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○2章 クエストへ行こう
2-1 『旅人のきまぐれ亭』
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石畳の大通りが、町を分断するように大きく東西へ伸びていた。
整然と立ち並ぶ煉瓦造りの建物。所々の煙突からは白い煙が立ち上がり、青白い空へと続いている。
その空にはもちろん飛行機なんて飛んでいないし、大通りを行き交うのも自動車ではなく馬車だ。
少し古い西洋風な町並み。
まさしくファンタジー世界といった風景が、俺の目の前に広がっていた。
ゲームをやってた子供の頃に一度は憧れた『剣と魔法の世界』に足を踏み入れたのだと、その光景が俺の童心をくすぐって昂ぶらせる。
しがないサラリーマンだった俺が、若くして事故にあい、どういう理由か気が付けばこんな世界に飛ばされていた。
しかも最強のステータスまで与えられて。
これは神の天命か。
頑張った社畜へのプレゼントか。
最強ステータスで、最高のセカンドライフ。
目指せ、異世界で夢のような極上のスローライフ!
俺は絶対に、この第二の人生を楽しく、楽に謳歌してやる!
――と思ってはいるのだが。
俺の目の前には、様々な問題が立ちはだかっていた。
その一つが――。
「うおっ、あぶねえ! 町の中でいきなり殴りかかってくるんじゃねえ!」
「虫がいたのよ」
「じゃあその手に持ってる角材はなんだ。釘がついてるぞ」
「これは……櫛よ。髪を梳かすのに女の子の必需品でしょ」
せっかくのスローライフを送るつもりが、ヴェーナという自称魔王見習いの少女に命を狙われることに。
おかげで気の休まる時がない。
のんびり、何もせずに生きたいだけという俺の願いはどうにも叶いそうにない。
しかし、もっと大きな問題が俺にはあった。
「エイタさん、見えてきましたよ。あそこです」
俺とヴェーナの前を歩いていた、大きなバックパックを背負った幼い少女――ミュンが、大通りの先に見えた大きな建物を指差す。
「アレか」
「はい、アレです」
目の前にたどり着き、その建物を見上げる。
とんがり帽子のような屋根が特徴的な、二階建ての石造り。
入り口には赤色の豪奢な両開きの門が備え付けられていて、それを囲む両方の柱には竜の首を象ったようなオブジェがある。太陽に背を向けて影を落としたそれは、松明の火にゆらゆらとあてられ、妙な威圧感を醸し出している。
まるでゲームのラスボスが住まう居城のような迫力。
その荘厳さに思わず息を呑む。
今からここに入るのか、と緊張で汗が流れた。
だが、問題を抱えてしまった俺には引き返すという選択肢すらない。
覚悟を決めて、行くしかない。
ミュンに先導されて、その建物へと足を踏み入れる。
「どうぞ、エイタさん。ここが、冒険者のためのクエスト斡旋ギルド――『旅人のきまぐれ亭』です!」
整然と立ち並ぶ煉瓦造りの建物。所々の煙突からは白い煙が立ち上がり、青白い空へと続いている。
その空にはもちろん飛行機なんて飛んでいないし、大通りを行き交うのも自動車ではなく馬車だ。
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これは神の天命か。
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目指せ、異世界で夢のような極上のスローライフ!
俺は絶対に、この第二の人生を楽しく、楽に謳歌してやる!
――と思ってはいるのだが。
俺の目の前には、様々な問題が立ちはだかっていた。
その一つが――。
「うおっ、あぶねえ! 町の中でいきなり殴りかかってくるんじゃねえ!」
「虫がいたのよ」
「じゃあその手に持ってる角材はなんだ。釘がついてるぞ」
「これは……櫛よ。髪を梳かすのに女の子の必需品でしょ」
せっかくのスローライフを送るつもりが、ヴェーナという自称魔王見習いの少女に命を狙われることに。
おかげで気の休まる時がない。
のんびり、何もせずに生きたいだけという俺の願いはどうにも叶いそうにない。
しかし、もっと大きな問題が俺にはあった。
「エイタさん、見えてきましたよ。あそこです」
俺とヴェーナの前を歩いていた、大きなバックパックを背負った幼い少女――ミュンが、大通りの先に見えた大きな建物を指差す。
「アレか」
「はい、アレです」
目の前にたどり着き、その建物を見上げる。
とんがり帽子のような屋根が特徴的な、二階建ての石造り。
入り口には赤色の豪奢な両開きの門が備え付けられていて、それを囲む両方の柱には竜の首を象ったようなオブジェがある。太陽に背を向けて影を落としたそれは、松明の火にゆらゆらとあてられ、妙な威圧感を醸し出している。
まるでゲームのラスボスが住まう居城のような迫力。
その荘厳さに思わず息を呑む。
今からここに入るのか、と緊張で汗が流れた。
だが、問題を抱えてしまった俺には引き返すという選択肢すらない。
覚悟を決めて、行くしかない。
ミュンに先導されて、その建物へと足を踏み入れる。
「どうぞ、エイタさん。ここが、冒険者のためのクエスト斡旋ギルド――『旅人のきまぐれ亭』です!」
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