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腐団の中で
しおりを挟む「…リリリ!リリリリ!ピリリリリ!」
「うるさ。」
目覚ましを止めると、楽しみで眠れなかったために不機嫌になった顔で、洗面台に向かった。
露成が誕生日プレゼントとしてダンボールで送ってきた、多種多様な肌メンテの化粧品を慣れた手付きで使う。
次に朝ごはんを食べる。
なるべく早く済ませたいため、トーストと輪切りのトマトにオリーブオイルとバジルを振りかけたもの、ヨーグルトをチョイスした。
出発前に風呂に入り、髪を洗ってふわさらヘアーにする。
家を出る直前に、リビングでテレビを見ている父母に声を掛けた。
「行ってきまーす。」
「ピンポーン」
思いがけなく、タイミングを見計らったようなインターホンがなる。
「玉崎君かしら。いってらっしゃーい!」
「気を付けてな。」
背中に言葉を聞きながらドアを開けると、言う通りに露成が居た。
「よう!」
「よう。迎えに来た。」
「珍しいな。」
「車つけてあるから、早く乗るぞ。」
「え?!どこ行く気だよ?!」
別邸は、非力な俺でも10分自転車を漕げば着くのに、何故車など出すのかと戸惑った。
「オレの国。」
「…っは??」
謎の言葉に目を見開く。
露成は俺の手を取ると、黒塗りで煌めきのあるベンツに乗り込んだ。
「出してくれ。」
露成の声を認識して、自動運転の車は滑らかに走り出す。
「おい!オレの国ってドコの話してんだよ!」
「別荘だな。」
「別邸あって別荘あんのかよ…。使い分けが分からん。」
「オレ用か、家族用かで分けてある。」
「因みにどっちがオレ用?」
「別荘。」
他愛もない話をして30分ほどが経過した。
AI運転手が告げる。
「あと10分ほどで到着致します。」
「あぁ…悠、今日も髪サラサラだな。オレ好みの爽やかなフラワーの香りがする。」
「ちょっ…くすぐったいって…ははっ!」
露成が俺の頭を抱き寄せるようにして、髪を梳き、鼻を埋める。
息がかかってくすぐったい。
身を捩ると、つむじに、キスされた。
一瞬何がなんだか分からず、下を向いてフリーズする。
露成はお構い無しに、首にキスしたり舐めたりしてくる。
「ひゃぅっ!っは…ろなり?なにしひぇっ!」
「…はーっ…チュッ…ピチャ…ペチャ…」
首筋を舐めていた露成が不意に俺を見上げた。
烈しくて、艶っぽくて、荒らげた息が魔法みたいに俺を夢中にさせていく。
「嫌なら抵抗しろよ?」
「露成が抑えてるからむりじゃん。」
「ん。逃がさない。」
「んむっ♡」
瞬きの間にキスをされ、車のシートに押し倒される。
「んむっ…はっ…っふっ…んぅぅっ♡っはぁハァ…」
貪るようなキスに息継ぎすら出来ず、解放された時に慌てて息を整えた。
「赤面してる姿、凄く好きだ。」
「恥ずかしいから…っ…言うなぁ…」
「無理な頼みだ。…あぁ、そろそろ着くな。腰、抜けてないか?」
「大丈夫だっ!」
年寄り扱いされて拗ねていると、露成が愛しそうに笑って囁いた。
「帰る頃には立てなくなってるだろうよ。」
「…どういう意味?」
「さて、降りるぞ。」
「…おう。」
俺は、露成に右手で抱き寄せられ密着しながら、露成の別荘、悠胎館に入っていった。
*******
悠胎館の中は、白を基調とした柔らかな雰囲気で造られていた。
竹ひごで編まれた四角い行灯が廊下に幾つもある。
壁にずらりと並んでいるのだが、行灯の土台には一つ一つ違う柄が赤い漆で描かれている。
その柄がどうにも、自分と露成が誕生日ごとにした色々なことが描かれているように思えてならない。
「悠?その行灯が気に入ったのか?」
「え?あ、うん。なんか楽しい感じがするからさ。」
「じゃあそれを持っていく。」
露成は俺が見ている行灯を丁寧に持ち上げて、先を歩き出した。
突き当りのドアが自動で開き、露成が俺を先に通させる。
「ありがと…なんだよこれぇつ?!」
「悠の写真。」
「いや、それは分かる…けど!こんなビッグにするかふつう?!」
部屋全体はクリームがかった色合いで、正面と左側には大きな窓があり、太陽光を存分に入れている。
ただ、正面の大窓2つを仕切る太い柱に、俺が体育祭のときに露成へ向けた笑顔が特大サイズで貼られていた。
思い起こすと、俺が露成の最高の一枚を撮った日、露成の家は騒音を極力減らしたカメラドローンによって、露成と何故か俺を撮っていた。
借り物競争で、運良く『指輪』という他の題より圧倒的に軽いお題を引き当て、直前に露成に渡されたおもちゃの指輪を手に1位でゴールした。
その後に向けた露成への感謝の笑顔が、目の前のそれである。
壁一面の大きさにしても画質の細やかさが目につくということは、元の画像の画素数は恐ろしいことになる。
そのままカメラの値段になるのだから、深くは考えないでおこう。
「いやいやいやいや…露成って俺のことそんなに好きだったか?」
「保育所の時から好きだ。」
「おおっと長い。」
「まぁ気にせず座ってくれ。」
「気にせずは無理。」
写真の前にある椅子に腰掛け、自分の特大笑顔に背を向けた。
露成は行灯を床に置くと、部屋の左側にあるお洒落で高そうな隠しキッチンに入っていった。
数分後に飲み物とお菓子の入ったかごを持って出てきた。
「アセロラジュースとルマソドと、その他諸々。」
「あざっす!露成ん家のアセロラジュースってなんでか一番美味しいんだよなぁ。」
「ふはっ、ありがとな。」
露成が頭ポンポンをしてくれる。
他の友達にはしない、特別な仕草だ。
先程好きと言われたのもあり、顔がほの赤くなってしまう。
「ジュース、飲まないのか?」
「あ、飲む飲む!」
正面に座った露成に指摘されて、慌ててコップを手に取る。
味わってゆっくり飲んでいると、身体がむず痒くなってくる。
自分で分かるぐらいに体温が上がり、眼が潤んできた。
自分の肌に触れている服さえこそばゆく、恥部を触って欲しくて頭がぼおっとしてくる。
「んあっ♡ろなりぃ…」
「あぁ、分かってる。ジュースを全部飲んでくれ。」
「うん…」
「うっ、かわいい…。」
露成の悶える声が聞こえた気がしたが、気にせずジュースを飲み干す。
「ぷはっ…ろなりぃ…もうっ、むりぃ♡」
「あぁ…悠、少しじっとしていてくれ。運ぶから。」
「ひゃむぅっ♡」
露成はお姫様抱っこで俺を抱き上げ、右側のドアへ入っていく。
自動ドアが開くと、そこにはキングサイズのベッドがあった。
部屋は朝であるのに薄暗い。
寝室は天井近くに明り取りが設置されており、そこからの光で部屋全体がぼんやり見える。
露成は俺をベッドの中心に優しく下ろして、また部屋を出ていこうとする。
「待って!」
「行灯を取りに戻るだけだ。すぐ戻る。」
「やらぁ!もうっ…がまんできないぃ♡」
「駄目だ。」
露成は、局部を痛いほどに突き立てている俺を、苦しそうな顔で置いていった。
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