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 まずディレックの騎士団団長の任を解かなければ。マリアも研究所から除名。エリーゼが隣国のノアと結婚すれば寝返る可能性があると言っておけばいいだろう。

 俺は父上の執務室へやってきた。そして扉をノックすると部屋の中から「入れ」という野太い声が聞こえた。俺は「失礼します」と言いながら扉を開けた。

 部屋の中は綺麗に整理され、父上の周りをたくさんの側近たちが囲んでいる。仕事をする机の上には大量の資料が置かれている。


「父上お話があり参りました」

「ディレックがエリーゼと婚約破棄したのはなぜだ?」


 父上の問いが突然すぎて俺は、ワンテンポ遅れて「ベリンダの方が王妃に向いていると考えたからです」と答えた。父上は資料に目を通したまま、俺の方を見ようとしない。いや、見たくても見れないほどに忙しいのかもしれない。

 父上は側近に「この経費を削れ。戦力へ回す」と言ってからやっと俺と目を合わせた。


「そうか。ベリンダと結婚したいか。まあ、エリーゼも失踪してしまったことだし、お前の好きにすればいい。それから、ディレックがお前を裁判にかけると言ってきたのだが」

「はい、そのことでお話があり参りました。ディレックは今すぐに騎士団団長の任を解くべきです。もし本当にエリーゼがノア殿下と結婚した場合、あいつは寝返る可能性があります」


 父上は指を組んでそこに顎を置き「ほう」と言った。


「エリーゼは、隣国のノア殿下と結婚すると言いました。実際結婚するなんてありえませんが、もし繋がっていたとしてたら、少し厄介化と」


 そうすると父上は、驚いた表情をしてから、大口を開けて大げさに笑い始めた。そしてなぜだか、周りの側近たちも俯いてくすくすと笑っている者がいる。

 なぜ笑っている?俺は何かおかしなことを言ったか?


「お前、それは自分で起こしたことだろう。お前がエリーゼと婚約破棄なんてしなければ、ディレックだってこんなことにはならなかった。マリアだって国のためによく働いてくれたことだろう。お前がすべて引き起こした後始末をなぜ私がやらねばならん?お前はもう十七だろう?自分の尻ぐらい自分で拭ける年だろう?」


 父上の言っていることは跡形もなく正論。確かに俺がすべて引き起こしたことなのかもしれないけれど、少しぐらい俺の事を助けてくれてもいいだろう。クソ…


「…そうですね。自分でどうにかします。貴重なお時間ありがとうございました」

「ああ、私もお前ぐらいの年頃のころ、恋愛ごっこなんてことはよくやった。まあ、頑張れ」

「ええ、はい」


 父上は俺の言う事を聞いてくれない。こうなったら母上だけれど、母上はマリアと親しかったはず。俺とエリーゼが婚約したのも、母上とマリアが友人だったからという理由が大きい。こうなったら俺が王になったときに動き出すしかあるまい。

 ディレックだって父上が王の時は黙っているだろう。マリアもそれは同じ。俺は二十になれば国王になることができる。それまでの辛抱だ。は



ーーーーーーーーーー




 エリーゼが失踪して一年後、俺とベリンダは結婚した。ディレックの裁判の事はお金で解決することはできなかった。けれど父からの説得もあって示談金を渡して、結婚式の前には片付き、俺とベリンダは清々しい気持ちでその結婚ができた。

 ベリンダの家であるテイラー家には伯爵の爵位を渡した。

 結婚式は長らく続く、由緒正しい教会で行われて、たくさんの人たちがやってきた。他の国からもいろんな使節たちが祝いの品を持ってきた。それは隣国も同じであった。本当は隣国の国王となったノア・バートルも挨拶がてら来る予定だったらしいが、祝いの品と手紙だけよこしてきた。

 使節にノアはまだ結婚しないのか?と聞いたが「陛下は気難しい方ですからね」としか言わずに、結婚しないともはっきり言わない。


 それにエリーゼは失踪したままだ。どこに行ったかなんて関係ないけれども。

 ちなみに結婚式はベリンダが大きく派手に行いたいと言ったので、三日に続けて結婚式、披露宴を行い、やっと落ち着いたのは一週間後だった。とにかくいろんな人を招待して、貴族はほとんど来たのではないかと思う。お金もとにかくかかった。

 結婚指輪は最高級の物が良いと言われて、遠くへ行ってそれを買ってやった。新婚旅行は、一か月かけていきたいと言ってきたので、旅行の計画を立てて、一か月外交を行いながら、国を回った。もちろん隣国へも行った。バートルとも会ったが、ベリンダがバートルと会ったとたんに怯えたために、隣国に滞在したのは短かった。海へ行き、森へ行き、天空の魔法国へも行った。少し多忙だったが、ベリンダのおかげで楽しくいろんな国を回ることができた。

 そのまま俺とベリンダの結婚生活は幕を開けた。ベリンダはすぐに子供を妊娠して、父上と母上も祝ってくれた。

 そしてその二年後、俺は王位を継いだ。その時には息子のリオル一歳と、リオルの次の年に生まれた娘のメイリー0歳が居た。俺はまだ20歳になったばかりだというのに、二児の父となっていた。

 メイリーが生まれた時はまだまだ幸せだった。俺が王位を継いで三年、リオルが王族としての教育を受けるようになってから、ベリンダは少しづつおかしくなっていった。
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