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9. うん。まあそれなりに……?
うん。まあそれなりに……? ⑭
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大変長らくお待たせしました。
やっと座って作業が出来るようになりました (;´Д`)
本当にラスト目前に何してんでしょうねぇ。
申し訳ないです <m(__)m>
*************************************
翔が作ってきたピザトーストを頬張る怜から、先ほどのエロスイッチは解除されたものの、梓の解放までには至っていない。
パン屑をこぼさないように梓が皿を持ち、ピザトーストの行方とともに移動する。
(あたしを放してくれたら、こんな面倒臭いことしなくて済むのに)
それでも頑なに放そうとしない怜の執念に閉口しつつ、目の前に寄越されたピザトーストに齧りつく。梓が咀嚼している間に、「翔、もう一枚」と最後の一口が怜の口の中に消えていく。
「夕飯前にまだ食べるの?」
既に三枚目を食べ終わったところだが、梓の分を差し引けば正味二枚だろうか。それでもチーズが乗っている分、重たいはずなのだけど。
「翔のピザトースト久し振りだし」
「あたしだって同じ物作ってるじゃない。お母さん直伝なんだから、大差ないと思うんだけど?」
「翔ってところが今は貴重でしょ。それとも何? ヤキモチ?」
怜はニヤニヤ笑いながら梓から皿を受け取ってテーブルに置き、彼女の腰を引き寄せて顔を近づける。
「違うしっ」
「即答!? 何で!? 翔ッ! うちの嫁がツレないッ」
「「あー、はいはい」」
翔と完璧にハモッた返答に、怜の視線は梓とキッチンを行ったり来たりして「兄妹で投げやりだ」と嘆きを口にすれば、翔が「そいつは悪かったな」と微塵も思っていないだろう言葉を口にする。
梓はムッとした怜の腕をポンポンし、
「怜くんも三十半ばなんだから、ハイカロリーは気を付けないと。カッコ悪くなったら愛姫に嫌われちゃうよ?」
にーっこり笑って怜を見上げれば、瞠目し、唇を小刻みに震わせている。訴えるような目にうんうんと頷き、「お兄ちゃん。お代わりはナシで」とキッチンに向かって叫ぶと、「了解」と速攻返って来た。
「ところで。そこのお二人さん。夕飯食べてきますか?」
翔がそう訊いた二人の存在を、今頃思い出した風情で梓と怜が振り返る。どれだけ自分たちの世界に入ってんだよ、って話だ。
空気のような存在として扱われていた――――と言うか、目の前のバカ夫婦に毒気を抜かれて呆然と眺めていた城田が、ハッとしたように翔を振り返った。
「いや。二人で話したいので、そろそろお暇します。行くぞ?」
城田は立ち上がり、彩織の腕を掴んで引っ張り上げようとして、彼女の抵抗に眉をしかめた。
「ちょっと。何であたしも一緒が前提の話になってるのよ!? あたしはここに泊るのッ」
「迷惑だろ?」
うんうん頷く怜。
そんな弟を睨み付け、彩織の腕を取った城田を振り払う。
「行ったって結論は出てるのに無駄じゃない。結婚はしない」
「だからなんで!?」
「あんたにマウント取られたくないからよッ!」
水を打ったように静まり返った。
この返しは流石に誰も予想していなかったと思う。
城田は深い溜息を吐いて座り直し、額を押さえてもう一度溜息を吐く。
「マウントって、何だよ。阿保らしい」
「どうせあんたには阿保らしい事でしょうよ! でも、あたしには見過ごせない事なの! 高校の時から何度煮え湯を飲まされたかッ!! その屈辱は、あたしじゃなきゃ解らないわよ」
興奮して鼻息の荒い彩織に「煮え湯って?」と梓が訊ねると、待ってましたとばかりに彩織が話し始めたが、だんだん皆の表情が困った微笑みに変わっていった。
要は、それまで女王様で君臨してきた彩織は、生まれて初めて同学年に敗北を喫し、三年間一度も城田に勝てなかった為に、酷くプライドを傷つけられたらしいのだ。しかもそれを城田に蔑まれたと言う。
「あのなぁ。それは被害妄想だって、何度も言ったよな?」
「どこが被害妄想よ! いつもいっつも、小馬鹿にして笑ってたじゃないッ!!」
「だからそこからして違うんだって。俺は一度だって馬鹿にしたことないって。寧ろ一々ムキになって突っかかって来る南条、正直面倒臭いヤツって思ってたのは認めるが、可愛いと思ってたし、好きだったよ」
まるで世間話の風情で城田が言うと、彩織は顔面を爆発させたように真っ赤になった。
「……はあっ!? ふ、ふふふざけた事言ってんじゃないわよッ」
「ふざけてないし、前にも言った。……ああ。酔っぱらってたんだっけ、南条。ホント今も昔も変わらず面倒臭い奴だなぁ」
とか言いながら満面の優しい笑顔だ。
城田に頭をポンポンされ、言葉に詰まった彩織が恨めしそうな上目遣いで彼を見ている。
「いい加減意地張るの止めてくれると、嬉しいんだけどなぁ」
「意地なんか張ってないわよ!」
「だからソレが意地張ってるっての」
そしてまた二人の押し問答になり、四人が口を挟めないまま「埒が明かない」とキレかかった城田が、最終的に彩織を強制的に連れ帰って行ったのだった。
***
残暑厳しい九月も半分を過ぎた頃、彩織の子が産声を上げた。
彩織と城田は、結局入籍をしないまま子供の誕生を迎える羽目になったが、これでも双方大分歩み寄ったらしい。
籍は入れてないが一緒に暮らし始め、頑なだった彩織に認知を認めさせた城田に皆が拍手したのは、つい三か月前の事。
それと言うのも、翔が『俺さまの怜が今はこうやって梓如きの尻に敷かれてるんだから、城田さんを尻に敷くなど、彩織さんなら造作もないですよね?』と丸め込み……もとい。進言したお陰であるが、『如きで悪かったわね』と梓がちょっとばかり兄にイラっとしたのは言うまでもない。
出産の翌日、丁度土曜で仕事が休みという事もあり、怜一家でお祝いに顔を出した。
セレブ御用達の産婦人科の病室は、『どこぞの高級ホテルですか?』と訊きたくなるような抜かりのない完璧な内装で、一歩踏み込んで梓は後退りする。病院に入った時点でかなり引け腰だったけど、病室は華美ではないものの高級感満載だ。庶民代表としては気後れしかしない。
愛姫を妊娠した時に、志織もここで出産したからと、義母の凛子や志織に勧められたけれど、外装を見て逃げ帰った記憶が甦る。
(……絶対やだって泣きついて、怜くんに断って貰って正解だったわ。こんな所で一週間も寝起きするなんて、あたしには無理ッ!)
身体を休めるどころか、設備に気を遣い過ぎて疲弊する自分の姿が、容易に想像できてしまった。情けないことに。
出入り口で固まってしまった梓の背中を、怜の手がそっと中へと促した。
梓が怜を見上げると「大丈夫?」と気遣うように微笑まれ、彼女は大きく頷くと口角に笑みを浮かべた。
「彩織お姉さん、ご出産おめでとうございます。体調どうですか?」
「ありがとぉ。お陰様で、エステティシャンに有るまじき浮腫みで、パンパンの足が痛いわ」
そう言って笑い、寝転がったまま両足を高く上げる。細い足首が見る影もなく、確かに痛々しい。
「出産侮ってたわ」
「高齢だしね」
「煩い、怜。ところで、梓ちゃんの方は順調?」
「まあ何とか。今回は悪阻が酷くて死ぬかと思いましたけど、安定期に入って大分落ち着いて来ました」
心配気に見入って来た彩織にピースをすると、彼女はホッとしたように微笑む。
彩織の妊娠の一件から間もなくして、第二子の妊娠が発覚した梓である。
愛姫の出産でもう懲り懲りだと思っていたのに、妊娠を知るや産む気になっているのだから、母性恐るべし。
今のところまだ性別が判らないので、怜は『お姫様』とかなり浮かれているけれども、母親の直感では恐らく、怜はさめざめ泣くだろうと予想している。
その怜は愛姫を抱っこして、生まれたばかりの甥っ子を覗き見ていた。
「あーたん」
そう言って身を乗り出し手を伸ばす愛姫に、親バカ全開の怜はトロトロの笑顔で「赤ちゃんかわいいねぇ」と答えている。愛姫は「あーたんあーたん」と腕から落ちそうな勢いで更に手を伸ばし、負けた怜が身を屈めて近付いた。
ベビーベッドの柵を愛姫の小さな手が掴み、全身で喜びを表現する小さなお姉さんに、大人たちの顔が自然と緩む。
「ほらほら。お姫様。大人しくしないと、赤ちゃんが驚いて泣いちゃうよ?」
「なーちゃう?」
「うん。だから大人しくしようね?」
「あい」
お利口さんな返事をして、じーっと従弟を見る。肩越しに怜を振り返ってふにゃっと笑い、また従弟に視線を戻す。愛姫は恐る恐る手を伸ばし、ぷにぷにの頬を小さな笑いを漏らしながら突っついて見せた。すると小さな口がその指を捜し当ててチュッチュと吸い始め、「いやぁん」と一歳児の何とも悩ましい声があがる。
一瞬慄然とした大人たちなどお構いなしの愛姫を、怜が慌てて「ダメだよ」と引き離して抱き抱えた。
腕の中で「いやんいやん。パパはなちて」と必死の抵抗を見せる愛姫から、軽く焦りを見せる弟に軽蔑を織り交ぜた眼差しを向ける彩織。
三人の間には、気まずい空気の流れが生じていた。
梓は居た堪れなさから逃げ出すべく、怜が置きっ放しにしていた差し入れの食品の数々を、ミニキッチンの冷蔵庫に納め始める。
彩織は大きな溜息を漏らし、項垂れた彼女は「本当にもう……」と情けなさそうに呟いた。
やっと座って作業が出来るようになりました (;´Д`)
本当にラスト目前に何してんでしょうねぇ。
申し訳ないです <m(__)m>
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翔が作ってきたピザトーストを頬張る怜から、先ほどのエロスイッチは解除されたものの、梓の解放までには至っていない。
パン屑をこぼさないように梓が皿を持ち、ピザトーストの行方とともに移動する。
(あたしを放してくれたら、こんな面倒臭いことしなくて済むのに)
それでも頑なに放そうとしない怜の執念に閉口しつつ、目の前に寄越されたピザトーストに齧りつく。梓が咀嚼している間に、「翔、もう一枚」と最後の一口が怜の口の中に消えていく。
「夕飯前にまだ食べるの?」
既に三枚目を食べ終わったところだが、梓の分を差し引けば正味二枚だろうか。それでもチーズが乗っている分、重たいはずなのだけど。
「翔のピザトースト久し振りだし」
「あたしだって同じ物作ってるじゃない。お母さん直伝なんだから、大差ないと思うんだけど?」
「翔ってところが今は貴重でしょ。それとも何? ヤキモチ?」
怜はニヤニヤ笑いながら梓から皿を受け取ってテーブルに置き、彼女の腰を引き寄せて顔を近づける。
「違うしっ」
「即答!? 何で!? 翔ッ! うちの嫁がツレないッ」
「「あー、はいはい」」
翔と完璧にハモッた返答に、怜の視線は梓とキッチンを行ったり来たりして「兄妹で投げやりだ」と嘆きを口にすれば、翔が「そいつは悪かったな」と微塵も思っていないだろう言葉を口にする。
梓はムッとした怜の腕をポンポンし、
「怜くんも三十半ばなんだから、ハイカロリーは気を付けないと。カッコ悪くなったら愛姫に嫌われちゃうよ?」
にーっこり笑って怜を見上げれば、瞠目し、唇を小刻みに震わせている。訴えるような目にうんうんと頷き、「お兄ちゃん。お代わりはナシで」とキッチンに向かって叫ぶと、「了解」と速攻返って来た。
「ところで。そこのお二人さん。夕飯食べてきますか?」
翔がそう訊いた二人の存在を、今頃思い出した風情で梓と怜が振り返る。どれだけ自分たちの世界に入ってんだよ、って話だ。
空気のような存在として扱われていた――――と言うか、目の前のバカ夫婦に毒気を抜かれて呆然と眺めていた城田が、ハッとしたように翔を振り返った。
「いや。二人で話したいので、そろそろお暇します。行くぞ?」
城田は立ち上がり、彩織の腕を掴んで引っ張り上げようとして、彼女の抵抗に眉をしかめた。
「ちょっと。何であたしも一緒が前提の話になってるのよ!? あたしはここに泊るのッ」
「迷惑だろ?」
うんうん頷く怜。
そんな弟を睨み付け、彩織の腕を取った城田を振り払う。
「行ったって結論は出てるのに無駄じゃない。結婚はしない」
「だからなんで!?」
「あんたにマウント取られたくないからよッ!」
水を打ったように静まり返った。
この返しは流石に誰も予想していなかったと思う。
城田は深い溜息を吐いて座り直し、額を押さえてもう一度溜息を吐く。
「マウントって、何だよ。阿保らしい」
「どうせあんたには阿保らしい事でしょうよ! でも、あたしには見過ごせない事なの! 高校の時から何度煮え湯を飲まされたかッ!! その屈辱は、あたしじゃなきゃ解らないわよ」
興奮して鼻息の荒い彩織に「煮え湯って?」と梓が訊ねると、待ってましたとばかりに彩織が話し始めたが、だんだん皆の表情が困った微笑みに変わっていった。
要は、それまで女王様で君臨してきた彩織は、生まれて初めて同学年に敗北を喫し、三年間一度も城田に勝てなかった為に、酷くプライドを傷つけられたらしいのだ。しかもそれを城田に蔑まれたと言う。
「あのなぁ。それは被害妄想だって、何度も言ったよな?」
「どこが被害妄想よ! いつもいっつも、小馬鹿にして笑ってたじゃないッ!!」
「だからそこからして違うんだって。俺は一度だって馬鹿にしたことないって。寧ろ一々ムキになって突っかかって来る南条、正直面倒臭いヤツって思ってたのは認めるが、可愛いと思ってたし、好きだったよ」
まるで世間話の風情で城田が言うと、彩織は顔面を爆発させたように真っ赤になった。
「……はあっ!? ふ、ふふふざけた事言ってんじゃないわよッ」
「ふざけてないし、前にも言った。……ああ。酔っぱらってたんだっけ、南条。ホント今も昔も変わらず面倒臭い奴だなぁ」
とか言いながら満面の優しい笑顔だ。
城田に頭をポンポンされ、言葉に詰まった彩織が恨めしそうな上目遣いで彼を見ている。
「いい加減意地張るの止めてくれると、嬉しいんだけどなぁ」
「意地なんか張ってないわよ!」
「だからソレが意地張ってるっての」
そしてまた二人の押し問答になり、四人が口を挟めないまま「埒が明かない」とキレかかった城田が、最終的に彩織を強制的に連れ帰って行ったのだった。
***
残暑厳しい九月も半分を過ぎた頃、彩織の子が産声を上げた。
彩織と城田は、結局入籍をしないまま子供の誕生を迎える羽目になったが、これでも双方大分歩み寄ったらしい。
籍は入れてないが一緒に暮らし始め、頑なだった彩織に認知を認めさせた城田に皆が拍手したのは、つい三か月前の事。
それと言うのも、翔が『俺さまの怜が今はこうやって梓如きの尻に敷かれてるんだから、城田さんを尻に敷くなど、彩織さんなら造作もないですよね?』と丸め込み……もとい。進言したお陰であるが、『如きで悪かったわね』と梓がちょっとばかり兄にイラっとしたのは言うまでもない。
出産の翌日、丁度土曜で仕事が休みという事もあり、怜一家でお祝いに顔を出した。
セレブ御用達の産婦人科の病室は、『どこぞの高級ホテルですか?』と訊きたくなるような抜かりのない完璧な内装で、一歩踏み込んで梓は後退りする。病院に入った時点でかなり引け腰だったけど、病室は華美ではないものの高級感満載だ。庶民代表としては気後れしかしない。
愛姫を妊娠した時に、志織もここで出産したからと、義母の凛子や志織に勧められたけれど、外装を見て逃げ帰った記憶が甦る。
(……絶対やだって泣きついて、怜くんに断って貰って正解だったわ。こんな所で一週間も寝起きするなんて、あたしには無理ッ!)
身体を休めるどころか、設備に気を遣い過ぎて疲弊する自分の姿が、容易に想像できてしまった。情けないことに。
出入り口で固まってしまった梓の背中を、怜の手がそっと中へと促した。
梓が怜を見上げると「大丈夫?」と気遣うように微笑まれ、彼女は大きく頷くと口角に笑みを浮かべた。
「彩織お姉さん、ご出産おめでとうございます。体調どうですか?」
「ありがとぉ。お陰様で、エステティシャンに有るまじき浮腫みで、パンパンの足が痛いわ」
そう言って笑い、寝転がったまま両足を高く上げる。細い足首が見る影もなく、確かに痛々しい。
「出産侮ってたわ」
「高齢だしね」
「煩い、怜。ところで、梓ちゃんの方は順調?」
「まあ何とか。今回は悪阻が酷くて死ぬかと思いましたけど、安定期に入って大分落ち着いて来ました」
心配気に見入って来た彩織にピースをすると、彼女はホッとしたように微笑む。
彩織の妊娠の一件から間もなくして、第二子の妊娠が発覚した梓である。
愛姫の出産でもう懲り懲りだと思っていたのに、妊娠を知るや産む気になっているのだから、母性恐るべし。
今のところまだ性別が判らないので、怜は『お姫様』とかなり浮かれているけれども、母親の直感では恐らく、怜はさめざめ泣くだろうと予想している。
その怜は愛姫を抱っこして、生まれたばかりの甥っ子を覗き見ていた。
「あーたん」
そう言って身を乗り出し手を伸ばす愛姫に、親バカ全開の怜はトロトロの笑顔で「赤ちゃんかわいいねぇ」と答えている。愛姫は「あーたんあーたん」と腕から落ちそうな勢いで更に手を伸ばし、負けた怜が身を屈めて近付いた。
ベビーベッドの柵を愛姫の小さな手が掴み、全身で喜びを表現する小さなお姉さんに、大人たちの顔が自然と緩む。
「ほらほら。お姫様。大人しくしないと、赤ちゃんが驚いて泣いちゃうよ?」
「なーちゃう?」
「うん。だから大人しくしようね?」
「あい」
お利口さんな返事をして、じーっと従弟を見る。肩越しに怜を振り返ってふにゃっと笑い、また従弟に視線を戻す。愛姫は恐る恐る手を伸ばし、ぷにぷにの頬を小さな笑いを漏らしながら突っついて見せた。すると小さな口がその指を捜し当ててチュッチュと吸い始め、「いやぁん」と一歳児の何とも悩ましい声があがる。
一瞬慄然とした大人たちなどお構いなしの愛姫を、怜が慌てて「ダメだよ」と引き離して抱き抱えた。
腕の中で「いやんいやん。パパはなちて」と必死の抵抗を見せる愛姫から、軽く焦りを見せる弟に軽蔑を織り交ぜた眼差しを向ける彩織。
三人の間には、気まずい空気の流れが生じていた。
梓は居た堪れなさから逃げ出すべく、怜が置きっ放しにしていた差し入れの食品の数々を、ミニキッチンの冷蔵庫に納め始める。
彩織は大きな溜息を漏らし、項垂れた彼女は「本当にもう……」と情けなさそうに呟いた。
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