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夜会

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 夜会の日、王族の方々に挨拶を済ませると早々にジェラルドはシャルロットを連れて帰ろうとした。
「父上、まだ他の方々との挨拶がまだありますよ。」
「いいんだ、もう用は済んだ。お前はゆっくりするがいい。馬車はまた回しておく」
 視線を下に落とし歩いているシャルロットの手を引くジェラルドに声がかけられた。
 顔見知りの貴族が挨拶をしようと呼び止めたのだ。

 思わずつられて顔を上げたシャルロットは急に体をこわばらせた。
「お・・父様」
 急に体をこわばらせたシャルロットに気が付いたジェラルドは、声をかけてきた相手に簡単な挨拶を交わすと娘の調子が悪いのでと断り、壁際にシャルロットを連れて行き、その体を倒れないように抱きしめた。
「シリル!どこか部屋を用意するよう頼んできてくれ」
「わかりました」
 二人の尋常ではない様子にシリルは言うとおりに動いた。

 空き部屋を用意してもらい部屋に入った途端、それまで我慢していたのかシャルロットは痛い痛いと苦しみだした。
 お腹を両手で押さえ込み、体を丸めている。ジェラルドはソファーに座らせたシャルロットを抱きしめ背中を一生懸命にさすってやっている。

 ああ、とここでもシリルは一つ理解した。
 父とシャルロットが抱き合っていたように見えたのも、こうしてシャルロットが苦しんでいるのを介抱していたのだろう。

 自分の馬鹿さ加減が日に日に明らかになっていく。

 シャルロットは涙を流して苦しんでいる、見ていられないほどの苦しみだ。
「父上、姉上はどこか悪いのですか?」
「・・・。まあそうだな。私の責任でもある、ふがいない父親だ」
 少しずつ落ち着いたのか、シャルロットの息が穏やかに戻ってきた。
「すまなかったな。」
「いいえ、お父様。私の方こそいつもご迷惑をおかけしてごめんなさい。」
「・・・して、それは貴きお方か?」
「いいえ。存じ上げない方でした。」
「そうか。」
 再びジェラルドは娘を労わるように抱きしめた。
 シリルには二人の会話は理解できなかったが、口をはさめなかった。

 その夜、シャルロットの体調が気になりドアを完全に閉めず様子をうかがっていた。
 夕食もほとんど手を付けず青い顔をしたままだったからだ。

 ドアの開く音がし、覗くと暗がりにシャルロットが出てきたのが見えた。泣いているようで嗚咽が漏れている。
 その悲しげな姿にシリルの胸がきゅうっと何かに掴まれたように痛んだ。

 シャルロットはジェラルドの部屋のドアを小さくたたき、そっと入っていった。
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