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3. 架純 ~女の純情なめんなよ

架純 ⑭ 【R18】

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 腹が立ったからさっさと帰ってしまおうかと思ったけれど、黒珠を一人残して帰る選択肢を選ぶには、ちょっとばかし勇気が足りなくて断念した。

(……これでまた金子くんと疎遠になったら嫌じゃない)

 架純を放置して寝られるもの嫌だけれど、やっと、やっと想いが通じたのだから。
 こちらに背中を向けて寝ている黒珠の寝姿は、先刻から一向に変わらない。
 両想いになったのにこの仕打ちは寂しいけれど、時間も時間だし仕方ないだろう。架純も大分眠気が来ている。

 黒珠が寝やすいようにと思って、照明を落とそうとスイッチを探すも、部屋に入った時に自動で照明が点いたから、初心者の架純は手間取った。壁のあちこち探し回って半分諦めかけた時に、ベッドヘッドにたくさんのスイッチを発見し、黒珠を起こさないように照明を絞ることに成功した。
 それだけの事にどっと疲れて項垂れてしまった目の端に、穏やかな黒珠の寝顔。
 ベッドを揺らさないようにそっと近付いて顔を覗き込んだ架純は、ふふっと小さく笑いを漏らす。

(無防備な顔しちゃって)

 安心して貰えているのかなと思ったら、少し嬉しい。
 そろりそろりとベッドを後にすると、汗と湿気でベタつく躰をさっぱりさせたくて、架純はそおっと浴室に向かった。



 浴室から戻ると、黒珠の向きが変わっていた。
 先刻は眩しかったから寝難かったのかもと、架純はベッドの脇に立って黒珠を覗き込んだ。
 寝顔は少しだけ幼く見える。
 誰の目にも触れないように、黒珠を閉じ込めてしまえたらどんなに良いだろう。
 今この瞬間の黒珠は、架純だけのものだ。

「このまま時間が止まればいいのに」

 そっと呟いて、黒珠の頬に指を伸ばす――――と、いきなり視界が回転し、架純の上に影が落ちた。
 何事か理解が追い付かず、ポカンとしている架純に影が迫って来る。

「遅い。待ちくたびれた」

 ベッドが撓み、覆い被さって来る影の正体が黒珠だと気付いた時には、両手が押さえ込まれて唇を塞がれていた。

「…っん……」

 架純の唇を割って捩じ込まれた黒珠の熱い舌に口内を侵されていく。ひとつの生き物のように動き回る舌先が、架純の中から何かを引き摺り出そうとしている。それが怖いと思うのに、嫌ではない不可解さに戸惑いながら、黒珠に翻弄されていた。
 絡めあった舌を伝って、黒珠の唾液が注ぎ込まれる。架純はそれを嚥下し、もっとと舌を突き出す。彼は彼女の舌を自分のエリアに引き込み、柔らかく歯を立てては絡めとった。

(あたま…ぼーっとして……ふわふわ気持ちいーよぉ)

 触れ合う部分から聞こえて来る水音も、架純の鼓膜を震わせてゾクゾクさせる。
 公園のキスも気持ち良かった。けれど、今のキスの方がもっと黒珠を近くに感じられるみたいだ。
 黒珠を抱きしめたい。
 抱きしめて、今の気持ちを全身で伝えたい。

 二人の唇から甘い熱が漏れて、黒珠がゆっくり離れて行く。
 寂しい。
 そんな思いで黒珠の唇を見つめる架純に目を落とし、彼は「脱がせてもいいか?」とバスローブの紐に手を掛けた。
 架純の返事を待たずして紐が解かれていく。  
 柔らかいタオル地の感触が遠ざかって行き、空調のひんやりした空気が肌に触れた。舐る様な黒珠の視線を受けた肌に羞恥の熱が点る。

「ゃ…やだ。そんなに見ないでよぉ」

 自由になった手で咄嗟に胸を隠すと、呆気なく取り払われてしまった。

「ダメ。全部見せて」

 優しく諭すような口調で、黒珠が微笑んだ。
 高校の時はあれほど見たかった笑みが目の前に在って、架純に否の答えはない。
 黒珠の手がお腹から胸へと滑るように撫で上げる。
 それだけでももう気持ちがいい。躰がひくひくと蠢く。
 決して大きい方ではない乳房を救い上げ、黒珠の両手がやわやわと感触を楽しんでいる。彼の目元が上気していて、それを見つめる架純も堪らない気持ちになった。

「肌が手の中に吸い付くみたいだな。触っていて気持ちいい」

 そう言って黒珠は身を屈め、キュッと絞った双丘の頂を口に含んだ。
 その一方で右の頂を指先で抓んでは転がされる。

(こ……これは最早、視覚テロですからぁ)

 あの黒珠が架純の胸を愛撫している光景に、爆死できそうな気がする。それも木端微塵に。
 そんな悠長なことを考えていた架純だったが、数分も経たないうちに思考が危うくなりだした。
 愛撫された乳房の感覚が研ぎ澄まされ、僅かに頂を掠っただけでも躰が大きく跳ねる。

「やっ。なんか……だめ。お腹の奥が、ムズムズして、困るぅ」
「もっと困ってよ。厭らしく悶える架純が見たい」

 さらりと呼び捨てにされたけど、しっかり拾い上げた。鼓膜への刺激が、彼女の躰をなお一層切なくさせる。
 腿を擦り合わせたその奥から溢れて来るものを感じ、架純の唇から切ない吐息が漏れた。黒珠は面を上げ、彼女の唇に啄むキスを落とし、

「ごめん。架純のこと大事に抱きたいけど、花頭に煽られてホントはもう全然余裕ない。もし俺が先走って架純を痛がらせたら、思いっきり叩いて。それでもダメだったら噛みついてでも止めて」

 黒珠の懇願するような眼差しに、架純が小さく頷く。すると彼は彼女の脚の間に割って入り、彼女の拓かれていない秘所に口づけた。

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