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~看板娘とウェイター編 第5章~
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[元凶]
「お待たせしました!特産キノコのクリームシチューにトマトリゾット、野菜カレーです!」
何処の席にも客が座っており、様々な声が飛び交う店内でフォルトはジョージから教えてもらった料理を落とさないで運ぶ配膳方法をしっかりと駆使しながらドンドン料理を提供していく。
待ち望んだ料理が目の前に来たお客様達は子供の様に目を輝かせる。
「おお、来た来た!」
「このクリームシチューは祭りの日限定料理だからな~。涎が止まんね~。」
「小さいのにようこんなに料理一気に運んできたなぁ!頑張れよ、坊主!」
「っ!ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしください!」
フォルトは激励の言葉を貰うと丸い木のお盆を持って一礼する。フォルトが次に持っていく料理が調理場と客席の間にある机に並べられていたのでそれを取りに行こうとした時、後ろから声を掛けられた。
「ねぇ~?注文良いかしら~?」
「はい!良いですよ!」
フォルトはエプロンのポケットに入っている伝票を取り出して注文を受ける。フォルトは注文を聞き終えて軽くお辞儀をすると、その後ろの食べ終えた食器だけが残っている机を一気に綺麗にする。食器をお盆の上にのせて、綺麗な台拭きで拭きあげてから、待っているお客様をご案内し座らせる。そして食器と伝票を調理場へと持っていき、流れるように料理を運んでいく。
注文を聞き、料理を運び、料理を片付け、新たなお客様を席にご案内する・・・常に最適な動きを意識して立ち回ることにより、作業効率をよくすることが瞬時に求められる作業をもうかれこれ3時間以上ぶっ続けでフォルトはこなしていた。ジョージやロイナからは何度も身を案じる声を掛けて頂いたが、フォルトは何故がどんどん仕事を最適化していく作業が好きになって来ていた。
フォルトは昔から様々な作業をどう効率よく『攻略』していくか・・・それを考えるのが好きで、実際にその身で最適解を導き出した時なんかはもう興奮が止まらなくなる性格なのだった。
なのでこのような多業務をどんどん水が川を流れるが如く、雲が空を漂うが如く『自然に』こなしていくことが楽しくてしょうがなかったのだ。そのせいでフォルトの顔の筋肉は緩々になっていた。
フォルトはその作業の途中、外にいるロメリアの様子を見た。ロメリアは真夏の炎天下の中、大通りに出て一生懸命汗を流しながら客の呼び込みをしてくれている。そのおかげで、営業開始してから3時間経った現在でも店の前には長蛇の行列が出来ていた。
「さぁ、皆さんどうですか~!『食事処 ローゼンフレッシュ』ではこの祭りの期間でしか食べられない料理が沢山ありますよ~!急がないと、食材の在庫が切れちゃうかもよ~!」
ロメリアの声に釣られて道行く人々がどんどん列の後ろへと並んでいく。もうすっかり、この店の看板娘だ。
『ふふっ、ロメリアもあんなに汗をかきながら頑張っているなぁ・・・僕も頑張らないと!』
フォルトはそんなロメリアを見て微笑むと、気を引き締めて料理を運んでいく。
それから更に1時間が経った。夏場なので太陽は相変わらずほぼ真上で燦々と輝いており、店の前には相変わらず長い列が出来ている。
フォルトが食事を終えて出ていったお客様の食器を調理場へと持ってきた時、ロイナが入口から出ていった。すると、ロイナは店の前で呼び込みを行っているロメリアに声をかけた。
「ロメリアちゃん、呼び込みお疲れ様。しっかりと水は飲んでる?」
「はい!しっかりと水分は補給していますよ!熱中症になったら皆に迷惑をかけてしまいますからね!」
ロメリアは元気に答えると、ロイナは安心したように優しく微笑んだ。
「そうかい、それならよかった。・・・あ、言う事があったんだわ。」
「何ですか?」
「ロメリアちゃん、もう呼び込みは止めて配膳の方に回ってくれないかしら?ロメリアちゃんのおかげで予想以上のお客様が来店してくださってね、食材がなくなりそうなの・・・」
「そうなんですか・・・」
「営業時間は午後8時という事になっているけれども、今のままだと5時半ぐらいには食材が完全に無くなってしまいそうなのよね・・・だからもう呼び込みはここまでにして配膳の方お願いできるかしら?」
「はい、勿論です!・・・因みに、ロイナさん。」
「何?」
ロメリアは店の中で料理を運んでいるフォルトに視線を移す。両手だけではなく、両腕にも料理を乗せて運んでいるバランスは全くぶれておらず、非常に素早く動いていた。
「フォルトはどんな感じですか?ちゃんと仕事はこなせていますか?」
「こなせているも何も、完璧よあの子!注文も何も間違えないし、お客様の評判もいいし、料理も落とさない上に一気に大量に素早く持っていけているし何より動きに一切の無駄が無い・・・ずっとうちに欲しいぐらいだわ。・・・素晴らしい弟さんね?」
「えへへ・・・自慢の弟ですから・・・」
ロイナが嬉しそうにフォルトを褒めてくれるとロメリアも嬉しくなる。ロメリアも頬を緩ませる。
「それじゃあ、ロイナさん!今から配膳の仕事をやらせて頂きます!」
「うん、お願いね。そのままの服で結構よ。・・・汗はしっかりと拭いてね?」
ロメリアは頷くと店内に入った。店の奥に行って自分のバッグから清潔なタオルを取り出して体の汗をしっかりと拭きとると、調理場の前に行きフォルトと合流する。
「フォルト!今から私も配膳手伝うね!」
フォルトは食べ終えた食器を調理台に置いた。
「もう呼び込みはしなくていいの?」
「そうみたい。何か食材がもう残り少ないんだって。」
「ふ~ん。という事は早く終わるの?」
「ロイナさんの話だと、5時半には終わるみたい。」
「随分早いんだね・・・」
「でも早く終わったらさ、夜はお祭りに専念できるよ!」
ロメリアの言葉にフォルトは小さく何度も頷いた。確かに早く業務を終えれればロメリアと夜の祭りを満喫することが出来る・・・フォルトの心は少し騒めき始める。
「そっか・・・それもそうだね!・・・じゃああと一時間、頑張らなきゃね!」
「うん!私も頑張るよ!フォルト?何をしたらいいの?」
「それじゃあロメリアは食べ終わった食器を調理場に持っていくのと空いた席にお客様を呼ぶ係を任せてもいいかな?」
「かしこまりっ!」
ロメリアが元気よく返事をして近くの机にある食器を持っていこうとした・・・その時だった。
「・・・私も手伝います。」
フォルトとロメリアの目の前にリティが今朝よりも顔色が大分良くなった状態で現れた。店のエプロンを着用しており、この店本来の看板娘であるオーラを全身から醸し出していた。
目の下にまだ少し隈が残っていたり、足取りが少しおぼつかなかったりと少々不安な点が見られたが、リティはフォルト達に微笑んでもう元気になったという事をアピールしてきた。
「リティさん・・・もう大丈夫なんですか?まだ少し顔色が優れないように見えますけど・・・」
「このくらい・・・大丈夫です。体も大分言う事を聞く様になりましたし・・・それに、皆様が頑張っているのに、何時までも寝ている訳にはいきませんから・・・」
フォルトは少し心配そうに彼女を見る。・・・嘘をついていると分かったからだ。
『・・・大丈夫かな?まだ体があまり動かせそうには見えないけど・・・』
フォルトは嘘だと見抜いていたが、リティが手伝いたいと言っているのだから自分がここで突っ込むのは野暮だと思い、何も言わなかった。
リティはフォルトに向かって声をかける。
「フォルト・・・君、だったっけ?・・・注文は私が受けるから料理を運んでくれない?」
「・・・分かりました。体調が悪くなったら直ぐに教えてくださいね?」
「うん・・・分かった・・・」
リティはフォルトから伝票を受け取ると疲労を全く見せずに客達に笑顔で対応する。もう何年も看板娘としてこの店の接客を行っているからなのか、辛い顔を一切見せずに対応できているのは流石だとつい見つめてしまっていた。
「・・・フォルト?早く料理運ばないと、お客さん怒っちゃうよ?」
「あ・・・ああ、ごめん・・・ちょっとボーってしてた・・・」
「しっかりしてよ~?まだお客様はたくさんいるんだからね?」
ロメリアはそう言って机の上にある食器をまとめると、台拭きで綺麗にして調理場に食器を持っていく。食器を乗せたお盆を調理場の机に置くとそのまま待機している客の所に向かって案内し始めた。
フォルトは再び意識を集中させて料理をお盆に乗せると、急いで客の元へと運んでいく。フォルト1人でやっていた状況が圧倒的に改善され、客の流れはよりスムーズになっていった。
あっという間に時が流れ、時刻は午後5時半を過ぎた頃、ロイナが言っていたように食材が尽きてしまった。しかし、ロイナが客の数を整理してくれたおかげで何とか全員に満足したサービスを提供して無事に営業を終えることが出来た。
店を閉めてからフォルトとジョージが客机を綺麗にしていると、ロメリアとリティが水を持ってきてくれた。
「フォルト、お疲れ様~!」
「お父さんも・・・お疲れ様。」
フォルトとジョージは水を受け取ると一気に飲み干して、
「ありがとう、ロメリア・・・ロメリアも、お疲れ様。」
「リティ・・・体の方は大丈夫なのか?」
ジョージの言葉にリティは客に見せていた笑顔ではなく、『娘』としての笑顔をジョージに見せた。
「大丈夫だよ、お父さん。接客をしている内に勘が戻ってきて、今とっても気分が良いの。」
「そうか・・・それは良かった。」
ジョージはリティの笑顔を見て元気が戻ってきたことを確認すると、嬉しそうに頬を緩ませた。
フォルトとロメリアもそんな2人を見て、お互いの顔を見合わせる。
「良かったね。リティさんが元気になって。」
「・・・うん、もう初めて会った時の様な悪い顔色じゃなくなったね。」
フォルトはそう言ってコップを調理場の流しの所に持って行き、コップを洗おうとした。
その時だった。
ガチャ・・・カランラン・・・
急にドアが開き、ドアの向こうから見たことの無い男3人が入ってきた。特に先頭にいる赤髪をオールバックにしている男は3人の中でも育ちが良いように見え、皴1つ、汚れ1つない濃緑色の服を着用していた。
「あ・・・あ・・・」
「リティ?どうした?」
リティの顔色が再び真っ青になり、その場に倒れこみそうになったので、ジョージが体を支える。ロメリアもリティの体に手を添えて支えた。
赤髪の男はそんなリティの姿を見て片方の頬だけを釣り上げた。
「リティ・・・せっかく来てやったというのにそんな態度取られたら・・・悲しいな、俺。」
男の何処か相手を小馬鹿にしているような不快な声が、夕日が差し込む店内に響いた。
「お待たせしました!特産キノコのクリームシチューにトマトリゾット、野菜カレーです!」
何処の席にも客が座っており、様々な声が飛び交う店内でフォルトはジョージから教えてもらった料理を落とさないで運ぶ配膳方法をしっかりと駆使しながらドンドン料理を提供していく。
待ち望んだ料理が目の前に来たお客様達は子供の様に目を輝かせる。
「おお、来た来た!」
「このクリームシチューは祭りの日限定料理だからな~。涎が止まんね~。」
「小さいのにようこんなに料理一気に運んできたなぁ!頑張れよ、坊主!」
「っ!ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしください!」
フォルトは激励の言葉を貰うと丸い木のお盆を持って一礼する。フォルトが次に持っていく料理が調理場と客席の間にある机に並べられていたのでそれを取りに行こうとした時、後ろから声を掛けられた。
「ねぇ~?注文良いかしら~?」
「はい!良いですよ!」
フォルトはエプロンのポケットに入っている伝票を取り出して注文を受ける。フォルトは注文を聞き終えて軽くお辞儀をすると、その後ろの食べ終えた食器だけが残っている机を一気に綺麗にする。食器をお盆の上にのせて、綺麗な台拭きで拭きあげてから、待っているお客様をご案内し座らせる。そして食器と伝票を調理場へと持っていき、流れるように料理を運んでいく。
注文を聞き、料理を運び、料理を片付け、新たなお客様を席にご案内する・・・常に最適な動きを意識して立ち回ることにより、作業効率をよくすることが瞬時に求められる作業をもうかれこれ3時間以上ぶっ続けでフォルトはこなしていた。ジョージやロイナからは何度も身を案じる声を掛けて頂いたが、フォルトは何故がどんどん仕事を最適化していく作業が好きになって来ていた。
フォルトは昔から様々な作業をどう効率よく『攻略』していくか・・・それを考えるのが好きで、実際にその身で最適解を導き出した時なんかはもう興奮が止まらなくなる性格なのだった。
なのでこのような多業務をどんどん水が川を流れるが如く、雲が空を漂うが如く『自然に』こなしていくことが楽しくてしょうがなかったのだ。そのせいでフォルトの顔の筋肉は緩々になっていた。
フォルトはその作業の途中、外にいるロメリアの様子を見た。ロメリアは真夏の炎天下の中、大通りに出て一生懸命汗を流しながら客の呼び込みをしてくれている。そのおかげで、営業開始してから3時間経った現在でも店の前には長蛇の行列が出来ていた。
「さぁ、皆さんどうですか~!『食事処 ローゼンフレッシュ』ではこの祭りの期間でしか食べられない料理が沢山ありますよ~!急がないと、食材の在庫が切れちゃうかもよ~!」
ロメリアの声に釣られて道行く人々がどんどん列の後ろへと並んでいく。もうすっかり、この店の看板娘だ。
『ふふっ、ロメリアもあんなに汗をかきながら頑張っているなぁ・・・僕も頑張らないと!』
フォルトはそんなロメリアを見て微笑むと、気を引き締めて料理を運んでいく。
それから更に1時間が経った。夏場なので太陽は相変わらずほぼ真上で燦々と輝いており、店の前には相変わらず長い列が出来ている。
フォルトが食事を終えて出ていったお客様の食器を調理場へと持ってきた時、ロイナが入口から出ていった。すると、ロイナは店の前で呼び込みを行っているロメリアに声をかけた。
「ロメリアちゃん、呼び込みお疲れ様。しっかりと水は飲んでる?」
「はい!しっかりと水分は補給していますよ!熱中症になったら皆に迷惑をかけてしまいますからね!」
ロメリアは元気に答えると、ロイナは安心したように優しく微笑んだ。
「そうかい、それならよかった。・・・あ、言う事があったんだわ。」
「何ですか?」
「ロメリアちゃん、もう呼び込みは止めて配膳の方に回ってくれないかしら?ロメリアちゃんのおかげで予想以上のお客様が来店してくださってね、食材がなくなりそうなの・・・」
「そうなんですか・・・」
「営業時間は午後8時という事になっているけれども、今のままだと5時半ぐらいには食材が完全に無くなってしまいそうなのよね・・・だからもう呼び込みはここまでにして配膳の方お願いできるかしら?」
「はい、勿論です!・・・因みに、ロイナさん。」
「何?」
ロメリアは店の中で料理を運んでいるフォルトに視線を移す。両手だけではなく、両腕にも料理を乗せて運んでいるバランスは全くぶれておらず、非常に素早く動いていた。
「フォルトはどんな感じですか?ちゃんと仕事はこなせていますか?」
「こなせているも何も、完璧よあの子!注文も何も間違えないし、お客様の評判もいいし、料理も落とさない上に一気に大量に素早く持っていけているし何より動きに一切の無駄が無い・・・ずっとうちに欲しいぐらいだわ。・・・素晴らしい弟さんね?」
「えへへ・・・自慢の弟ですから・・・」
ロイナが嬉しそうにフォルトを褒めてくれるとロメリアも嬉しくなる。ロメリアも頬を緩ませる。
「それじゃあ、ロイナさん!今から配膳の仕事をやらせて頂きます!」
「うん、お願いね。そのままの服で結構よ。・・・汗はしっかりと拭いてね?」
ロメリアは頷くと店内に入った。店の奥に行って自分のバッグから清潔なタオルを取り出して体の汗をしっかりと拭きとると、調理場の前に行きフォルトと合流する。
「フォルト!今から私も配膳手伝うね!」
フォルトは食べ終えた食器を調理台に置いた。
「もう呼び込みはしなくていいの?」
「そうみたい。何か食材がもう残り少ないんだって。」
「ふ~ん。という事は早く終わるの?」
「ロイナさんの話だと、5時半には終わるみたい。」
「随分早いんだね・・・」
「でも早く終わったらさ、夜はお祭りに専念できるよ!」
ロメリアの言葉にフォルトは小さく何度も頷いた。確かに早く業務を終えれればロメリアと夜の祭りを満喫することが出来る・・・フォルトの心は少し騒めき始める。
「そっか・・・それもそうだね!・・・じゃああと一時間、頑張らなきゃね!」
「うん!私も頑張るよ!フォルト?何をしたらいいの?」
「それじゃあロメリアは食べ終わった食器を調理場に持っていくのと空いた席にお客様を呼ぶ係を任せてもいいかな?」
「かしこまりっ!」
ロメリアが元気よく返事をして近くの机にある食器を持っていこうとした・・・その時だった。
「・・・私も手伝います。」
フォルトとロメリアの目の前にリティが今朝よりも顔色が大分良くなった状態で現れた。店のエプロンを着用しており、この店本来の看板娘であるオーラを全身から醸し出していた。
目の下にまだ少し隈が残っていたり、足取りが少しおぼつかなかったりと少々不安な点が見られたが、リティはフォルト達に微笑んでもう元気になったという事をアピールしてきた。
「リティさん・・・もう大丈夫なんですか?まだ少し顔色が優れないように見えますけど・・・」
「このくらい・・・大丈夫です。体も大分言う事を聞く様になりましたし・・・それに、皆様が頑張っているのに、何時までも寝ている訳にはいきませんから・・・」
フォルトは少し心配そうに彼女を見る。・・・嘘をついていると分かったからだ。
『・・・大丈夫かな?まだ体があまり動かせそうには見えないけど・・・』
フォルトは嘘だと見抜いていたが、リティが手伝いたいと言っているのだから自分がここで突っ込むのは野暮だと思い、何も言わなかった。
リティはフォルトに向かって声をかける。
「フォルト・・・君、だったっけ?・・・注文は私が受けるから料理を運んでくれない?」
「・・・分かりました。体調が悪くなったら直ぐに教えてくださいね?」
「うん・・・分かった・・・」
リティはフォルトから伝票を受け取ると疲労を全く見せずに客達に笑顔で対応する。もう何年も看板娘としてこの店の接客を行っているからなのか、辛い顔を一切見せずに対応できているのは流石だとつい見つめてしまっていた。
「・・・フォルト?早く料理運ばないと、お客さん怒っちゃうよ?」
「あ・・・ああ、ごめん・・・ちょっとボーってしてた・・・」
「しっかりしてよ~?まだお客様はたくさんいるんだからね?」
ロメリアはそう言って机の上にある食器をまとめると、台拭きで綺麗にして調理場に食器を持っていく。食器を乗せたお盆を調理場の机に置くとそのまま待機している客の所に向かって案内し始めた。
フォルトは再び意識を集中させて料理をお盆に乗せると、急いで客の元へと運んでいく。フォルト1人でやっていた状況が圧倒的に改善され、客の流れはよりスムーズになっていった。
あっという間に時が流れ、時刻は午後5時半を過ぎた頃、ロイナが言っていたように食材が尽きてしまった。しかし、ロイナが客の数を整理してくれたおかげで何とか全員に満足したサービスを提供して無事に営業を終えることが出来た。
店を閉めてからフォルトとジョージが客机を綺麗にしていると、ロメリアとリティが水を持ってきてくれた。
「フォルト、お疲れ様~!」
「お父さんも・・・お疲れ様。」
フォルトとジョージは水を受け取ると一気に飲み干して、
「ありがとう、ロメリア・・・ロメリアも、お疲れ様。」
「リティ・・・体の方は大丈夫なのか?」
ジョージの言葉にリティは客に見せていた笑顔ではなく、『娘』としての笑顔をジョージに見せた。
「大丈夫だよ、お父さん。接客をしている内に勘が戻ってきて、今とっても気分が良いの。」
「そうか・・・それは良かった。」
ジョージはリティの笑顔を見て元気が戻ってきたことを確認すると、嬉しそうに頬を緩ませた。
フォルトとロメリアもそんな2人を見て、お互いの顔を見合わせる。
「良かったね。リティさんが元気になって。」
「・・・うん、もう初めて会った時の様な悪い顔色じゃなくなったね。」
フォルトはそう言ってコップを調理場の流しの所に持って行き、コップを洗おうとした。
その時だった。
ガチャ・・・カランラン・・・
急にドアが開き、ドアの向こうから見たことの無い男3人が入ってきた。特に先頭にいる赤髪をオールバックにしている男は3人の中でも育ちが良いように見え、皴1つ、汚れ1つない濃緑色の服を着用していた。
「あ・・・あ・・・」
「リティ?どうした?」
リティの顔色が再び真っ青になり、その場に倒れこみそうになったので、ジョージが体を支える。ロメリアもリティの体に手を添えて支えた。
赤髪の男はそんなリティの姿を見て片方の頬だけを釣り上げた。
「リティ・・・せっかく来てやったというのにそんな態度取られたら・・・悲しいな、俺。」
男の何処か相手を小馬鹿にしているような不快な声が、夕日が差し込む店内に響いた。
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