妹の身代わりとされた姉は向かった先で大切にされる
桜月雪兎
恋愛
アイリスとアイリーンは人族であるナーシェル子爵家の姉妹として産まれた。
だが、妹のアイリーンは両親や屋敷の者に愛され、可愛がられて育った。
姉のアイリスは両親や屋敷の者から疎まれ、召し使いのように扱われた。
そんなある日、アイリスはアイリーンの身代わりとしてある場所に送られた。
それは獣人族であるヴァルファス公爵家で、アイリーンが令息である狼のカイルに怪我を負わせてしまったからだ。
身代わりとしてやった来たアイリスは何故か大切にされる厚待遇を受ける。
これは身代わりとしてやって来たアイリスに会ってすぐに『生涯の番』とわかったカイルを始めとしたヴァルファス家の人たちがアイリスを大切にする話。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
旦那様に離縁をつきつけたら
cyaru
恋愛
駆け落ち同然で結婚したシャロンとシリウス。
仲の良い夫婦でずっと一緒だと思っていた。
突然現れた子連れの女性、そして腕を組んで歩く2人。
我慢の限界を迎えたシャロンは神殿に離縁の申し込みをした。
※色々と異世界の他に現実に近いモノや妄想の世界をぶっこんでいます。
※設定はかなり他の方の作品とは異なる部分があります。
双子攻略が難解すぎてもうやりたくない
はー
BL
※監禁、調教、ストーカーなどの表現があります。
22歳で死んでしまった俺はどうやら乙女ゲームの世界にストーカーとして転生したらしい。
脱ストーカーして少し遠くから傍観していたはずなのにこの双子は何で絡んでくるんだ!!
ストーカーされてた双子×ストーカー辞めたストーカー(転生者)の話
⭐︎登場人物⭐︎
元ストーカーくん(転生者)佐藤翔
主人公 一宮桜
攻略対象1 東雲春馬
攻略対象2 早乙女夏樹
攻略対象3 如月雪成(双子兄)
攻略対象4 如月雪 (双子弟)
元ストーカーくんの兄 佐藤明
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
婚約破棄目当てで行きずりの人と一晩過ごしたら、何故か隣で婚約者が眠ってた……
木野ダック
恋愛
メティシアは婚約者ーー第二王子・ユリウスの女たらし振りに頭を悩ませていた。舞踏会では自分を差し置いて他の令嬢とばかり踊っているし、彼の隣に女性がいなかったことがない。メティシアが話し掛けようとしたって、ユリウスは平等にとメティシアを後回しにするのである。メティシアは暫くの間、耐えていた。例え、他の男と関わるなと理不尽な言い付けをされたとしても我慢をしていた。けれど、ユリウスが楽しそうに踊り狂う中飛ばしてきたウインクにより、メティシアの堪忍袋の緒が切れた。もう無理!そうだ、婚約破棄しよう!とはいえ相手は王族だ。そう簡単には婚約破棄できまい。ならばーー貞操を捨ててやろう!そんなわけで、メティシアはユリウスとの婚約破棄目当てに仮面舞踏会へ、行きずりの相手と一晩を共にするのであった。けど、あれ?なんで貴方が隣にいるの⁉︎
第一王子様は妹の事しか見えていないようなので、婚約破棄でも構いませんよ?
新野乃花(大舟)
恋愛
ルメル第一王子は貴族令嬢のサテラとの婚約を果たしていたが、彼は自身の妹であるシンシアの事を盲目的に溺愛していた。それゆえに、シンシアがサテラからいじめられたという話をでっちあげてはルメルに泣きつき、ルメルはサテラの事を叱責するという日々が続いていた。そんなある日、ついにルメルはサテラの事を婚約破棄の上で追放することを決意する。それが自分の王国を崩壊させる第一歩になるとも知らず…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる