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~古都編 第4章~

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[報告会議]

 「では只今よりロングレンジ号襲撃事件の報告会議を行う。・・・ガーヴェラ遠征部隊大隊長、報告をお願いする。」

 ルーストの号令により会議が始まった。会議に参加するのはルーストとナターシャ、親衛部隊大隊長を除く全大隊長と、彼の代わりに参加している親衛部隊の2人の隊長、そして元老院所属の年老いた大臣が5名であった。

 ガーヴェラはルーストの言葉を受け、報告を始めた。

 「では只今より先日発生した事件の報告を行わせて頂きます。・・・発生日時は10月2日の正午で、襲撃者はグリュンバルド大陸に縄張りを持つマフィア組織の一部と帝都軍の暗殺部隊でした。」

 「帝都軍だと⁉何故帝都の暗殺部隊が我が大陸で活動しているのだ⁉」

 大臣達が困惑を隠せずに狼狽え始めたが、ガーヴェラは報告を続ける。

 「・・・彼らの襲撃理由は、汽車に乗っていた元フォルエンシュテュール家の王女、『ロメリア・フィル・シュトルセン・フォルエンシュテュール』・・・現在では『サーフェリート』という姓を使用している彼女の抹殺です。王家の血を穢した罰として・・・」

 「その理由は確かなのか?」

 「自白剤によって只今リーダー格の男が情報を漏らしました。そして他に捉えていた部下達も同じことを証言しています。」

 「・・・」

 「さらにロメリア元王女の証言によると、彼女は以前リールギャラレーで開催されたワイバーンレースに参加した際に別の暗殺部隊から襲撃を受けたとのことです。」

 「その事件については俺の方でも調査済みだ。ガーヴェラが捕まえてきた奴らの特徴と事件当時の参加者の証言とも一致している。・・・よくもまぁ、俺達の大陸で好き放題やってくれるものだな・・・」

 航空部隊大隊長のクローサーが舌を打つと、ポケットに両手を突っ込む。まるで不良の座り方そのものだった。

 「・・・因みに今、ロメリア元王女は?」

 「彼女は今来賓用の部屋で休んでもらっています。本日はこの部屋で一晩過ごさせようかと・・・」

 「・・・帝都から追加の暗殺部隊が派遣される可能性は?」

 「ゼロ・・・とは言い切れません。彼女を狙って別の暗殺部隊が城内に侵入する恐れもあります。」

 ガーヴェラの報告に大臣達が騒ぎ始める。一方大隊長達は何も言葉を発することなく、黙り込んでいた。

 「ガーヴェラ大隊長!何故彼女を城の中へと招き入れたのだ!彼女は今も命を狙われているのだろう⁉我々も狙われたらどうなる⁉」

 「その点に関しては我ら2つの親衛部隊が対処いたします。現段階で城内と周囲の警戒を強化しており、常時戦闘態勢へと移行できるよう準備を整えております。ですので大臣の皆様はご安心してお過ごしください。」

 「・・・」

 第1親衛部隊隊長であるイルストが大臣達に進言する。彼の言葉を受けて大臣達は納得がいかないように顔をしかめながら互いに顔を見合わせる。

 会議が沈黙に包まれると、ガーヴェラは再び話し始めた。

 「そして・・・皆様にもう1つ・・・お伝えしなければならない事があります。」

 「伝えたいことだと?」

 ガーヴェラは懐に手を忍ばせると、1枚の紙を机の上に置いた。その紙は何かの契約書の用で、長い文章が書かれている下に赤い判子が押されていた。そのハンコを見た瞬間、海兵部隊大隊長のラグナロックが声を発した。

 「この判子は・・・我ら大隊長と元老院の者達だけが使用できるものだな。」

 「こんなものを何処で手に入れたんだい?」

 守護部隊大隊長であるロストルの言葉を受けてガーヴェラが返事をする。

 「これは拘束した襲撃者達の数名が汽車での輸送前に漏らした情報をもとに部下達が回収したものです。その情報には彼らが根城としていた場所も含まれており、そこで回収いたしました。」

 「・・・」

 「この紙には彼ら暗殺部隊を全面的に援助するということが書かれており、先程ラグナロック大隊長が言ったように私達しか使用することのできない判子が使用されています。・・・しかし署名は偽名であり、古都軍に所属している者、所属していた者、そして元老院の皆様方の名前とも一致しませんでした。・・・ですが、この印が使われた以上、我らの内誰かが判子を押したということです。」

 「ということは・・・ガーヴェラ大隊長。我々の中に裏切者がいるということですか?」

 第2親衛部隊隊長のウィンブルが尋ねると、ガーヴェラははっきりと頷いた。その瞬間、会議場が騒々しくなった。

 「何とっ・・・我々の中に裏切者がおるのか⁉」

 「ちっ・・・」

 「何だか不穏な空気になって来たね~。」

 「・・・」

 「だが帝都軍がこうも勝手に我々の大陸で行動している・・・そしてこのような誓約書も発見されたということは確かに援助を受けているという証拠・・・」

 「それに内部に裏切者がいるということは私達の情報も外部に漏れているということですわ。」

 「・・・少し前にエメラリア港がコーラス・ブリッツによって襲撃を受けましたが・・・彼らの襲撃のタイミングは我ら遠征部隊が街を離れた瞬間と同時でした。移動情報は我々軍部の者でしか共有されていないのに・・・まるでこちらの手をすべて読んでいるように常に先手を打たれてしまいました。恐らく・・・ナターシャ王女の言う通りだと思っています。」

 「ガーヴェラ大隊長、もしや貴女・・・この事件にコーラス・ブリッツも関わっていると思っておられるのか?」

 「十中八九、そう思っております。その証拠として。今回の汽車襲撃事件において敵勢力が使用した武器、防具は全てエメラリア港に配備されていたもので、コーラス・ブリッツの襲撃により、彼らが全て持っていったものでした。」

 「コーラス・ブリッツが彼らに武器と防具を提供した・・・そう言うことか。」

 「はい。」

 「何ということだ・・・では帝都軍とコーラス・ブリッツが繋がっているということではないのか⁉」

 「間違いなく、繋がっているでしょう。・・・そしてそこに我々の裏切者も。」

 ガーヴェラの言葉に全員言葉を失った。今この場に裏切者がいる・・・しかしそれを判断する決定的な証拠がない今、全員が疑心暗鬼の状態に陥ってしまっていた。

 全員の挙動が少し怪しくなった・・・その時だった。

 バァンッ!

 会議室のドアが勢い良く開き、そこから白いコートを身に纏った男が入ってきた。黒髪で、肩にかからない程度の長さがあり、激しく波打っている髪を揺らしている。寝起きなのか、髪が乱れていた。

 「うぃ~・・・すまんすまん、遅れちまったぜ、ルースト。・・・ていうかおいおいおいおいなんだよ、皆そんな辛気臭い顔して?」

 男は会議部屋を覆っている重く沈んだ空気をものともしない笑みを顔を赤くして浮かべていた。
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