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20 無限殺人
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島に漂着すると「大中華AIRLINE」の文字の入る小船のうちあげられているのが目に入る。祀鶴歌たちの乗っていたボートだ。
岩場を歩いてくる長身の人影がある。月光が為人を映す喉仏や下顎を照らしだす。
劉は漂流者の存在に気づき,鼻歌をやめた。「やあ,君たちもキャンプかい」ライフル銃をもつ左手をあげた。その手が赤く染まっている。右手には獣の死骸らしきものを頭部を下むけてぶらさげている。「これかい?」獣の後ろ足をつかむ右手を目の高さまであげる。「野犬だよ」
長い舌と尻尾を垂れて野犬が胸から血を流している。その血が岩盤に点々と跡をつくっていた。
「私の祀鶴歌が何か食べたいというものだから。この島には何もないのさ。こんなものでもないよりマシかと思ってね――」
「くっそぉ!――」蜜瑠の部下の1人が劉に駆けより,その胸ぐらをつかんだ。「何があったか分かってるのか!」
ほかの部下も一斉に詰めよる。「そうだ,あんたの我が儘のせいで何人の人間が死んだと思ってる!」
「あんただけ悠長にデートかよ!」
「何がキャンプだ,ふざけやがって!」
「そうだ! 爆破犯をひきわたせ!」
「あいつのせいで,兄貴と妹がクルーザーで死んじまった!」
「俺は,おやじと弟だ! あいつを今すぐつれてこい! 袋叩きにしてぶっ殺してやる!」
「汚い手を離さないか」
劉が襟をつかむ部下の腹部を銃口で突いて発砲した。ひるんだ者や命乞いする者,逃げだす者まで容赦なく射殺していく。羽交い締めにしようとする男を海に投げとばし,捨て身で突進してくる相手も顔色一つかえずに撃つ。
今,岸に這いあがろうとする男の肩を撃ちぬいた。男は仰むけに倒れたまま溺れそうになるが,必死でもがいて片腕で岸にしがみつく。もう片方の肩にも銃弾が撃ちこまれた。男は顎先を岩場にくいこませた。その顔面を劉が踏みつける。とうとう海中に沈んだが,数秒してから目を剝いて浮きあがる。
「お遊びは終わりだ」劉が銃把を握りなおしたとき,しろがね色の物体が海面に躍りあがり,鋭い牙の突きでた大口を裂くなり,男の首から下をもぎとって沈んだ。流血の溢れる海面に,一点を凝視する男の頭だけが浮いていた。
「自業自得だな」劉が呟くと,それは再び出現し,紡錘形の体を海上へ跳ねあげて大量の血飛沫を散らせてから,忘れ物を銜えなおし,また海中へと姿を隠した。
「そうだ,明日はスープにしよう――」劉は岸に転がる死体に視線を投げた。「こいつらを餌に,今のサメを捕獲してやる。きっと祀鶴歌も気にいるはずだ」
劉は野犬の死骸をひきずりながら,杉の森を貫くようにのびていく岩盤の坂道をのぼりつめ,その果てにある洞窟に入っていった。
岩場を歩いてくる長身の人影がある。月光が為人を映す喉仏や下顎を照らしだす。
劉は漂流者の存在に気づき,鼻歌をやめた。「やあ,君たちもキャンプかい」ライフル銃をもつ左手をあげた。その手が赤く染まっている。右手には獣の死骸らしきものを頭部を下むけてぶらさげている。「これかい?」獣の後ろ足をつかむ右手を目の高さまであげる。「野犬だよ」
長い舌と尻尾を垂れて野犬が胸から血を流している。その血が岩盤に点々と跡をつくっていた。
「私の祀鶴歌が何か食べたいというものだから。この島には何もないのさ。こんなものでもないよりマシかと思ってね――」
「くっそぉ!――」蜜瑠の部下の1人が劉に駆けより,その胸ぐらをつかんだ。「何があったか分かってるのか!」
ほかの部下も一斉に詰めよる。「そうだ,あんたの我が儘のせいで何人の人間が死んだと思ってる!」
「あんただけ悠長にデートかよ!」
「何がキャンプだ,ふざけやがって!」
「そうだ! 爆破犯をひきわたせ!」
「あいつのせいで,兄貴と妹がクルーザーで死んじまった!」
「俺は,おやじと弟だ! あいつを今すぐつれてこい! 袋叩きにしてぶっ殺してやる!」
「汚い手を離さないか」
劉が襟をつかむ部下の腹部を銃口で突いて発砲した。ひるんだ者や命乞いする者,逃げだす者まで容赦なく射殺していく。羽交い締めにしようとする男を海に投げとばし,捨て身で突進してくる相手も顔色一つかえずに撃つ。
今,岸に這いあがろうとする男の肩を撃ちぬいた。男は仰むけに倒れたまま溺れそうになるが,必死でもがいて片腕で岸にしがみつく。もう片方の肩にも銃弾が撃ちこまれた。男は顎先を岩場にくいこませた。その顔面を劉が踏みつける。とうとう海中に沈んだが,数秒してから目を剝いて浮きあがる。
「お遊びは終わりだ」劉が銃把を握りなおしたとき,しろがね色の物体が海面に躍りあがり,鋭い牙の突きでた大口を裂くなり,男の首から下をもぎとって沈んだ。流血の溢れる海面に,一点を凝視する男の頭だけが浮いていた。
「自業自得だな」劉が呟くと,それは再び出現し,紡錘形の体を海上へ跳ねあげて大量の血飛沫を散らせてから,忘れ物を銜えなおし,また海中へと姿を隠した。
「そうだ,明日はスープにしよう――」劉は岸に転がる死体に視線を投げた。「こいつらを餌に,今のサメを捕獲してやる。きっと祀鶴歌も気にいるはずだ」
劉は野犬の死骸をひきずりながら,杉の森を貫くようにのびていく岩盤の坂道をのぼりつめ,その果てにある洞窟に入っていった。
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