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遠くから呼ぶ声が聞こえる
気のせいか?なんだか眩しい…身体が重い


コンコン


何かぶつかる音。いや、ぶつける音?


「おい、入るぞ?」


コンコン


ああ、ノックか。扉…叩かれてる…



「おい、入っていいか」


ギギギ、と扉が開く音がして慌てて目を開けた。
扉から光と共に入って来たのは、白髪と褐色の肌を持ったラルフレッドの姿
慌てて起き上がると、パサリと上半身から布が流れ落ちた
下半身を覆う布団と、なぜか感じる尻への違和感
サッと血の気がひくのを感じた


「服着るからちょっと待って」
「………分かった」


ベッドの上の俺を無表情で見下ろしたラルフレッドが、クルリと周り背中を向ける
慌ててインベントリからシャツを取り出し袖を通した
そっと、違和感のある尻へと手を回すと、指先に触れる硬いもの。何か…なんてわかっているが嘘だと言って欲しい。
昨夜はあのまま寝てしまったのか。最悪だ
引き抜くか?とほんの少し揺らすと、グチリと嫌な水音が鳴った
ブワッと滝の様な汗が背中を伝う。体内に残ったローションが奏でた音は、酷く大きな音に感じた。こちらへ背中を向けるラルフレッドには聞こえていない事を願いたい

抜くか、抜かずにインベントリに入れてみるか……考えに考えた結果、何もしない事を選んだ。

抜くにしてはリスクが高すぎるし、このままインベントリ入れる…のも、その瞬間どの様に体内でコイツが動くか想像出来なさすぎて怖い
それならまだ、このままズボンを履き何も無かった様な顔でラルフレッドをさっさと追い返すのが1番いい気がしたのだ。
触らぬエネマグラに祟りなし

素早く、かつ刺激を与えないよう下着とズボンを手早く身に付けた



「何しに来たんだ」


ラルフレッドの背中に問いかけると同時、昨夜部屋の隅で寝ていた筈のポチの姿がない事に気づく。
俺が寝てるうちに出て行った?!スッと心臓が冷えるのがわかった


「………活性期が終わった。」


振り返ったラルフレッドが無表情で言う

終わったって……


「いつ?!」
「……昨夜だ」
「もう外は安全か?」
「……安全だ。保証する」


ラルフレッドの言葉にほっと胸を撫で下ろす
言われてみれば昨夜は、家の周りにモンスターが現れる事はなかった……それで寝不足だった俺もついぐっすり寝てしまったんだろう

活性期が終わったならポチが外に出てても安心だ
野生の勘?か何かでポチにも危険が去ったことがわかったのだろうか?それで外に出たのかもしれない


「そうか。なら良かった」


活性期が終わり安全な事が分かった以上、今俺が1番心配するべきは俺のケツと、沽券だ。
いち早くラルフレッドを追い返さなければならない。俺の尻の現状など知られてたまるものか。
朝っぱらからこんなもん尻に入れて客人を迎える…なんて、そんなど変態にはなりたく無い


「………それとこれを持ってきた」


無表情で言い放つと同時コロン、とその大きな手からテーブルの上へと宝石の様な物が転がった。
青色でキラキラと光る球体


「なんだそれ?」
「……魔石、モンスター避けの効果がついた魔石だ」


魔石?そういえば《冒険者手引き》にそんな項目があったような気がするな…なんだっけ?
モンスターから一定の確率でドロップする石とか何とか……冒険者ギルドで買い取るとか書いてなかったか?


「…これが魔石?」


しれっとした顔でいつもより幾分か小さな歩幅で歩き、テーブルの上の魔石を手に取った
ただのキラキラと輝く綺麗な石だ


「……能力がある物が加工すれば、様々な効果を付けれる…それは、モンスター避けの効果が付いている」
「モンスター避けね……で?これを俺にどうしろって?」
「………やる」


え、買え。じゃなくて?
てっきり戦えない弱っちい俺に売りつけに来たのかと思ったんだけど?
それにしても凄いなこの石…加工すれば様々な効果を付けれるっていうけど、他にどんな物があるのか気になるところだ
魔石加工職人とかいるのか?


「…なんで俺に?」


少しばかり警戒しながら無表情のラルフレッドへとたずねると、真っ白の髪を揺らしながらコテンと首を傾げられた。意味わからん。
首を傾げたいのは俺の方だ


「………これもやる」


ラルフレッドの真意が分からず見つめること2秒ほど、またテーブルの上に輝く石が転がされた
今度のは赤色だ


「これも魔石か?」
「……ああ、それは火が出る魔石だ。家具職人に金と共に託せば魔法コンロを作れる」
「……はあ?」


いや、全く意図が読めない。なんだ突然
そもそも魔法コンロってなんだよ。聞いた事ねえよ


「………魔法コンロがあれば火力の調整が可能だ」


アイスグレーの瞳が火の入っていない竈を見つめた
良く分からんが、魔法コンロというやつはガスじゃ無く、この火が出る魔石を使うコンロって事か?
確かに火力調整ができるキッチンが欲しいとは思っていたが……なぜ、このタイミングで突然、対価を要求する事もなくこれを俺に持って来たのか
全く理解ができない


「何で俺にくれるんだ?」


もう一度きいたが、さっきと同じように首を傾げるだけだ。
まるで俺の質問の意図がわかっていないようだ


「………欲しいかと思って?」


いや、欲しいけど!くれるって言うなら貰いたいけど!!!


「タダでもらう程怖いものはない」


俺がそう言い放つと、眉間の皺を深め更に首を傾げた。
心底意味が分からないっていう顔をしている。奇遇だな、俺も同じ気持ちだ
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