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○2章 クエストへ行こう
-8 『もっと本気を出せよ』
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結論から言えば、最強ステータスをもった俺にとってケルベロスなど敵ではなかった。
全てを焼ききるような灼熱の息吹を浴びてもせいぜい1ダメージだ。それを受ける覚悟でケルベロスの足元まで駆け込んだ。
予想通り、視界を覆うほどの炎のブレスにさらされたが、1ダメージと交換に、俺はクレスレブを薙いでケルベロスの前足の片方を切り落とす。
剣術の素人ながら綺麗に決まった。
野球で快打をはなったかのような豪快な振りと爽快感だった。
――やるじゃん、俺。
支えの一部を失い、巨躯が前のめりに崩れ落ちる。
手ごたえのある痛撃。
しかしケルベロスにダメージ表記はないままだ。
「ケルベロスの弱点は三つの首の真ん中です。そこを打たなければダメージはまったく与えられません」
パックパックから辞典のような分厚い本を取り出してミュンが読み上げる。
なるほど。
部位破壊はできても、弱点を突かなければ有効打にはならないのか。
だが結局は俺の敵ではない。
足元の俺を捕まえようとケルベロスが手足を騒がせるが、それがスローモーションのように見える俺からすれば、走ってくる幼児を避けるようなものだ。
攻撃をいなしながらまた別の足を薙ぎ払う。しかしさすがに二撃目はかわされた。足元を自分もろとも炎のブレスで焼き払ってくる。
さすがに迂闊にダメージを受け過ぎれない。
一度距離をとり、仕切りなおす。
余裕だ。
これなら問題なく勝てる。
そう思いたいのだが、なにより深刻な問題が一つ。
「このまま決める――って、うおっ?!」
「……ちっ、はずしたわ」
背後から耳元を針が掠め、ひやりとした。
ヴェーナだ。
俺が咄嗟に振り返ると、慌てて吹き矢を隠し、「がんばれー」と応援し始める。
「お前はどっちの味方だ」
「あたしはあたしの味方よ」
つまり俺の味方ではないということか。
召喚された手前、彼女の命を奪えないのが口惜しい。
いっそのこと口と手を縛って、どこか納屋か何かに閉じ込めてやろうか。
まあいい。
あいつなら放っておいても大丈夫だろう。
こっちは俺だけじゃなくマルコムだっている。
「おい、マルコム……ってお前、何やってるんだよ」
マルコムの姿を探すと、俺たちの最後方、依頼主の男すら手前に置き、堂々と仁王立ちをしながら静かに佇んでいた。
「なんで後ろに下がってるんだよ! お前も手伝え!」
「何故だっ!」
「へ?」
想像以上に力強い否定が返ってきて、俺は思わず面食らってしまった。
「何故って、そりゃ依頼主のためにこいつを倒さないと……」
「私が剣を振るうのは女性のためだ」
「はあ?」
「もう一度言おう。私が剣を振るうのは女性のためだけだ! はっはっはっはっ!」
一切の迷いもない顔で堂々と言い張るマルコムに、俺は呆れて物を言えなくなってしまった。スクーデリアにいたっては、最初から欠片も手伝う気がないように遠目で眺めているだけ。
「エイタ。早く倒しなさいよ」
「ちょ、ちょっとヴェーナさん。ミュンの鞄は布団じゃないですよぉ。もたれかかってこないでください」
「気にしない気にしない。革がやんわり弾力あって気持ちいいのよ」
小柄なミュンのバックパックの背中を埋めるヴェーナ。
そんな彼女たちをマルコムは目を細めながら眺め、眼福そうに表情を緩める。
「少女たちの戯れ……尊い」
「もう、勇者様のスケベさん」
「はっはっはっ。こらこらスクーデリアよ、嫉妬しているのかい。まったく、私の頬をそんなに引っ張るでない。母親譲りの端正なほっぺが美味しそうになってしまうじゃないか」
『1ダメージ……1ダメージ……』
「ふふっ。人間の痛がっている姿を見るのってなんだかゾクゾクしちゃうかもぉ」
スクーデリアに頬をつねられじりじりと殺意のこもった1ダメージを受けながらも、マルコムはミュンたちへの下心溢れた視線を逸らそうとしない。
まるで自由。
クエストを一緒にクリアしにきたパーティとは思えない不揃いさだ。必死にケルベロスと対峙している俺が馬鹿らしくなるほどに。
ふつふつと、俺の中で何かが湧き上がってくるのがわかった。
「お前ら……」
俺の中の血管が煮えたぎり、細胞がぷちぷちと弾けていくかのような幻聴がする。そしてそれは、噴火した火山のごとく俺の内から弾けだした。
「しゅうぅぅぅぅぅごうぉぉぉぉぉ!」
ケルベロスの遠吠えよりも遠く響くような声で、俺はそう叫んでいた。
堪忍袋の緒が切れた音が明確に聞こえた気がした。
方やターゲット以外の命を狙い、方や女のためと言ってサボるやつらばかり。
なんでこんな奴らを余所に俺だけが戦わなければならないのか。抑えようとていた苛立ちが、決壊したダムのように溢れ出していた。
呑気さに浮かれていた一同の動きがぴたりと止まる。
「ほらしゅうごうシュウゴウ集合だ! お前らこっち来い!」
「は、はいっ。エイタさんっ」
「ど、どうしたのよあんた……頭おかしくなったの?」
「何かあったのかね、エイタくん」
「あらぁ。男の子は元気ねぇ」
突然の怒声に、それぞれが驚きや怪訝をまじえた顔を浮かべる。しかし誰一人俺が叫んだ理由を理解していないようで、殊更俺の中の怒りは燃え上がった。
「全員、整列だ!」
「は、はいっ!」
「あ、ミュンはしなくていいぞ」
「ふえ?!」
背筋を伸ばして律儀に返事をしてくれたミュンは省き、残りの三人に向き直る。
「ぐるるるるる」
ケルベロスが唸り声を漏らして睨んできたが、俺はもっとドスの効いた低い唸りで睨み返した。
――邪魔をしたら次の瞬間にはお前の首を取る、と。
きゅぅん、とケルベロスが一歩下がり怖気づく。
それほどに、今の俺は鬼のような形相を浮かべていたのだろう。
「待て」
「くぅーん」
「座れ」
「くぅーん」
「よし、って言うまで待てだ。いいな?」
「くぅーん」
先ほどまでの敵意はどこ吹く風。
ケルベロスは頭を垂れて座り込み、大人しく鳴き声を漏らしていた。
自称魔王の少女、勇者の青年、ドラゴンの美女。
俺は改めてそれぞれと視線を交わし、俺は煮えたぎった心を吐き出すようにクレスレブを地面に叩きつけた。
ごめん、ヤンデレ。
「なんでお前らは戦わないんだよ!」
「いや、あたしはどっちが死んでもいいし」
「私はさっき理由を言っただろう」
「私も勇者様に付き添ってるだけだからぁ。封印のせいで離れられないしぃ」
一様に返事をした三人の頭を軽く殴る。
「おいヴェーナ! お前、ここ数日の食費は全部俺とミュンに出させてるだろ。まったく金持ってないって言ってたよな。じゃあここで少しは働いて返せよ!」
「体で払えって言うの? このあたしに?」
「じゃねーと今日の晩飯は抜きだからな!」
「…………?! そ、それは困る」
「だったら手伝え。仕事もせずに楽して食えると思うな!」
BY、元社畜。
「お前が今晩すするのは、あったかいスープか夜露でできた軒下の泥水か。決まるのは俺の気分次第だからな」
「こ、このあたしを脅そうって言うの?」
「脅しじゃない。事実だ」
「…………ぐぅ」
実際にご飯を用意するのはミュンだが、俺が言えばなんとでもなるだろう。
「おい勇者!」
「な、なんだね」
「お前もお前だ。勇者だなんだって名乗るくらいなら、女の尻ばっか見てないで自分の尻に火をつけやがれ。なにが勇者だ、勇者ランドだ。そんなの渋谷の駅前でナンパしてる下心丸出しなDQNどもと変わんねえぞ! 勇者ならもっと、世界中の人間全てを背負えるくらいの器を見せてみろよ!」
「……あ、ああ」
「今日俺たちが受けた依頼はなんだ」
「骨拾い、だな」
「だったらさっさと拾ってこい!」
「お、おう」
気圧されるようにマルコムが頷く。
「そんでもってドラゴン!」
「なぁに?」
「特に思いつかないけど戦えるならお前も手伝え!」
「ひどぉい」
ついつい流れでキレてしまったが、スクーデリアは楽しそうに笑っていた。
ああ、もう。
せっかくの異世界生活が無茶苦茶だ。
最強ステータスでお気楽スローライフかと思えば、ただけた奴等にお説教。入社一年目の腑抜けた新人に教育で怒った時を思い出す。
俺の怒声を受けてさすがにバツが悪そうな顔をしたヴェーナとマルコムは、重い腰を持ち上げたように、それぞれ戦闘体制にはいる。
マルコムは腰の剣を、ヴェーナは槍を。
ついでにスクーデリアも、妖艶な笑みを浮かべながら魔法の詠唱を構える。
そう、これこそパーティ。これこそ共闘というものだ。やっぱり俺だけ働くなんて納得がいかない。
勝手な満足感を抱きながら、俺はケルベロスへと向き直った。
勇者、魔王、ドラゴン。ファンタジーの有名所を連ねたパーティ。幼少期、ゲームをして一度はこんな編成を夢見たものだ。その中心に俺が立っている。
「よし、行くぞ」
俺の声に反応して、大人しく待っていたケルベロスが腰を上げる。
そうして俺が前に駆け出したのを機に戦闘は仕切りなおしされたのだった。
見習いとはいえ腐っても魔王だし、中身は変態だけど実力は勇者だし、力がセーブされてても元ドラゴンである。
やる気を見せた彼女たちの攻撃は激しい波のようにケルベロスを呑みこみ、そいつの持つ『500』という耐久値を瞬く間に溶かしていった。
全てを焼ききるような灼熱の息吹を浴びてもせいぜい1ダメージだ。それを受ける覚悟でケルベロスの足元まで駆け込んだ。
予想通り、視界を覆うほどの炎のブレスにさらされたが、1ダメージと交換に、俺はクレスレブを薙いでケルベロスの前足の片方を切り落とす。
剣術の素人ながら綺麗に決まった。
野球で快打をはなったかのような豪快な振りと爽快感だった。
――やるじゃん、俺。
支えの一部を失い、巨躯が前のめりに崩れ落ちる。
手ごたえのある痛撃。
しかしケルベロスにダメージ表記はないままだ。
「ケルベロスの弱点は三つの首の真ん中です。そこを打たなければダメージはまったく与えられません」
パックパックから辞典のような分厚い本を取り出してミュンが読み上げる。
なるほど。
部位破壊はできても、弱点を突かなければ有効打にはならないのか。
だが結局は俺の敵ではない。
足元の俺を捕まえようとケルベロスが手足を騒がせるが、それがスローモーションのように見える俺からすれば、走ってくる幼児を避けるようなものだ。
攻撃をいなしながらまた別の足を薙ぎ払う。しかしさすがに二撃目はかわされた。足元を自分もろとも炎のブレスで焼き払ってくる。
さすがに迂闊にダメージを受け過ぎれない。
一度距離をとり、仕切りなおす。
余裕だ。
これなら問題なく勝てる。
そう思いたいのだが、なにより深刻な問題が一つ。
「このまま決める――って、うおっ?!」
「……ちっ、はずしたわ」
背後から耳元を針が掠め、ひやりとした。
ヴェーナだ。
俺が咄嗟に振り返ると、慌てて吹き矢を隠し、「がんばれー」と応援し始める。
「お前はどっちの味方だ」
「あたしはあたしの味方よ」
つまり俺の味方ではないということか。
召喚された手前、彼女の命を奪えないのが口惜しい。
いっそのこと口と手を縛って、どこか納屋か何かに閉じ込めてやろうか。
まあいい。
あいつなら放っておいても大丈夫だろう。
こっちは俺だけじゃなくマルコムだっている。
「おい、マルコム……ってお前、何やってるんだよ」
マルコムの姿を探すと、俺たちの最後方、依頼主の男すら手前に置き、堂々と仁王立ちをしながら静かに佇んでいた。
「なんで後ろに下がってるんだよ! お前も手伝え!」
「何故だっ!」
「へ?」
想像以上に力強い否定が返ってきて、俺は思わず面食らってしまった。
「何故って、そりゃ依頼主のためにこいつを倒さないと……」
「私が剣を振るうのは女性のためだ」
「はあ?」
「もう一度言おう。私が剣を振るうのは女性のためだけだ! はっはっはっはっ!」
一切の迷いもない顔で堂々と言い張るマルコムに、俺は呆れて物を言えなくなってしまった。スクーデリアにいたっては、最初から欠片も手伝う気がないように遠目で眺めているだけ。
「エイタ。早く倒しなさいよ」
「ちょ、ちょっとヴェーナさん。ミュンの鞄は布団じゃないですよぉ。もたれかかってこないでください」
「気にしない気にしない。革がやんわり弾力あって気持ちいいのよ」
小柄なミュンのバックパックの背中を埋めるヴェーナ。
そんな彼女たちをマルコムは目を細めながら眺め、眼福そうに表情を緩める。
「少女たちの戯れ……尊い」
「もう、勇者様のスケベさん」
「はっはっはっ。こらこらスクーデリアよ、嫉妬しているのかい。まったく、私の頬をそんなに引っ張るでない。母親譲りの端正なほっぺが美味しそうになってしまうじゃないか」
『1ダメージ……1ダメージ……』
「ふふっ。人間の痛がっている姿を見るのってなんだかゾクゾクしちゃうかもぉ」
スクーデリアに頬をつねられじりじりと殺意のこもった1ダメージを受けながらも、マルコムはミュンたちへの下心溢れた視線を逸らそうとしない。
まるで自由。
クエストを一緒にクリアしにきたパーティとは思えない不揃いさだ。必死にケルベロスと対峙している俺が馬鹿らしくなるほどに。
ふつふつと、俺の中で何かが湧き上がってくるのがわかった。
「お前ら……」
俺の中の血管が煮えたぎり、細胞がぷちぷちと弾けていくかのような幻聴がする。そしてそれは、噴火した火山のごとく俺の内から弾けだした。
「しゅうぅぅぅぅぅごうぉぉぉぉぉ!」
ケルベロスの遠吠えよりも遠く響くような声で、俺はそう叫んでいた。
堪忍袋の緒が切れた音が明確に聞こえた気がした。
方やターゲット以外の命を狙い、方や女のためと言ってサボるやつらばかり。
なんでこんな奴らを余所に俺だけが戦わなければならないのか。抑えようとていた苛立ちが、決壊したダムのように溢れ出していた。
呑気さに浮かれていた一同の動きがぴたりと止まる。
「ほらしゅうごうシュウゴウ集合だ! お前らこっち来い!」
「は、はいっ。エイタさんっ」
「ど、どうしたのよあんた……頭おかしくなったの?」
「何かあったのかね、エイタくん」
「あらぁ。男の子は元気ねぇ」
突然の怒声に、それぞれが驚きや怪訝をまじえた顔を浮かべる。しかし誰一人俺が叫んだ理由を理解していないようで、殊更俺の中の怒りは燃え上がった。
「全員、整列だ!」
「は、はいっ!」
「あ、ミュンはしなくていいぞ」
「ふえ?!」
背筋を伸ばして律儀に返事をしてくれたミュンは省き、残りの三人に向き直る。
「ぐるるるるる」
ケルベロスが唸り声を漏らして睨んできたが、俺はもっとドスの効いた低い唸りで睨み返した。
――邪魔をしたら次の瞬間にはお前の首を取る、と。
きゅぅん、とケルベロスが一歩下がり怖気づく。
それほどに、今の俺は鬼のような形相を浮かべていたのだろう。
「待て」
「くぅーん」
「座れ」
「くぅーん」
「よし、って言うまで待てだ。いいな?」
「くぅーん」
先ほどまでの敵意はどこ吹く風。
ケルベロスは頭を垂れて座り込み、大人しく鳴き声を漏らしていた。
自称魔王の少女、勇者の青年、ドラゴンの美女。
俺は改めてそれぞれと視線を交わし、俺は煮えたぎった心を吐き出すようにクレスレブを地面に叩きつけた。
ごめん、ヤンデレ。
「なんでお前らは戦わないんだよ!」
「いや、あたしはどっちが死んでもいいし」
「私はさっき理由を言っただろう」
「私も勇者様に付き添ってるだけだからぁ。封印のせいで離れられないしぃ」
一様に返事をした三人の頭を軽く殴る。
「おいヴェーナ! お前、ここ数日の食費は全部俺とミュンに出させてるだろ。まったく金持ってないって言ってたよな。じゃあここで少しは働いて返せよ!」
「体で払えって言うの? このあたしに?」
「じゃねーと今日の晩飯は抜きだからな!」
「…………?! そ、それは困る」
「だったら手伝え。仕事もせずに楽して食えると思うな!」
BY、元社畜。
「お前が今晩すするのは、あったかいスープか夜露でできた軒下の泥水か。決まるのは俺の気分次第だからな」
「こ、このあたしを脅そうって言うの?」
「脅しじゃない。事実だ」
「…………ぐぅ」
実際にご飯を用意するのはミュンだが、俺が言えばなんとでもなるだろう。
「おい勇者!」
「な、なんだね」
「お前もお前だ。勇者だなんだって名乗るくらいなら、女の尻ばっか見てないで自分の尻に火をつけやがれ。なにが勇者だ、勇者ランドだ。そんなの渋谷の駅前でナンパしてる下心丸出しなDQNどもと変わんねえぞ! 勇者ならもっと、世界中の人間全てを背負えるくらいの器を見せてみろよ!」
「……あ、ああ」
「今日俺たちが受けた依頼はなんだ」
「骨拾い、だな」
「だったらさっさと拾ってこい!」
「お、おう」
気圧されるようにマルコムが頷く。
「そんでもってドラゴン!」
「なぁに?」
「特に思いつかないけど戦えるならお前も手伝え!」
「ひどぉい」
ついつい流れでキレてしまったが、スクーデリアは楽しそうに笑っていた。
ああ、もう。
せっかくの異世界生活が無茶苦茶だ。
最強ステータスでお気楽スローライフかと思えば、ただけた奴等にお説教。入社一年目の腑抜けた新人に教育で怒った時を思い出す。
俺の怒声を受けてさすがにバツが悪そうな顔をしたヴェーナとマルコムは、重い腰を持ち上げたように、それぞれ戦闘体制にはいる。
マルコムは腰の剣を、ヴェーナは槍を。
ついでにスクーデリアも、妖艶な笑みを浮かべながら魔法の詠唱を構える。
そう、これこそパーティ。これこそ共闘というものだ。やっぱり俺だけ働くなんて納得がいかない。
勝手な満足感を抱きながら、俺はケルベロスへと向き直った。
勇者、魔王、ドラゴン。ファンタジーの有名所を連ねたパーティ。幼少期、ゲームをして一度はこんな編成を夢見たものだ。その中心に俺が立っている。
「よし、行くぞ」
俺の声に反応して、大人しく待っていたケルベロスが腰を上げる。
そうして俺が前に駆け出したのを機に戦闘は仕切りなおしされたのだった。
見習いとはいえ腐っても魔王だし、中身は変態だけど実力は勇者だし、力がセーブされてても元ドラゴンである。
やる気を見せた彼女たちの攻撃は激しい波のようにケルベロスを呑みこみ、そいつの持つ『500』という耐久値を瞬く間に溶かしていった。
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