9 / 43
はじまり
トーヤ
しおりを挟むアルドside
何故、こんな事になったんだったかなあ。
ゆっくりと今朝、いや、昨夜の事から思い出していこう
◇◇◇
美味そうな匂いがする。性魔力の匂いだ
近くでアホな人間がSEXでもしてるのか?と思ったが、その美味そうな匂いは少し鼻を掠めた後すぐに風の中へと消えていった。
近頃この辺りも物騒になって来て、街で女を買える機会が無く、ここ最近魔力を喰えていない。
気のせいかもしれないが、とりあえず見に行くか…と生い茂る草や葉を掻き分け、匂いがした方向を目指す
時間的にもう帰ろうと思っていたが、別に急ぐ案件は無い。今日野宿したからと言って何も困る事はない
それよりも、一瞬鼻を掠めた美味そうな匂いが気になる。
黙々と森を進むと、見知った泉が先に見えた。
スライムブルーだ。
その泉の手前に仁王立ちする黒い塊
腰から静かに剣を抜き、両手に構える
「邪魔くせェ」
そう呟いた俺の声は夕闇の風に乗って消えて行った。
後ろ姿から察するに恐らくウルフベア、Bランクのモンスター
いつものように加速し、両手に握り込んだ剣に力を込める
夕暮れと、鬱蒼とした森が重なり視界が悪い
そんな中、両手にかかる確かな歯応えは思ったよりとても硬い
月堕ちの森特有の変異種か?手に込める力を一層強くした
グチ、と確かな手応えを感じ剣を握る手の力を緩めること数秒、目の前でゆっくりと巨体が倒れて行く
ガシャン、とウルフベアとは思えない音を鳴らし巨体が地面へと沈んだ。やはり変異種のようだ
ゆっくりと体制を立て直し、剣に付いた血を払
う
ウルフベアの巨体が沈んだ事により、視界が広がっていく、その視界の端では小さな篝火が煙を上げていた
そして目の前には、怯えた顔をした人間の男が1人
見た事のない魔道具の前に座り込んだその男は、吸い込まれるんじゃないかと錯覚する程、綺麗で不思議な翡翠色の瞳をしていた
「…美味そうな匂いがしてたんだけどなァ」
綺麗な瞳で、男にしては細い身体をしてる様だが、どっからどう見てもソイツは男
美味そうな匂いがしたから来たというのに、居たのは男1人
一瞬鼻を掠めた匂い程度に期待なんてするんじゃなかった
久々に美味そうな魔力が喰えると思ったが、とんだ思い違いだったようだ
◇◇◇
トーヤとの出会い
最初の印象は綺麗な瞳をした、ただの男
だがこの男はただの男では無かったし
俺が期待した匂いに間違いは無かった
食べた事の無い美味い食べ物を貰い、あまりの美味さに思わず酒を出し、トーヤにも飲ませた。
その時に、俺の中でただの男だったトーヤはただの男では無くなった
酒を飲み、強すぎた酒精の所為か、綺麗な瞳に涙を浮かべたその男から仄かに、甘い香りがしたからだ。
性魔力特有の甘い香り、だが今までに嗅いだどんな魔力よりも甘く、美味そうな香り。
その美味そうな香りに我慢できず、その男の口に噛みついたのを覚えている
それにより、更に匂いが濃くなって、全身に力が漲ったというのに、当の本人であるトーヤは、何故か突然スヤスヤと眠り始めたんだっけか?
それからどうしたんだっけなぁ…
あまりに美味そうな匂いに気持ちが高まって、よく覚えていない
翌朝には冷静になり、それと同時にどうやってコイツを、自分の手中に収めるかという考えが頭の中の大半を占めていた
そう、考えていたのだ。
今朝、もしかしたらトーヤが異世界人では?と思った時も
町へと向かう道中も
トーヤを置いて肉を狩に走り出した時も
ずっと考えていた。ずっとだ
なのに、なぜ、どうしてこうなったのか
肉を狩って元の場所へと戻ろうとした時、仄かに香ってきた甘い香り。トーヤの匂い。降り頻る雨の中でも薄れる事なく香る強い匂い
急いで元の場所へと戻れば、そこにトーヤの姿はなく酷く焦った。
だが、落ち着いて匂いの元を辿れば、見覚えのある顔
50年ぶりだろうか。
その見覚えのある男の元で、息を上げるトーヤが目に入り、怒りが湧き上がった
俺の獲物だ。俺のものだ。
でも相手がこの男ではとてもじゃないが、分が悪すぎる
そして二人が居るこの洞窟内
甘ったるい魔力が充満したこの空間が、俺の理性をおかしくしていく
息を吸えば吸う程、身体が熱くなり、脳が痺れ、視界がユラユラと揺れた。
0
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメンアルファ辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
【完結】魔王様は勇者激推し!
福の島
BL
魔国のいちばん高い城、その一番奥に鎮座するのは孤高の魔王…ではなく限りなく優しいホワイト社長だった。
日本から転生し、魔王になった社畜は天性のオタクで魔王の力というチート持ち。
この世界でも誰か推せないかなぁとか思っていると…
…居た、勇者だ!!!
元虐められっ子イケメン勇者×少し抜けてるオタク魔王
男性妊娠はおまけ❶から
またおまけ含めて1万字前後です。
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる