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ミアが私の誕生日の日の夜にそう言ってきたのだ。
「ミア、貴方婚約者が居たでしょ?それも伯爵家の」
「婚約破棄してきました」
ミアはそういうと、私の部屋のソファに勢いよく座った。私は机の前で結婚式準備のための色々な書類を書いているところだ。
そういえば今日はずっとミアの機嫌が悪かった。私の誕生日だからなのか、分からないけれども。
「婚約破棄してきたって…せっかくのいいチャンスだったのに、なんでそんなことしたのよ!」
「大声で言わないで!うるさい!」
ミアは耳をふさいで、ソファの上に寝っ転がった。
「だって、あの人、伯爵のくせして借金抱えていたんだもの!だから全然ミアにプレゼントもくれないし、結婚したら、出来るだけ節約してほしいって言われたのよ!なんでミアが節約なんかしなくちゃいけないのよ!」
ミアは私に愚痴をぶつけるだけぶつけると、ソファから立ち上がり私の所にやってきた。そして書類があるというのに両手でバン!と机を叩いて来た。
「ちょっと、書類があるんだから、やめて」
「ねえ、だからルイス様と結婚させて、ミアは十五歳で、若いわ。ルイス様だって嬉しいはずよ」
「結婚はそんなことで決まるものじゃないのよ。それにいくら何でも自分勝手すぎるわよ。もう結婚の書類も書いて、結婚の準備も進めているの」
「お姉様は、ミアが可愛くないの?」
ミアは私の机の上に腰をのせて、顔を近づけてきた。肌は白くて、目も大きい。顔は小さくて、肩幅は狭い。人形のようなその様子。ミアは確かに可愛いけれども、可愛いと好きが直結するわけではない。
「ミア、貴方は確かに生まれ持った可愛らしい容姿がある。けれども、貴方はまるで自分を特別と思って、人を見下している。それがどれだけ愚かなことか分かっていないの?」
そうはっきり告げると、ミアは眉をひそめて、腕を振り上げると私の書類をバサバサと机から落として、部屋から出て行った。
「それなら、ミアが自分でどうにかするから」
ミアはそう言って、部屋の扉を壊れそうなほど強い力で閉めると、一階へと降りて行ったようだった。怒りを思い起こさないように、落ち着いて書類を片付けていると、馬車の音が聞こえてきた。きっとルイスの迎えが来たのだろう。今、実はルイスが一階にいる。けれども、なんだかルイスが私の母と父と話をしたいというので、私は部屋にいた。
一階に送って行こうと思った時、すでに玄関が開いた音がした。窓から下を覗いてみると、ミアがルイスの腕を掴んで、馬車まで送ろうとしていた。
きっと媚び売っているのだろう。それぐらいでルイスはミアの事を好きになったりはしない。ミアにちょっと媚美られただけで、ミアに乗り換えるならこっちから願い下げだ。
ルイスは真面目で誠実で、礼儀も出来ていれば、仕事もできる。なぜ私がルイスを捕まえることができたのかと言うと、もともとルイスの家と、私の家とのつながりがあったために、婚約が成立した。運が良かったとしか言いようがない。
次の日、私はお風呂にも入って、寝ようとしていた。そうしたときに、ミアが銀のトレーにティーカップとポットをのせて、部屋にやって来た。
「また説得に来たの?」
「いいえ、紅茶を一緒に飲みましょう」
私は少し不気味に思った。毒の入ったお茶でも飲ませる気だろうか。けれどもそんな素振りも見せずに紅茶の入ったティーカップを私に渡してきた。
「何か入れたの?」
「あら、確かにそういう手もありますね。私お姉様ほど頭が良くないので気が付きませんでした」
ミアはそういうと、ポットのふたを開けて、紅茶を私にかけてきた。
「うわ!ちょっと、何よ」
私が前を見えずに、もがいているとミアが寄ってきて、私の右目あたりに何かを押し当ててきた。
私は焼けるように痛くて、前も見えなくなった。そうして朝起きたときには包帯が巻かれていた。
「ミア、貴方婚約者が居たでしょ?それも伯爵家の」
「婚約破棄してきました」
ミアはそういうと、私の部屋のソファに勢いよく座った。私は机の前で結婚式準備のための色々な書類を書いているところだ。
そういえば今日はずっとミアの機嫌が悪かった。私の誕生日だからなのか、分からないけれども。
「婚約破棄してきたって…せっかくのいいチャンスだったのに、なんでそんなことしたのよ!」
「大声で言わないで!うるさい!」
ミアは耳をふさいで、ソファの上に寝っ転がった。
「だって、あの人、伯爵のくせして借金抱えていたんだもの!だから全然ミアにプレゼントもくれないし、結婚したら、出来るだけ節約してほしいって言われたのよ!なんでミアが節約なんかしなくちゃいけないのよ!」
ミアは私に愚痴をぶつけるだけぶつけると、ソファから立ち上がり私の所にやってきた。そして書類があるというのに両手でバン!と机を叩いて来た。
「ちょっと、書類があるんだから、やめて」
「ねえ、だからルイス様と結婚させて、ミアは十五歳で、若いわ。ルイス様だって嬉しいはずよ」
「結婚はそんなことで決まるものじゃないのよ。それにいくら何でも自分勝手すぎるわよ。もう結婚の書類も書いて、結婚の準備も進めているの」
「お姉様は、ミアが可愛くないの?」
ミアは私の机の上に腰をのせて、顔を近づけてきた。肌は白くて、目も大きい。顔は小さくて、肩幅は狭い。人形のようなその様子。ミアは確かに可愛いけれども、可愛いと好きが直結するわけではない。
「ミア、貴方は確かに生まれ持った可愛らしい容姿がある。けれども、貴方はまるで自分を特別と思って、人を見下している。それがどれだけ愚かなことか分かっていないの?」
そうはっきり告げると、ミアは眉をひそめて、腕を振り上げると私の書類をバサバサと机から落として、部屋から出て行った。
「それなら、ミアが自分でどうにかするから」
ミアはそう言って、部屋の扉を壊れそうなほど強い力で閉めると、一階へと降りて行ったようだった。怒りを思い起こさないように、落ち着いて書類を片付けていると、馬車の音が聞こえてきた。きっとルイスの迎えが来たのだろう。今、実はルイスが一階にいる。けれども、なんだかルイスが私の母と父と話をしたいというので、私は部屋にいた。
一階に送って行こうと思った時、すでに玄関が開いた音がした。窓から下を覗いてみると、ミアがルイスの腕を掴んで、馬車まで送ろうとしていた。
きっと媚び売っているのだろう。それぐらいでルイスはミアの事を好きになったりはしない。ミアにちょっと媚美られただけで、ミアに乗り換えるならこっちから願い下げだ。
ルイスは真面目で誠実で、礼儀も出来ていれば、仕事もできる。なぜ私がルイスを捕まえることができたのかと言うと、もともとルイスの家と、私の家とのつながりがあったために、婚約が成立した。運が良かったとしか言いようがない。
次の日、私はお風呂にも入って、寝ようとしていた。そうしたときに、ミアが銀のトレーにティーカップとポットをのせて、部屋にやって来た。
「また説得に来たの?」
「いいえ、紅茶を一緒に飲みましょう」
私は少し不気味に思った。毒の入ったお茶でも飲ませる気だろうか。けれどもそんな素振りも見せずに紅茶の入ったティーカップを私に渡してきた。
「何か入れたの?」
「あら、確かにそういう手もありますね。私お姉様ほど頭が良くないので気が付きませんでした」
ミアはそういうと、ポットのふたを開けて、紅茶を私にかけてきた。
「うわ!ちょっと、何よ」
私が前を見えずに、もがいているとミアが寄ってきて、私の右目あたりに何かを押し当ててきた。
私は焼けるように痛くて、前も見えなくなった。そうして朝起きたときには包帯が巻かれていた。
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