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4話

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 御剣さんと別れてから、スライムに1回出会ったがそれを倒して、生きて外に出ることができた。
 ダンジョンの外は広場のような場所だった。

 本来なら、ダンジョン入り口近くには出入りを確認するために、管理人がいるはずだが、辺りを見渡してもそんな影はない。
 そもそも、ダンジョンの中は同じであったが、外は全く別ものである。
 広場から少し離れた場所に建っている建物は、純和風で、まるで江戸時代にでもタイムスリップしたような気分である。

 とりあえず、ここでこうして突っ立ってても仕方ないので、建物の方へ向かってみる。
 文字は……少し崩れたような、微妙に形が違うが問題なく読むことができた。
 しかし、本当にここはどこなのだろうか? 異世界というよりも、昔の日本といわれた方がまだ理解できる。
 帰ることは……できると思うのだが、よくよく考えてみれば移動したとき俺はその場を動いてなかった。

 仮に今この場でスキルを使ったとして、壁に埋まってた……なんてことになる可能性があるのではないのか?
 帰るときはダンジョンの中で……いや、しかし、もしもたまたま向こうに帰るときにダンジョンの中に人がいて、その人と被ってたら……うぅん、嫌な想像をしてしまった。

「少し歩いてみるか」

 まったく知らない街並み、だけど懐かしさを感じるようなそんな風景。
 しかし、歩いてて気づく視線。
 よくよく考えれば、御剣さんも言っていたが、俺の装備は珍しいものらしい。

 プラプラと歩き、視線はあまり気にせずに、各所を観察する。
 でもやっぱり、視線は気になる。
 そんな中、目に付いた丸に囲まれた質の文字。
 もしかして、あれは質屋なのだろうか? 店先から少しだけ店内を覗く。

 見たことないようなものや、なんだか見たことのあるような、色んなものが店の中に置かれている。
 少し考えてから俺はその店の中に入ることにした。



 ……心なしか、人からの目線が減った気がする。
 俺は元の装備を背中の籠へ入れて、江戸時代の人が着るような和服を着ている。
 イマイチ着方が分からなかったので、店員に着付けしてもらった。

 店に売ったのは、財布の中に入っていた海外旅行した時に作った記念コインだ。
 他には服についてたボタンとか、売れそうなものを売った。
 その金で服を買ったのだが、予想以上にいい値でボタンなどが売れたみたいで、財布も新しく買った。

 こっちの世界でもどうやら紙幣を使っているようだが、今のところ影も形も見ていない。
 1万円札が最高通貨で銭や厘があるらしい。
 感覚ではあるが、こっちの1厘が元の世界の1円となっていると思う。
 とはいえ、物価が違うから無理に当てはめられない面もあると思うが、価値観としてはそういう感じである。
 ちなみに、昔の日本だと厘は10厘で1銭だったはずだが、こっちでは100厘で1銭のようだ。

 今、俺の財布の中には125円ある。
 売るときはもうちょっと細かい数字が出てきたのだが、どうにか銭の位を切り上げてもらい、買うときは切り下げてもらったことで高く売り、安く買わせてもらったし、財布の中もすっきりしている。
 ちなみに向こうの世界に合わせれば100万円玉になる100円は10円玉と50円玉で崩してもらってある。
 それでも過剰かもしれないが、仕方ないだろう。

 今度もしもこっちの世界に来るなら、いろんなボタンを買ってきてどこかで売るのもいいだろう。
 特に高かったのはジーパンについていた、金属製のボタンなんかがいいかもしれない。
 シャツについてたおそらくプラ製のボタンも、なかなかの値段だったし、次があるなら俺はボタンを持ってくるだろう。
 しかし、質屋だから考えてみれば、定期的な取引ってどうなのだろうか? 今回は買い戻す方向の取引だったが、正直買い戻す必要はないわけで、完全売却でもよかったのかもしれない。

「さて、お金を稼いだが……」

 金に余裕ができ、人からの視線も幾分か柔らかくなって、心に余裕ができる。
 急ぐべきは、向こうの世界への帰還だ、一応視界の中に宿泊施設も見受けられたが、向こうはダンジョンに入る際に入出の確認があるため、1日戻らなければちょっと騒がれるかもしれない。
 それに、ルナちゃんが心配である。

 お金をどう使うべきか、どうやって帰るべきか。
 街の中を歩いていて気づいたことが、1つある。
 それは、この街が思ったよりも小さいということである。

 漏れ聞こえるところと、質屋で話した感じではおそらく、ダンジョンは街の中心だ。
 そして、1時間ほど歩けば外につながる門が見えてきている。
 徒歩は確か時速4キロほどだから、直径で考えるなら大体8キロ圏内が街の中ということになるが、もう少し甘めに見て10キロと考えておく。

 スキルの正確なところは分からないけど、世界を移動した際にその場から動いていなかったことから、スキルによる移動は別の世界のその場所へ移動するというものだろう。
 ならばここは異世界というより、並行世界である可能性のほうが高い? まぁ、それも夜になって星でも見ればハッキリするかもしれないが、さすがにそんな時間まで滞在する前に帰りたいところだ。

 門のほうまで来たが、鎧を着た門番みたいなのはいるが、特に出入りに手続きをしているようには見えない。
 そもそも、周りの柵もそんなに高いものではなく、普通に出ていけそうだ。
 なんというか、牧歌的な村がそのまま大きくなったような印象を受ける。

 帰還方法は何となく形になってきたが、次の問題として、またこちら側に来る方法について考える。
 なるべくなら、事故を減らしたいのだが、何かいい方法はないかと、辺りを見渡す。
 そういえば、並行世界だと考えついたときに、山を見てそう思ったのだ。
 見渡せば山が見えるというのは平野の少ない日本らしいとそう思ったのだ。

「そうか……山か」

 今回の帰還方法も思いついたし、こちらへ帰ってくるときの場所も思いついた。
 あとは実際に行動だな。
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