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待望の愛腐
しおりを挟む自分の半身をい虐められ続けて、正気を失っていたらしい。
露成に一度イかされ、呼吸が危うくなった為休まされたことを朧げながら、意識の浮上と共に思い出す。
肺の間の気管支が押し潰されたように痛い。
焦点の合わない視界に、少し青褪めた家主が映り込んできた。
「大丈夫か?息できてるか?」
連弾銃並みに質問をしてきながら、俺の頭と膝を支えて起こす。
「ん、だいじょーぶ。心配かけてご免な。」
やっと画素数が戻った目を露成と合わせて、眉を下げた。
「暴走しすぎたな。」
「チュッ」
左頬に手を添えられ、軽妙なリップ音と共に唇を啄まれる。
左頬の手が後頭に回り、斜め前に向き合う露成の胸に抱き寄せられる。
露成も近寄ってきたため、上体を少し傾けただけでシルクの肌触りに包まれる。
「すまない。ゆっくり行こう。」
「べ、つに…露成のやってくれること、気持ちいいから…。」
本音を出すことは照れるが、先程の激しさは普段表情を隠す露成が募らせていた恋情そのままだと思うと、勢いごと受け止めたかった。
「悠が壊れたら元も子もない。」
無感情に思えるが思い遣りの滲み出た態度で諭される。
「ん、む“ー…。」
不満そうな声を出してみせる。
「なら…、悠の意識があるときは強気にいく。それて悠がオレの声に反応しなくなってきたらゆっくりする。どうだ?」
髪を気持ちいい力で梳かれ、露成の優しい声が身体を包み込む。
未開の体の奥が甘く収縮する。
「うん、いいよぉ♡」
返事をしながら露成に抱き着く。
安定感のある筋肉が程よくついた体を自分の胸に感じる。
「はるか。」
「んぅっ」
響きのある低音が耳の付け根を伝わってきて、悦んでしまう。
きっと露成には、甘えたいことも、言って欲しい言葉も伝わっている。
綿菓子のように心を浮き立たせ、次の言葉を静かに待った。
「…愛してる。」
耳から脳、脊髄へ光が流れた。
腰が跳ねるのが分かって、首筋に強く抱きついた。
「ふぁぁっ♡んあっ…♡」
露成の耳の真横で啼いてしまったことに照れるよりも、もっと露成の香りや体温を深く感じたいと思う。
「ろなり…素肌でぎゅうってしたい…。」
恥ずかしくて末尾は発音が不明瞭になったが、耳元で話したから聞こえているだろう。
心境の表れとして露成の脈が大きく揺らぐ。
露成は未だに俺の髪を撫でている。
「かわいい甘イキかわいいかわい、っ駄目だ。…また…大事に…だいじに。」
まるで自己暗示でもしているように、切れ切れの言葉が聞こえる。
「ろなりい?」
不思議に思いながら、巻き付かせた腕を緩めて露成の顔を覗き込もうとすると、強く抱き締められ、元の体勢で挙動を封じられてしまった。
「すぅ…はぁー…。麻薬なのか媚薬なのか…。」
よく分からないが、露成の発言から興奮が収まっていないことだけは察せられる。
「ふー。ぎゅって、しようか。」
「…!うんっ!」
ようやく抱きとめる力が弱められ、おねだりの許諾が降りた。
つい子犬のように声が弾んだ。
「俺が先に脱ぐ。それとも、悠が脱がせてくれるか?」
脱衣のために体の向きを変えた露成が、鋭い流し目で誘惑してくる。
その視線の魅惑に気圧されるまいと両の手の平を膝上で丸めてしまう。
「や、ふくくらいじぶんでぬげぇっ!」
「あぁ、少し待ってろ。」
目線で簡単に火照った自分が恥ずかしく、プイとそっぽを向いて荒っぽく口を利いてしまった。
露成は後ろを向いて笑った。
シルク地の上着は灰白色で柔らかに染め上げられていてる。
大人の色気を醸すそれは、静かに腰回りに落とされた。
下に着ていた水色の襞胸シャツの、真珠貝の小さなボタンをぷちりぷちりと外す音がする。
シャツの片腕が抜け、下の肌が肘を曲げるのに合わせて筋肉の影を作るのを見ていると、自分の唇に感じる吐息が熱くなっていることに気付く。
逞しい腕に自分の腰を押さえつけられる情景が過ぎって、太ももを擦り合わせた。
その衣擦れの音が聞こえたのだろうか。
露成が肩越しに後ろを向き、掠れた小さな声で言った。
「欲しがりだな。」
「っ!」
尻尾の付け根を撫でられた猫のように鳥肌を立てて、背筋が立たなくなる。
『ほしい』が脳内ですし詰めになり、待てがこれ以上出来なくなった。
上裸になった親友に抱きつき、滑らかな首筋に頬を密着させる。
「待てなくなったか。可愛いな。」
自分の局部は上の白ニットが大きいせいですっぽりと隠れている。
相手に押し付けるような痴態を侵さずに済むから、自分から動くことができたのだ。
「カチャカチャ」
馴染みのあるベルトの金属音がして、自分のお腹の前で物体が素早く移動した。
危ないからな、という声の後に抜き去ったベルトがベッドの隅に放られた。
靴下も脱いで、露成の体は深緑のタータンチェックズボンを身につけるのみとなった。
一方俺は、下半身は裸だが上半身は厚着したままで、靴下も履いている。
ちぐはぐな状況を緩和させるために、取り敢えず靴下を脱ごうと足を曲げた。
前屈より浅い姿勢で足に手を伸ばそうとすると、露成が先に手を付けた。
「俺が脱がせる。ストリップショーはまた今度だ。」
「なっ?!」
卑猥な言い方に狼狽える。
無意識に絶大なハードルを越えようとしていたこと、そして露成には越えさせたくせに賛辞の一つも与えなかったことに気が付き、赤面と蒼白を瞬発した。
百面相している間にふわりと押し倒された。
白いニットを胸元まで捲りあげられ、襟ぐりを開いて頭を抜かされる。
肘の辺りで溜まったまま、下のボタンダウンシャツに手がかかる。
「んん?ぬかねぇの?」
「拘束プレイをするのが一つの夢だったからな。」
「ふはっ!もーそーしてたのかよ!ろなりのえっちぃ。」
腕を上で拘束されたまま肩を震わせて笑うと、無言でシャツのボタンを全て外された。
インナーシャツの上に左手を置かれる。
「な、にすんの?」
退行した頭で問う。
俺に被さる虎が端的に答える。
「愛撫だ。」
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