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6. 梓、ビビッて逃走する

梓、ビビッて逃走する ⑮ 【R18】

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 チュッチュッと唇を啄みながら、喜色を浮かべた怜の目が、梓の目を覗き込んでくる。恥ずかしいから目を逸らそうとすると、「僕を見て」と艶めいた声で言われ、逸らせなくて困っていた。
 怜の左手が張りのある丘をやんわりと捉え、硬く勃ち上がった頂を指で弄び、右手は彼女のしっとりとした肌の感触を愉しんでいる。  
 これで目を逸らすなという怜は意地悪だ。
 幾度もぴくんぴくんと身体が跳ね、目元を赤く染めた羞恥の双眸を怜はうっとりと見ている。

「梓、可愛い。この顔をずっと見ていたい」

 唇を薄く開き、吐息を漏らした梓の唇を塞いで、舌先を忍び込ませる。歯列をなぞり、梓の尖らせた舌先を絡め取った。吸いつき甘噛みし、また絡め合う。
 淫猥なキスが梓の頭を痺れさせ、怜が硬く凝った頂を指先で転がし、撫でまさぐっていた右手はお腹から背中、尾骨と撫で上げられた途端に腰が浮いた。お腹の奥でジュクッとした熱が生まれ、膣内なかからとろりと蜜が零れるのを感じる。
 怜の指がするりと忍び込み、優しい指使いで秘裂を潤していく。ぬるぬるとした蜜を指に纏わせ、隠れていた花芯を露にするとぐりぐりと扱き始めた。
 ぷくっと赤く腫れ上がった花芯を怜が軽く爪を立てて抓むや、梓の腰が激しく踊り出し、卑猥な蜜を溢れさせる。
 梓の指が枕を掴み、両足の爪先まで快感が張り詰めた。
 全身を駆け巡る痺れが頭まで侵し始め、目の前が明滅する。

「あっ、あ、あ、あ…ぃやん……れぃ~い」
「イイよ。我慢しないで」
「…っは…だめだめだめぇ……っちゃうぅ」

 暫らく蜜口で遊んでいた指が、達する直前に奥まで挿し入れられ、梓の弱い所を押し上げ引っ掻きながら、もう一方では敏感になり過ぎた花芯を抓み潰した。
 彼女の背中が大きく撓って硬直し、プシュッと音を立てて梓から弾け飛ぶ。
 達したゾクゾク感と、解放感。それと共に襲い来る羞恥。  

「いやーいやーいやーッ!!」

 慌てて跳び起きた梓を抱き締め、背中を優しく擦る。彼の胸の中でイヤイヤと首を振って泣きじゃくる梓の耳元で、怜は安心するように囁いた。

「大丈夫。大丈夫だから落ち着て」
「だってだってッ! あたしッ。お…お漏らしぃ」
「違う違う。そうじゃないから。先刻のは潮噴きだよ。お漏らしじゃないから。ね?」 

 でもと言って泣き止まない梓を胡坐の上で横向きに抱きしめて、怜がゆらゆらと身体を揺らすと、少しずつ落ち着いて来た。
 怜の背中に腕を回し、彼の肩に額を擦り付け「揺ら揺らされて落ち着くなんて、赤ちゃんみたいで恥ずかしい」と呟くと、「そんなアズちゃんも可愛いよ」と髪の中に指を滑らせ、肩にキスをする。
 鎖骨をなぞるように怜の舌が這う。
 梓が吐息を漏らすと、怜は向かい合うように彼女の向きを変え、「このまましよっか?」と軽く腰を突き出してくる。滾った屹立が秘裂をぬるりと滑り、切先が蜜口に引っ掛かった。もう一度腰を突き上げられたら、挿入ってしまう際どい所でピクンピクンと蠢いている。

「このままって、このまま?」
「うん。このまま。ナマで」
「ダメでしょ。避妊しなきゃ」
「僕はいつだってオーケーだよ?」
「あたしがまだオーケーじゃないもん」

 梓がぷうっと頬を膨らませ、怜は残念そうに肩を竦めた。

「はぁい。分かりました。なら梓が着けてね」
「え?」

 意味が理解できずに間抜けな声を漏らすと、怜は後ろにびろーんと寝そべり、枕元から最近見慣れてしまった銀のパッケージを取って、梓の前に突き出した。
 怜が顎をしゃくって取れと促してくる。

「梓がしないなら、そのままれちゃうけどイイ?」

 にっこり笑って脅してくる。
 腰を動かして尖端を滑らせ、引っ掛けては外してまた滑らせ、「早くしないと挿入はいっちゃうよ?」と梓を煽って意地悪く微笑む。
 先刻までの優しかった怜は何処に行ってしまったのか。
 くっと唇を噛んで怜を睨み、彼の手から避妊具を奪い取る。掌を開いて、情けない顔で見詰めた。

「裏表あるから気を付けてね」
「あたしがやらなきゃダメ?」
「避妊したいのは梓でしょ?」

 ニヤッと笑った怜に舌打ちすると、「挿れるぞ」と突き上げて来る。切先が僅かに食い込んで、短い悲鳴と共に腰を浮かした。
 梓は恨めし気に怜を見ながら唸り、意を決して開封する。初めて手にするソレはヌルッとしていて妙に気持ち悪い。
 怜に言われた通り先端を軽く捩じって、そこで躊躇した。
 初めてマジマジと見るそれは、異様な存在に見える。肌の白い怜のその部分だけが浅黒く、血管が浮いて見える。別の生き物のように上下する雄に、梓は思わず息を呑んでしまった。

「あずさぁ。まだ~ぁ? もお本当にこのまま挿れちゃうよ?」
「待って! 今やるからッ」

 怜の腰つきが不穏な動きを見せ、彼のお腹を押さえた。その弾みで屹立が手に当たり、ドキッとしながら恐る恐る手を伸ばす。指先で掴んだ怜の情欲の象徴は、熱く脈打ち、梓の手の中で硬さを増していく。

「梓に触られるだけで、気持ちイイ」

 吐息混じりにそう言った。
 避妊具を先端に宛がい、絡んで巻き込まないように、両手の指先でゆっくりと丁寧に下ろしていく。
 怜の熱を持った呼吸音。ぴくぴくと反応する熱杭は、本当に気持ちが良いのだろう。
 被せ終わるや怜は「焦らされて限界」と梓の腰を掴んで持ち上げ、彼女の膣内に押し入った。いつもなら梓の様子を見ながら挿入してくるのに、彼女の重みも相まって一気に貫かれ、その深さに梓は息を詰めて怜の首にしがみ付く。

「ごめん。我慢できない」

 怜は彼女を上下に揺さぶり、自身も腰を突き上げて来る。
 髪を振り乱し、怜の上で嬌声を漏らす。
 深く膣内を抉ってくる熱杭にボルチオを刺激され、梓は激し過ぎる悦楽に意識を飛ばす寸前怜をきつく締め上げ、彼は苦し気に眉を寄せる。
 後ろに反るように倒れ込んでいく梓の腰を抱きしめながら、怜は搾り取られる錯覚を覚えながら白濁を何度も吐き出した。



 ヴァレンタインの翌日、梓は倦怠感を引き摺りながらホテルから直接出勤し、デスクに何度も撃沈しそうになった。

 昨夜、意識を失ってからどのくらい経っていたのか、照明の微かな灯りだけが灯された中で、もぞもぞと何やら身体を這い回る気持ち良い感触に、小さな喘ぎを上げた。意識がはっきりしてきて怜の名を呼ぶと、彼は心置きなくとばかりにそこからまた梓を攻め上げ、空が白んでくるまで彼女を抱き潰して下さった。
 怜曰く『一緒に住めば、ここまで盛らないのに』らしい。嘘だと確信を持てるのは、ちょっと嫌だ。

 今日をただひたすら無事に乗り切ることだけを考え、帰ったら速攻寝る事だけを楽しみに仕事を熟し、終業時間になると同時にゆらゆらした足取りで会社を出た。この時みんな梓を遠巻きにして見ていたので、相当ヤバいオーラを出していたと思われる。

 元気で肌艶も良かった怜に恨み言を呟きながら、空車のタクシーを待っていた。
 今日は流石にもう電車で帰る気力がない。
 二人のどちらかの車に乗せて貰いたいところだったけど、翔の帰りは遅くなりそうだし、怜とは昨日の今日で一緒に帰るのは、自殺行為にしか考えられないため却下だ。

 なかなか空車が来なくて、その場に座り込みたくなるのを必死に堪えていると、後ろから声を掛けられた。
 振り返ったそこには、初めて見る女性。
 年の頃は三十代前半だろうか。ツイードのロングコートを纏い、明るめの髪を後ろで一つに結び、額を露にしている。細面の端正な顔立ちは薄化粧を施し、怜悧さを醸し出している和美人が立っていた。
 梓は不躾にも彼女をジロジロと見、誰だ? と心中で首を傾げる。

「大石、梓さまでお間違いないですか?」

 彼女は再び梓の名前を呼んだ。
 会った記憶はないけれど、彼女は少なくとも梓のことを知っている。

「どちら様ですか?」

 警戒を滲ませた声音で問えば、彼女は会釈した。

「失礼いたしました。わたくし柏倉と申します。実は、わたくしの主人がどうしても大石様にお会いしたいと申しておりまして、不躾を承知でお願いに参りました。どうかご同行頂けませんでしょうか?」
「ご主人様って、どちらさま?」
「それは、お会いしてから驚かせたいと申しておりまして、ここでは伏せさせて頂きたいのですが」
「けど、知らない人に着いて行ってはいけませんって、幼稚園の子供でも知ってますよ?」

 大真面目な顔で言うと、柏倉は目元を綻ばせ「そうですね」と頷く。
 梓としては面倒なことに係わらず、一秒でも早くベッドに潜り込みたい。

「申し訳ありませんけど、今日の今日って言うのはちょっと困ります。どうしてもと仰るなら、何処の誰であるのか明らかにして頂き、日程を予めお知らせ頂かない事には、こちらとしても応対しかねます」

 尤もらしいことを言っているが、頭の中はベッドの映像しか浮かんでこない。
 半分思考回路が寝ているので、相手にちゃんと話が通じたのか不安になりつつ、「失礼します」と会釈して、梓は逃げるように歩き出した。
 突っ立ってタクシーを待っているから、訳の分からない人に声を掛けられるのだと、足早に駅に向かう。後ろから柏倉が追い駆けて来て、

「では後日、改めてご連絡させて頂きます。本日は申し訳ありませんでした」

 そう言って足を止めた彼女は深々と頭を下げ、肩越しからその様子を見た梓はちょっと良心を揺さぶられたが、歩みを止めることはしなかった。

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