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 庭で、エリーゼ様とファミール様が遊んでいた。そこにはジャック様もいらっしゃって、紅茶か何かを飲みながら、お二人が遊んでいるのを、眺めている。
 二階の小窓からそれを眺めながら、ベッドにあるトランクに何を詰めようかと、呆然としていた。
 どうして、私が戻ったって、ただのサンドバッグになるだけなのに。帰って何になるっていうの?私はどうすればいいのかしら。
 窓を眺めていると、ジャック様と目が合い、こっちへ来るようにと手招きをしている。
 気は進まないけれど、きちんと話をしないといけない。もしかしたらルーク様と結婚することになるかもしれないから。
 庭の方へ出ると、楽しそうにエリーゼ様とファミール様がバドミントンをして遊んでいた。ジャック様がいるガゼボへ行った。

「良いお昼時ですね」
「本当に。私もそう思うよ。クッキーでも紅茶でも、飲んでくれ」

 テーブルにはポットと、四人分のティーカップ、それから洋菓子が色々置かれている。でも皿から半分ぐらいお菓子が消えている。

「ありがとうございます。失礼いたします」

 椅子に座って、静かなため息を吐いて、庭の緑を眺めていた。

「舞踏会からずっと様子がおかしい。何もかも上の空だが、なにかあったかい?」
「ええ、そのいろいろありまして」

 それ以上何も言えなくて、手を握りしめていた。
 ルーク様と結婚するかもしれないし、家に帰るかもしれない。私は何をすればいいのかしら。何をすれば正解なのか全く分からない。

「私も、どうしたものかな。新しい家庭教師を探すのは骨が折れるし、想い人には振られてしまいそうだし」

 その言葉が耳の奥で響いて、一時的に脳で考えることが止まってしまった。
 なんだ、知ってたのですか。それに想い人が居たのですね。私は確かに、遊ばれていたのかもしれない。皆が言う通りなのかもしれない。

「きっと大丈夫ですよ。ジャック様なら。エリーゼ様もファミール様も、上に立つ素質があるだけで、人に従うのが苦手なだけなのです。それにジャック様なら、その人と結ばれますよ。ジャック様は誰よりもお優しい方ですから」

 大丈夫。私はルーク様と結婚して、ジャック様は他の女性と結婚する。これが世間的に誰も不幸にならない、最高で最善な選択。

「それは、私がエミリアへプロポーズをしたら、Yesと言ってくれるということかい?」

 一瞬、頭が真っ白になって、顔が熱くなって「は、はい?」と震えたみたいな、息が漏れたみたいな、感覚がして、今まで感じたことがない意味の分からない羞恥心に襲われた。
 そうよ。ずっとそう言うことだった。

「わ、わたし、その」

 ジャック様の顔を見ることができない。
 なんて、私は馬鹿で、アホで、自分に自信がなかったんだろう。ジャック様の好意が分かっていて、周りが違うって言うから、違うと思っていたのかしら。

「なぜ、いま」
「これを言うことで、君の悩みの種は増えてしまうかもしれない。けれども他の悩みは解決すると、思ったのだよ。あの男のことで結婚するかどうかという悩みはなくなり、家に帰るという選択肢も無くなる。結構これで幸せにまとまる気がするんだ」

 確かに、そう。でもそれっていいの?私は好きな人を好きって言ってもいいの?

「よろしいのでしょうか。私は片目が見えず、父の爵位も高くはありません。周りはそれを許してくださるのでしょうか。ここに居続けてもよろしいのでしょうか」
「ここに居続ければいい。誰もそれを咎めやしない。私は結構な権力と財力を持っているからね」
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