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第十一話

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「なんで私は、こんなところに閉じ込められているの」

 ウィルトン王国内に入ることが出来、ウィルトン王国の王都へと向かっていた。そんな中でリリアは一人特殊な馬車に閉じ込められていた。その馬車は外からカギがかけられていて、馬車には何重にも強い魔法がかけられている。それでも内部はかなり快適で大きなソファにアンティーク調の丸テーブルにティーポットとティーカップが置かれている。
 ソファに腰かけ紅茶を飲みながらリリアは向かいに座る魔法使いを眺めていた。魔法使いは紫色の宝石が付いた杖でリリアを魔法で拘束している。

「案外暴れないで穏やかでいてくださるんですね」
「私が捕らえられたら暴れまわる獣のように思われているなら心外だわ。私は馬鹿じゃないの。あなた達が私に対して敵意があるか銅貨ぐらい見ればわかる。私を拘束しているのは私が彼を殺そうとしたからでしょう?」

 優雅にティーカップを持ち、ゆっくりと温かい紅茶を飲み込んだ。

「それに、私はこんな馬車か逃げられませんよ。強固ですから」
「嘘です」

 丸眼鏡の先で魔法使いはまっすぐとリリアを見つめている。その瞳を見ようとせずリリアは言葉だけ聞いて薄く唇を広げた。

「リリア様は逃げようと思えば逃げられますよね。ノア殿下のことを脅したのも何か理由があるのですか?」
「私は彼を同じ人間だと思ったのだと思う。もしかしたら仲間にできたんじゃないかなと」

 ソファに背中を預けながらリリアは流れゆく草原を眺めていた。

「ノア殿下は確かに高みを目指す方です。ですが、リリア様より、何倍も陰湿で性格が悪いので。反乱のような見え透いたようなことはしないと思いますよ」
「やっぱりそうなのね。そんな気がしてたわ。心の内が読めなかったから」

 リリアが乗っている特殊加工の馬車の前を行く馬車の中にはノアとルカが乗っていた。その馬車の中でルカはノアに自分が知っている限りのリリアの弱点を教えている。そこに罪悪感なんてものは一切なかった。

「リリア様は人情深く、愛の深い、優しいお方なので、自分に優しくしてくれた人を殺そうとすることはそうそうありません。とにかくリリア様をなだめたいのであれば、王宮に住まわせるのではなく、森に住まわせる方が良いと思います。それと手かせ、足かせ、首輪、監視、そういう物は一切駄目です。縛られることが本当に嫌なようなので」
「そうするとこっちの上の人間がうるさいんだよね」

 一応隣国の元騎士隊長である。それに魔王の配下である四天王を一人倒しているために、いつなにかされたら困る。

「ならできるだけ隠れてコソコソするようなことはやめてください。リリア様もきちんと自分の力が強大であることは分かっています。なのではっきりと怖いから一応監視させてください。そう言えばたぶん許してくださいます。大切なのはリリア様を必要以上に怖がらない事です」
「色々こっちで人は集めておくよ。きちんとした住まいも与えよう」

 城まではあと数日かかる。

「君は魔法使いになりたいかい?」
「はい。リリア様がそれを望んでいるので」
「君は君だよ。好きなことをすればいい」

 そう言われてもルカは全く表情を変えずに「はあ」とだけ声を上げた。

「でも僕には魔法の才能があって、リリア様のような戦士にはなれません。だから僕は魔法使いになりたいです」

 それを聞いたノアはただ穏やかに笑った。
 後ろのリリアの乗る特殊な馬車の中でも似たような会話をしていた。

「なぜ戦士になろうと思ったんですか。確かに女性の冒険者で戦死の方なんて五万といますけれども、リリア様は伯爵令嬢ではありませんか」

 薄く笑ってリリアは向かいに座る魔法使いのことを見た。

「私は優雅に紅茶を飲んでお菓子を食べるのは向いてない。それに私はただの女の子になれるほど非力でも正義感が無いわけじゃない。きっといつかは私は戦士になっていたの。女の子は非力じゃなきゃいけないと庇護欲がそそられるようでないといけない。だからきっと私は普通の伯爵令嬢に収まっていたわけがない」

 紅茶を飲むその所作一つ一つは優雅で、音が全く立たず、マナーも守られている。その様子はただの伯爵令嬢で、少女があこがれる大人のレディである。

「そう言えば、あなた、お名前は?聞いてなかった」
「アンです」
「可愛らしい名前ね」
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