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私の目の前で、むすくれている金髪の幼女と、茶髪の男児を前に私はどうしたらいいか分からずにいた。二人の前で、縮こまっている。


「ふん!エリーゼに何か用なの?」
「エミリアと申します。今日から家庭教師として働かせてもらいます」
「君、ほんとに勉強できるの?僕よりバカなんじゃない?」


貴族だとしても目に余る言葉を吐く五歳児を前にして、何も言えずにいると、ジャック様がエリーゼとファミールの頭を後ろから叩いた。


「まだお前ら五歳児だろ!エミリアさんの方が何倍も頭が良いわ!」
「だってエリーゼ家庭教師嫌いだもん!」
「僕だって、家庭教師が居なくても、勉強ぐらいできるし…家庭教師なんていらないんですよ!」


女の子の方がエリーゼと言って、茶髪の男の方がファミールというらしい。二人は双子らしいのだけれども、二人とも顔は似ているけれども、性格は似ていない。けれども私を嫌っているのは二人とも同じらしい。


「すいません。やっぱり、私じゃダメですよね。ちょっと勉強ができるぐらいで家庭教師とかできるわけないです」
「エミリアさんも自分に自信持って。二人が生意気なだけだから」


この二人に何かを教えられるだろうか。ジャック様の期待に応えられないかもしれない。


「じゃあ、何か勉強できることを披露してみなさいよ!きっと何もできないんでしょ!」
「エリーゼ!失礼なこと言うな!」
「そうだ!僕に何か教えられるというのなら!あそこにある絵画が誰に描かれたものか、何年に作られたか、その他もろもろ説明してみろ!」
「おい!ファミール!」


私はファミールが指さした絵画を見てみた。そこには小屋が一つ、森の中にぽつんとあるだけ。それからエリーゼとファミールの顔を見てみると、さっきとは裏腹に余裕の表情をして笑っている。私は頭の中の引き出しをとにかく開けた。


「…作品名は魔女の家、だと思います。この作品を描いたのはリュールという画家で、スビナ王国のサロンで初めて展示されました。描かれた時代は1747年、魔女の小説が流行って、この作品も注目されました。それから…これは印象派の時代に描かれたものです。本物は縦五十センチ、横四十センチの大きさのはずなので、こちらの部屋にある者は贋作ですよね?」


それを聞いたジャックは目を丸くして、絵画を見て、とても驚いていた。ファミールは私に怒鳴ってきた。


「これが贋作なわけないだろ!お爺様が金貨三百枚で買ったものだぞ!」

「え⁉それは、大変申し訳ありません」


ジャックは私達の事を放っておいて、絵画を壁から取り外すと、裏返して、額縁から取り外した。


「お、お兄様?」
「兄上?」


ジャックは絵画を見ると、少し考え込んでいた。


「鑑定させてみるとするか…」
「お兄様!それ贋作だっていうの?」
「別にそういうわけじゃない。彼女の知識が間違っている可能性もある。けれどもこの絵が贋作と言う事もある。なら、この絵も鑑定してみた方が良いだろう。それにしてもファミール、エミリアさんはしっかりと博がある。これで家庭教師になってもらって構わないな」


ジャック様にそういわれエリーゼと、ファミールは仕方なさそうにムスクれていた。そうすると、エリーゼが突然私の所にやって来た。


「しょうがないわね!まず、そのドレスと、靴をどうにかしなさい!そうじゃないと家庭教師と認めないわ!」


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