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「頭がくらくらする。それより、ここはあどこなの?」


周りを見渡すと、大きな部屋で、私が寝ていたベッドは羽毛布団と、寝ている枕も頭が沈んでしまいそうなほどふかふか。

部屋の中には有名画家ビオラの名画「歌う女」の絵画が飾られていた。金貨五百枚でも安いぐらい。私はベッドから立ち上がって、その絵画を眺めた。
様々な色が重なって、陰影がリアルに描かれている油絵だ。


「綺麗…」


絵画を眺めていると、部屋の扉が開いた。入ってきたのは、綺麗な金髪をした青年だった。高そうな厚手の服を着ている。鼻が高くて、肌が白くて、キリリとした眉をしている。


「あ!起きたか!」


その青年は明るく笑って、私に近寄ってきた。結構身長は高い。耳に緑色の綺麗なピアスをつけている。私はこんなに綺麗な男性は初めて見たので、一瞬驚いた。


「私は、手紙を送った。ジャックだ」
「ジャック様でしたか。すいません、ベッドで寝かせてもらって…あ、あの私どれほど寝ていましたか?ビズマーク様の家までについたことは分かったのですが、そこで記憶が無くて」
「君は、丸一日寝ていたよ。もうびっくりしてしまった。君の家へ迎えを送ろうと思ったら、もう門の前に立っていたのだからね。なぜこんなに早く来ていたんだい?」


とてもはきはきと、明るく話す人だと思った。
私はなんて答えようかと悩んだ。家を追い出されたと言えば、変に思われるし、時間を間違えたと言えば、時間の読めない家庭教師が来たと思われてしまう。
そうするとジャック様は力を抜いたように私の事を優しく眺めてきた。


「君の家の事はリル先生から聞いている。いろいろ苦労をしてきたんだね。よく我慢してきたものだ」
「い、いえ、そんな」
「よく、今まで頑張ってきたよ」


ジャック様は私と同じ年ぐらいに見えるけれど、私よりも精神面は何歳も年上に見えた。そしていままで認められなかったことが認められたような、初めて、人に認めてもらえた気がした。


「大丈夫かい?」
「え?」


いつの間にか私は涙をぽろぽろとこぼしていた。右目からもぽろぽろと涙が流れてくる。


「す…すいません…」
「いままで我慢してきたんだろう?ここでは気楽に暮らせばいい。お腹が減っただろう?食べ物を持ってくるよ」


ジャック様はパンとお肉とスープを持ってきてくれた。私は驚いた。パンがくればいい方と思っていたのだけれども、お肉に、スープまで。


「あの、こんなに?私大丈夫です。ベッドで寝かさてもらって、こんなに豪華な食事まで貰うなんて」
「いやいや、君ガリガリだし、顔色悪いから、いっぱい食べて。それに火傷の傷の薬も買ってもらえずに、居たんだろ?食べたら火傷の傷の傷の薬も塗ろう」


私は食事を取った。だけれども、半分も食べずにお腹がいっぱいになってしまった。


「すいません、これ以上は…」
「片付けてくれ」


そうするとメイドがやってきて、塗り薬を持ってきた。それからジャック様は私に近寄ってきて、前髪で隠している火傷を触ろうとしてきたので、反射で目を手で隠した。


「ごめん、ごめん。自分で塗る?」


私は傷薬を受け取った。


「ありがとうございます」


私は塗り薬を火傷の所へ塗った。肌の感触をしていない。ざらざらとした感触で、皮が少し剥けている。私は刷り込むように薬を塗った。


「火傷はできてしまったら、なかなか治らないものだから、気休めかもしれないけれど」


私はそれを聞いて、リル先生から、この火傷はもう一生治らない。という話を聞かされた。もう誰にも愛されない。こんな火傷のある女誰も好きにならない。


「もう、この薬大丈夫です。塗っても顔が治るわけないですし、目が見えるようになるわけじゃないですし、お金もかかりますし」


私はジャック様に塗り薬を返した。


「そうだね。君はそのままでもとても綺麗だから、別に塗らなくていいと思うよ」


私はそれを聞いて驚いた。というか恥ずかしくなって、顔が熱くなった。それは私に言っているのだろうか。ただ私が自意識過剰なだけだろうか。


「ごめんね。なんだか、変なことを言ってしまった。これから家庭教師をしてもらう妹と弟なんだけれど」


ジャックが話し始めたとき、急に部屋の外からドタドタという足音が聞こえてきた。そして急に部屋の扉が開けられた。
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