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 確かにルーク様と結婚すれば私は良いのは分かる。でも、ジャック様の事が心残りであるし、何より、エリーゼ様とファミール様とは離れたくない。
 恩があるのに、返せていない。それじゃあリル先生の恩はどうなる?
 書庫にある本を取りながらコンコンと考え続けていた。

「エミリア様」

 背後にメイドが一人立っていた。メイドは私の前に手紙を突き出して私が取ると、さっさといなくなった。送り主を見て背中に悪寒が走った。

「なんで、こんな時に…」

 考えることがたくさんなのに、なんでミアから手紙が来るの。捨てて現実逃避したいところだけど、そうにもいかない。
 ビリビリと手紙を開けて、中を開いて私は目を丸くした。

『来月に迎えの馬車をそっちへやるから』
「はあ!?」

 おもわずそんな素っ頓狂な声を上げてしまった。

『せっかくミアが公爵夫人になれるチャンスだったのに、それをつぶしたんだから、さっさと戻ってきて。それにお姉様がジャック様の愛人なんて、ただ弄ばれてるだけなことに気づかないの?お母様とお父様が愛人なんて聞いてカンカンなんだから。戻ってきて説教を食らって。そんでもって再来月の誕生日に男爵と結婚して』

 なんで私がジャック様の愛人ってことになっているの。愛人なんかじゃないのに、なんでみんな好き勝手そういうことを言うの。遊ばれてるなら、もうとっくに体を弄ばれてるはずでしょ。夜一緒に寝室に行った時だって、全然そういうそぶりが無かった。
 手紙を握りしめて、カレンダーの日付を見た。来月ってことはあと二週間。なんでそんな身勝手に決めるのよ。私とジャック様の事を決めるの!噂だけを信じ込んで、私の性格やジャック様の誠実さを知らないで、想像力の欠如も甚だしい。
 こうなったらルーク様と結婚するしか道が無くなってしまう。体に力が入らなくなって、書庫の真ん中で座り込んだ。
 私は、どうすれば、どうすればいいの。どれが一番の最適解で、私自身が人に振り回されないで済む?

「エミリア?」

 書庫の扉を見ると、ファミール様が本を両手で抱えてたってらっしゃった。

「どうなさったんですか?そろそろ授業のお時間ですよ」
「エリーゼと手分けして、エミリアの事探してた。まだ来ないから」 

 なぜだかファミール様はおびえた様子で私の事を見ている。

「まだ熱下がってないの?」
「下がりましたよ」
「具合悪そう」

 子供っていうのはやっぱり鋭い。

「もしも、私がここからいなくなって新しい家庭教師が来るとしたら、その人と仲良くできますか?」
「できないと思う。エリーゼがエミリアの事をすごく気に入っているからね。それに他の人は勉強教えるの下手だからね」

 そんな下手なんてことは無いと思うけど、でも必要とされるのは嬉しい。思わずアミール様の事を抱きしめてしまった。

「なに、苦しいんだけど」

 絶対に私はここから離れない。離れたくないから。

「エミリア、ファミール、貴方達何してるのよ」

 エリーゼ様の声まで聞こえてきた。

「助けてエリーゼ、エミリアが」
「もう、どうしちゃったのよ。まだ、熱が下がってないんじゃない?」
「下がってますよ」
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