13 / 29
13
しおりを挟む
私は口を開けて、驚いていた。エリーゼと、ファミールはその男性の周りを飛び回って、はしゃいでいる。私は内心焦っていた。
「あ、あの、すいません。子爵家の娘ごときが、偉そうな口をきいて」
「いや、君の演説には聞き入ってしまった。とてもハキハキと自分の意見を話すことができ、かつ何物にもとらわれないその授業の形は、今までの家庭教師ではできなかっただろう」
ビナーズ家の当主様は私の手を握ると、ニコニコと笑ってブンブン振った。私は頭がパンクしてしまいそうだった。
「おっと、私の名前がまだだったな。私はビナーズ家、四十九代目当主、ケビン・ビナーズだ」
「ワタクシは、フィナリー家の長女、エミリア・フィナリーと申します。私から挨拶も出来ず、恥ずかしいばかりです」
「それにしても、出来たお嬢様だなぁ。学園には通っていたのかい?」
「いえ、学園には通っていませんでした。家で自主勉強をしていました」
「向上心に満ち溢れているな。ぜひ、二人を立派にしていただきたい」
「ワタクシめに出来るかどうか。なんせただの田舎娘なもので」
「この双子を従えるだけで、一苦労よ。今までの家庭教師より何倍もいい。失敗したらまた違う道を探せば良いだけの事」
ケビン様はそう、口を大きく開けて笑っていた。とても豪快な笑いだった。その様子は何となくジャックを思わせる気配がある。
「二人とも、走らなくても良い、歩いていればいつかはゴールへたどり着く」
二人はそれを聞いて、ポカンとしていた。この言葉は『ルーベルクの冒険記』に出てくる一節で、努力が苦手な青年へ向けた言葉だった。私もこの言葉が大好きだ。この言葉が分かるようになるのはきっと大人になってからだろう。
「では、子ども達を頼みたい」
「最善を尽くします」
「それと、ここでは気楽に暮らすと良い。無理はしないように。傷にも障るだろう」そうケビン様はにっこりと笑って出て行った。
「ねえ、今日は何をするの?」
「わ、私と一緒に社交ダンス踊りましょう!」私は手をグッと握って言った。
「そんなことやるの?貴族で、できない奴の方が少ないだろう」ファミールが呆れて言った。
私はその言葉がぐさりと刺さってきた。そりゃそうだ。社交ダンスを踊れない女なんかいないだろう。私は二人に頭を下げた。
「私は、家庭教師という職業をしていながら、子爵家の娘でありながら、社交ダンスが全く踊れまないのです」
『え…』
二人はそう声を漏らしてから、良く分からないという顔をしていた。
『なんで踊れないの』
五歳児にそういわれても仕方がない。
「私は、勉強という勉強に執着した結果。勉強以外の事がおろそかになってしまったのです」
「そんなこと、私たちが、教えてあげるわ」
「その代わり、僕の知らないことをいっぱい教えてくれ」
「もちろんです」
「あ、あの、すいません。子爵家の娘ごときが、偉そうな口をきいて」
「いや、君の演説には聞き入ってしまった。とてもハキハキと自分の意見を話すことができ、かつ何物にもとらわれないその授業の形は、今までの家庭教師ではできなかっただろう」
ビナーズ家の当主様は私の手を握ると、ニコニコと笑ってブンブン振った。私は頭がパンクしてしまいそうだった。
「おっと、私の名前がまだだったな。私はビナーズ家、四十九代目当主、ケビン・ビナーズだ」
「ワタクシは、フィナリー家の長女、エミリア・フィナリーと申します。私から挨拶も出来ず、恥ずかしいばかりです」
「それにしても、出来たお嬢様だなぁ。学園には通っていたのかい?」
「いえ、学園には通っていませんでした。家で自主勉強をしていました」
「向上心に満ち溢れているな。ぜひ、二人を立派にしていただきたい」
「ワタクシめに出来るかどうか。なんせただの田舎娘なもので」
「この双子を従えるだけで、一苦労よ。今までの家庭教師より何倍もいい。失敗したらまた違う道を探せば良いだけの事」
ケビン様はそう、口を大きく開けて笑っていた。とても豪快な笑いだった。その様子は何となくジャックを思わせる気配がある。
「二人とも、走らなくても良い、歩いていればいつかはゴールへたどり着く」
二人はそれを聞いて、ポカンとしていた。この言葉は『ルーベルクの冒険記』に出てくる一節で、努力が苦手な青年へ向けた言葉だった。私もこの言葉が大好きだ。この言葉が分かるようになるのはきっと大人になってからだろう。
「では、子ども達を頼みたい」
「最善を尽くします」
「それと、ここでは気楽に暮らすと良い。無理はしないように。傷にも障るだろう」そうケビン様はにっこりと笑って出て行った。
「ねえ、今日は何をするの?」
「わ、私と一緒に社交ダンス踊りましょう!」私は手をグッと握って言った。
「そんなことやるの?貴族で、できない奴の方が少ないだろう」ファミールが呆れて言った。
私はその言葉がぐさりと刺さってきた。そりゃそうだ。社交ダンスを踊れない女なんかいないだろう。私は二人に頭を下げた。
「私は、家庭教師という職業をしていながら、子爵家の娘でありながら、社交ダンスが全く踊れまないのです」
『え…』
二人はそう声を漏らしてから、良く分からないという顔をしていた。
『なんで踊れないの』
五歳児にそういわれても仕方がない。
「私は、勉強という勉強に執着した結果。勉強以外の事がおろそかになってしまったのです」
「そんなこと、私たちが、教えてあげるわ」
「その代わり、僕の知らないことをいっぱい教えてくれ」
「もちろんです」
75
お気に入りに追加
349
あなたにおすすめの小説
【完結】美人な姉と間違って求婚されまして ~望まれない花嫁が愛されて幸せになるまで~
Rohdea
恋愛
───私は美しい姉と間違って求婚されて花嫁となりました。
美しく華やかな姉の影となり、誰からも愛されずに生きて来た伯爵令嬢のルチア。
そんなルチアの元に、社交界でも話題の次期公爵、ユリウスから求婚の手紙が届く。
それは、これまで用意された縁談が全て流れてしまっていた“ルチア”に届いた初めての求婚の手紙だった!
更に相手は超大物!
この機会を逃してなるものかと父親は結婚を即快諾し、あれよあれよとルチアは彼の元に嫁ぐ事に。
しかし……
「……君は誰だ?」
嫁ぎ先で初めて顔を合わせたユリウスに開口一番にそう言われてしまったルチア。
旦那様となったユリウスが結婚相手に望んでいたのは、
実はルチアではなく美しくも華やかな姉……リデルだった───
妹に人生を狂わされた代わりに、ハイスペックな夫が出来ました
コトミ
恋愛
子爵令嬢のソフィアは成人する直前に婚約者に浮気をされ婚約破棄を告げられた。そしてその婚約者を奪ったのはソフィアの妹であるミアだった。ミアや周りの人間に散々に罵倒され、元婚約者にビンタまでされ、何も考えられなくなったソフィアは屋敷から逃げ出した。すぐに追いつかれて屋敷に連れ戻されると覚悟していたソフィアは一人の青年に助けられ、屋敷で一晩を過ごす。その後にその青年と…
すべてが嫌になったので死んだふりをしたら、いつの間にか全部解決していました
小倉みち
恋愛
公爵令嬢へテーゼは、苦労人だった。
周囲の人々は、なぜか彼女にひたすら迷惑をかけまくる。
婚約者の第二王子は数々の問題を引き起こし、挙句の果てに彼女の妹のフィリアと浮気をする。
家族は家族で、せっかく祖父の遺してくれた遺産を湯水のように使い、豪遊する。
どう考えても彼らが悪いのに、へテーゼの味方はゼロ。
代わりに、彼らの味方をする者は大勢。
へテーゼは、彼らの尻拭いをするために毎日奔走していた。
そんなある日、ふと思った。
もう嫌だ。
すべてが嫌になった。
何もかも投げ出したくなった彼女は、仲の良い妖精たちの力を使って、身体から魂を抜き取ってもらう。
表向き、へテーゼが「死んだ」ことにしようと考えたのだ。
当然そんなことは露知らず、完全にへテーゼが死んでしまったと慌てる人々。
誰が悪い、これからどうするのか揉めるうちに、自爆していく連中もいれば、人知れず彼女を想っていた者の復讐によって失脚していく連中も現れる。
こうして彼女が手を出すまでもなく、すべての問題は綺麗さっぱり解決していき――。
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます
新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。
ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。
「私はレイナが好きなんだ!」
それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。
こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!
婚約破棄って、貴方誰ですか?
やノゆ
恋愛
ーーーその優秀さを認められ、隣国への特別留学生として名門魔法学校に出向く事になった、パール・カクルックは、学園で行われた歓迎パーティーで突然婚約破棄を言い渡される。
何故かドヤ顔のその男のとなりには、同じく勝ち誇ったような顔の少女がいて、パールは思わず口にした。
「いや、婚約破棄って、貴方誰ですか?」
私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ
榎夜
恋愛
私の婚約も勉強も、常に邪魔をしてくるおバカさんたちにはもうウンザリですの!
私は私で好き勝手やらせてもらうので、そちらもどうぞ自滅してくださいませ。
婚約破棄して、純愛に結ばれる
コトミ
恋愛
レイラはエリオットに愛人ができたからという理由で婚約破棄を告げられる。十七歳で新しい婚約者を探そうとしていたところで、失踪していた国の王子から、結婚の申し込みを受ける。
抽象的で、分かりずらい表現を多く使っています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる