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14. A・Dの夏休み 【R18】

A・Dの夏休み ⑦ 【R18】

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 佐保と合流すると、暫くたってから竜助と恭子が現れた。
 遂にA・Dが勢ぞろいだ。
 四人は顔を見あって、どんよりとした溜息を吐いた。

「別行動に、全く意味がなかったよな」

 竜助は二時間以上にも及ぶドライヴを強要され、わざわざ見飽きた顔を見に来る結果になった事に、疲れを隠せない。

 道中、ビーチフェスの運営スタッフを手伝って欲しいと、連行された理由を聞いていただけに、疲れが倍増な気分だ。

「あんたたちは離れられない運命なんだよ。前世でよっぽどの因縁があるんじゃない? 男どもを結ぶ赤い糸って、うっわー。キモイ」

 それに今回一役買ってる恭子が、一刀両断する。
 赤い糸は恋人だけで充分だと、彼らが思っている事など恭子には関係ない。面白ければなんだっていい。

 焼きそばを二皿完食し、冷やし中華に取り掛かる十玖に、恭子が顔をしかめた。

「あんた、どんだけ食べんのよ」
「エネルギー補充しないと、体温上がらないじゃないですか」

 十玖は、炭水化物を黙々と食べ続ける。
 他の三人も二皿完食し、今は酒の肴に集中している。

「それで全く太らないって、羨ましいわ」

 とか言いながら、生ビールを飲んでいては本末転倒だ。

「そう言えば、ビーチフェスって聞いたんだけど?」

 ウーロン茶で枝豆を食べている晴日が訊ねた。
 言われてみれば、風に乗って音楽が聞こえてくる。

「そうなのよ。地元活性化のために有志で参加してるんだ。加奈と美里が地元でさ。十三時までアマチュアがやって、その後プロに交代。クワトロは十五時からだから、あんたらも顔出してよ」

 そろそろ戻るかな、とビールを一気に煽り、恭子は立ち上がった。
 間もなく十三時になろうとしてる。

「食い終わったら、控え室に顔出すよ」

 枝豆を咥えながら晴日が言う。恭子は頷いて竜助に視線をやると、

「あんたは手伝いなんだから、早く来なさいよ。遊んでんじゃないわよ?」
「へいへい」

 不承不承に返事をする竜助の頭を小突いて、恭子は慌ただしく出て行った。

「晴と十玖は、ビーチフェス知らなかったんだ? 示し合わせたように集まるから、知ってるもんだと思っていたよ」
「謙人さんは知っていたんですか?」
「今回それモクで来たからね」

 十玖と晴日の不純な目的と比べ、リーダーらしい模範解答で、美空と萌がクスクス笑う。

「何か言いたそうだね?」

 むっとした面持ちの十玖。

「さすが謙人さんだよね、って思っただけよ。ねえ萌ちゃん」
「そうそう。晴さんなんか下心、隠しもしないも」
「それ言ったら十玖だって」

 二人であーでもないこーでもないとこけ下ろし始め、十玖と晴日は面白くない。
 十玖は美空に背中を向けて、冷やし中華を完食すると、ぷいっと外に出て行ってしまった。

「あーあ。ありゃ完全に拗ねてるよ」

 途中参加の竜助には、十玖の斜めな機嫌の理由が分かってない。

「俺は間違いなくヤリモクだから否定はせんけどね~」

 真正直に言う晴日。女子たちの軽蔑するような眼差しなど、気にもしていない。

「十玖はヤラんでも、美空と一日中べったり出来たら多分満足なのに、色々と邪魔が入るからイライラするんだろ。そこに来て、誰かさんは十玖の心配をよそに、我が儘ばっか言ってるし」

 晴日の言う通りだ。十玖の気持ちを考えたら、Tシャツ一枚着るなんて造作もない事なのに、最近ちょっと反発したくて仕方ない。何かあれば、助けを求めるくせに。

「十玖を試すなや」
「試してなんて」
「ホントに? どこまでなら許されるか、試しているように見えるんだけど」

 意地悪な物言いの兄を睨む。けどそんな妹なんて怖くもない。
 晴日は、サヤに入ったままの枝豆を美空に投げつける。彼女が避けて落ちた枝豆をテーブルに置くと、晴日は片眉をそびやかして続けた。

「お前が、試すな」

 兄の言いたいこと。
 あの日、美空を守れなかったことが、どれだけ十玖の心の枷になっているのか。
 忘れたわけじゃない。

「十玖の所に行ってくる」

 美空が矢庭に立ち上がり、すたすたと出て行くのを見届けて、一人話が分からない佐保はこっそり謙人に訊いた。

「どう言うこと?」
「俺たち全員、クーちゃんと十玖に、返しきれないデカい借りがあるんだよ」
「それは、何か聞いたらダメなんだね?」
「ごめん。それは佐保にも容易に言える事じゃないんだ」
「わかった」

 それ以上は、佐保も訊かない。
 賑やかな店内で、ここだけが曇天の下のようだった。



 海の家から十玖を探しながら歩いて、結局ホテルまで戻って来てしまった。
 フロントに訊ねると、十玖は戻っていた。

「とおくーっ」

 ノックしながら呼ぶと、すぐにドアが開いた。
 バスローブを着た無表情の十玖に迎え入れられ、顔が引きつるのを感じる。十玖は一言も話しかけて来ない。美空から目を逸らし、ソファーに腰かけて目を閉じた。 

「十玖?」

 呼びかけると、ピクリと反応したが、それだけだ。
 美空は傍によって、足元にペタリと座り込んだ。十玖の膝に触れると、拒絶を露わに膝を退けられ、美空の手が下に落ちた。

 十玖が自分を拒絶するなんて思いもせず、美空は途方に暮れた。
 まんじりともしない時間が流れ、美空は十玖の顔を覗き込む。

 寝てしまったのだろうか。
 そっと触れたが、さっきのように拒んだりすることはなかった。

 十玖が寝ている間にシャワーを浴び、髪を拭きながらもう一度、彼を覗き込んだ。
 髪から滴が落ちて、目を開けた十玖と視線が合った。彼は、ふっと目を伏せて、顔を逸らす。美空は堪らず、彼の頬を両手で挟んで、自分に向かせた。

「ごめんなさい。無視しないで」

 涙声で、十玖の唇に唇を重ねる。
 いつもなら返してくれる反応もなく、「どうすればいい?」と首に抱き着いた。
 拒みもしないが、受け入れてもくれない。

「十玖。無視しないで。無視されたら、どうしていいのか分からない」

 いつも十玖がしてくれるように、首筋に啄むキスをし、鎖骨に舌を這わす。バスローブの上から十玖の鍛え上げられた身体に、ゆっくりと手を這わした。

(恥ずかしくて、今なら軽く死ねるっ!)

 自らこんな事をするのは初めてだ。
 震える手で、バスローブの紐を解き、胸にキスをした。乳首を啄み、軽く噛む。ピクリとした十玖を見て、男でも感じるんだと変に感心してしまった。

 キスをしながら、徐々に下がって行く。十玖の足の間に入り、彼のモノに触れた。美空を一瞥し、また目を閉じる彼に切なさを感じる。

 十玖に誘導されて、触れた時のことを思い出しながら、動かし始めた。しかし彼の精神力が、勃つことを拒むかのように、時々ピクリとするだけで、変わらなかった。

 この精神力があるから、一年近くも待っていてくれたんだと思うと、自分が出来得る限りで十玖に想いを返したくなり、恐る恐る顔を近づけ、彼のモノを口に含んだ。
 これにはさすがの十玖も目を剥いた。

「美空!?」

 彼女の肩を掴んで引き剥がした。

「何してんの!?」
「やっと話してくれた」
「何でこんな事するの!?」
「十玖、あたしを見てくれないじゃない」
「だからって」
「十玖が、大事にしてくれてる事知ってるくせに、我が儘言ってごめんね? あたしも十玖が大事。だから、させて?」

 十玖の返事を待つまでもなく、ソレを咥えた。
 美空のたどたどしい愛撫の様を見ているだけで、別の生き物のように蠢き始める。

「どうしたらいいか教えて」

 上目遣いで聞いてくる。
 美空の舌が纏わりついて来る。たまに歯が当たり、それだけで十玖は意識が持って行かれそうになった。

「ダメだよ……美空。そんなことされたら…慣れてない……から」

 先をちろりと舐めると、僅かに舌を刺激するモノが滲んでいた。
 美空は、十玖を見上げた。

「教えてくれないなら、色々試してみるよ?」

 十玖の愛撫を思い出しながら、くるくると舌を回し、吸い上げ、歯を立てる。彼の反応を見逃さないように、神経を張り詰めながら、強く舌を押し付け吸い、しごく。根元から先端に向けて舌を這い上がらせると、口中で大きく戦慄き、その存在を知らしめるかのように、すぐに口いっぱいに大きくなって奥を突き刺す。美空は喉っぱみをしながら、涙を堪えてしゃぶり続けた。

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