婚約破棄計画書を見つけた悪役令嬢は

編端みどり

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7.気付いてないやつ

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「まずは婚約破棄もしくは婚約解消を目指します。この計画書によると、婚約破棄してもわたくしはアルフレッドを支えるだろうと書かれておりますが……そんなわけないでしょう。なぜこんなにも自分に都合の良いように考えられるのか、理解に苦しみます」

「全くだ。婚約がなくなった後はどうする?」

「結婚はしたいですけど、お相手が見つかりますかね?」

「見つかるに決まっておる。相手の希望はあるか?」

「アルフレッドのような男性は嫌です」

「そりゃそうだよな。なら、トムはどうだ?」

 兄の提案に、ミランダは首を傾げた。トムは好きだが身分が違う。だが、兄が提案するくらいだ、もしかしたらトムと結婚できるのかもしれない。いや、トムみたいな人はどうだという意味かもしれない。

 トムのような人なら、アルフレッドみたいに威張らないし優しいだろう。最高ではないか。数秒で思考を巡らせたミランダは、満面の笑みで返事をした。

「トムなら優しいし仕事もできますしわたくしの事もよく知ってくれていますから嬉しいです。もし結婚するなら、トムみたいな人がいいですね」

 ミランダにべた褒めされたトムは、真っ赤な顔で俯いた。

「良かったな、トム」

「すまなかったな。なにも知らずに2人を引き裂いてしまって」

「え? お父様、どういうことですか?」

「心配するな。身分なら問題ない」

「そうよ。トムは商会の功績が認められて男爵になったの。もうすぐ子爵になるわ。平民なら無理だけど、子爵ならミランダと結婚しても問題ないわ」

「そうなの? トム凄いわ! 爵位が欲しいなんて知らなかった! もう子爵になるなんてすごく頑張ったのね」

 ミランダは素直にトムを褒めた。トムの顔は真っ赤だ。

「え、どうしたのトム?」

「……今のはミランダが悪い」

 兄が頭を押さえため息を吐いた。

「え?! え?!」

「そうね。今のはミランダが悪いわ」

「お母様まで?!」

「うむ。王太子との婚約を承諾したワシが言うのもなんだが、トム……すまん」

「もう! お父様までなんなのよ!」

「ねぇミランダ、あなた……トムの気持ちは知ってるわよね?」

「トムの気持ち?」

「あ、これほんとに気付いてないやつだ」

「トムはミランダが城に行ってから別人のように変わったのよ。てっきりミランダも同じ気持ちなのかと……」

「ミランダは会うたびに成長して、立派な王妃になると言っておったからな。婚約を承諾して後悔しておったのだが、ミランダが覚悟を決めたのならと見守っておったのだ」

「ま、トムは諦めきれなくて必死で爵位を求めたみたいだけど」

「だからなんで! お兄様、説明して」

「無理。俺から言うことじゃないし」

「よし、我等は10分だけ席を外す。ミランダ、トムに理由を教えてもらえ」

「トム、頑張って!」

「頑張れよ。まだ早いことは理解しておけ。妹を頼むぞ」

「ちょ……ちょっと待って下さい!」

 トムの叫びを無視して、皆は部屋を出た。トムとミランダだけが部屋に残された瞬間、ボーン、ボーンと壁時計の鐘の音が響き渡った。
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