7 / 49
7.気付いてないやつ
しおりを挟む
「まずは婚約破棄もしくは婚約解消を目指します。この計画書によると、婚約破棄してもわたくしはアルフレッドを支えるだろうと書かれておりますが……そんなわけないでしょう。なぜこんなにも自分に都合の良いように考えられるのか、理解に苦しみます」
「全くだ。婚約がなくなった後はどうする?」
「結婚はしたいですけど、お相手が見つかりますかね?」
「見つかるに決まっておる。相手の希望はあるか?」
「アルフレッドのような男性は嫌です」
「そりゃそうだよな。なら、トムはどうだ?」
兄の提案に、ミランダは首を傾げた。トムは好きだが身分が違う。だが、兄が提案するくらいだ、もしかしたらトムと結婚できるのかもしれない。いや、トムみたいな人はどうだという意味かもしれない。
トムのような人なら、アルフレッドみたいに威張らないし優しいだろう。最高ではないか。数秒で思考を巡らせたミランダは、満面の笑みで返事をした。
「トムなら優しいし仕事もできますしわたくしの事もよく知ってくれていますから嬉しいです。もし結婚するなら、トムみたいな人がいいですね」
ミランダにべた褒めされたトムは、真っ赤な顔で俯いた。
「良かったな、トム」
「すまなかったな。なにも知らずに2人を引き裂いてしまって」
「え? お父様、どういうことですか?」
「心配するな。身分なら問題ない」
「そうよ。トムは商会の功績が認められて男爵になったの。もうすぐ子爵になるわ。平民なら無理だけど、子爵ならミランダと結婚しても問題ないわ」
「そうなの? トム凄いわ! 爵位が欲しいなんて知らなかった! もう子爵になるなんてすごく頑張ったのね」
ミランダは素直にトムを褒めた。トムの顔は真っ赤だ。
「え、どうしたのトム?」
「……今のはミランダが悪い」
兄が頭を押さえため息を吐いた。
「え?! え?!」
「そうね。今のはミランダが悪いわ」
「お母様まで?!」
「うむ。王太子との婚約を承諾したワシが言うのもなんだが、トム……すまん」
「もう! お父様までなんなのよ!」
「ねぇミランダ、あなた……トムの気持ちは知ってるわよね?」
「トムの気持ち?」
「あ、これほんとに気付いてないやつだ」
「トムはミランダが城に行ってから別人のように変わったのよ。てっきりミランダも同じ気持ちなのかと……」
「ミランダは会うたびに成長して、立派な王妃になると言っておったからな。婚約を承諾して後悔しておったのだが、ミランダが覚悟を決めたのならと見守っておったのだ」
「ま、トムは諦めきれなくて必死で爵位を求めたみたいだけど」
「だからなんで! お兄様、説明して」
「無理。俺から言うことじゃないし」
「よし、我等は10分だけ席を外す。ミランダ、トムに理由を教えてもらえ」
「トム、頑張って!」
「頑張れよ。まだ早いことは理解しておけ。妹を頼むぞ」
「ちょ……ちょっと待って下さい!」
トムの叫びを無視して、皆は部屋を出た。トムとミランダだけが部屋に残された瞬間、ボーン、ボーンと壁時計の鐘の音が響き渡った。
「全くだ。婚約がなくなった後はどうする?」
「結婚はしたいですけど、お相手が見つかりますかね?」
「見つかるに決まっておる。相手の希望はあるか?」
「アルフレッドのような男性は嫌です」
「そりゃそうだよな。なら、トムはどうだ?」
兄の提案に、ミランダは首を傾げた。トムは好きだが身分が違う。だが、兄が提案するくらいだ、もしかしたらトムと結婚できるのかもしれない。いや、トムみたいな人はどうだという意味かもしれない。
トムのような人なら、アルフレッドみたいに威張らないし優しいだろう。最高ではないか。数秒で思考を巡らせたミランダは、満面の笑みで返事をした。
「トムなら優しいし仕事もできますしわたくしの事もよく知ってくれていますから嬉しいです。もし結婚するなら、トムみたいな人がいいですね」
ミランダにべた褒めされたトムは、真っ赤な顔で俯いた。
「良かったな、トム」
「すまなかったな。なにも知らずに2人を引き裂いてしまって」
「え? お父様、どういうことですか?」
「心配するな。身分なら問題ない」
「そうよ。トムは商会の功績が認められて男爵になったの。もうすぐ子爵になるわ。平民なら無理だけど、子爵ならミランダと結婚しても問題ないわ」
「そうなの? トム凄いわ! 爵位が欲しいなんて知らなかった! もう子爵になるなんてすごく頑張ったのね」
ミランダは素直にトムを褒めた。トムの顔は真っ赤だ。
「え、どうしたのトム?」
「……今のはミランダが悪い」
兄が頭を押さえため息を吐いた。
「え?! え?!」
「そうね。今のはミランダが悪いわ」
「お母様まで?!」
「うむ。王太子との婚約を承諾したワシが言うのもなんだが、トム……すまん」
「もう! お父様までなんなのよ!」
「ねぇミランダ、あなた……トムの気持ちは知ってるわよね?」
「トムの気持ち?」
「あ、これほんとに気付いてないやつだ」
「トムはミランダが城に行ってから別人のように変わったのよ。てっきりミランダも同じ気持ちなのかと……」
「ミランダは会うたびに成長して、立派な王妃になると言っておったからな。婚約を承諾して後悔しておったのだが、ミランダが覚悟を決めたのならと見守っておったのだ」
「ま、トムは諦めきれなくて必死で爵位を求めたみたいだけど」
「だからなんで! お兄様、説明して」
「無理。俺から言うことじゃないし」
「よし、我等は10分だけ席を外す。ミランダ、トムに理由を教えてもらえ」
「トム、頑張って!」
「頑張れよ。まだ早いことは理解しておけ。妹を頼むぞ」
「ちょ……ちょっと待って下さい!」
トムの叫びを無視して、皆は部屋を出た。トムとミランダだけが部屋に残された瞬間、ボーン、ボーンと壁時計の鐘の音が響き渡った。
1,865
お気に入りに追加
3,424
あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。
りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。
やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか
勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。
ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。
蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。
そんな生活もううんざりです
今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。
これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。

【完結】ブスと呼ばれるひっつめ髪の眼鏡令嬢は婚約破棄を望みます。
はゆりか
恋愛
幼き頃から決まった婚約者に言われた事を素直に従い、ひっつめ髪に顔が半分隠れた瓶底丸眼鏡を常に着けたアリーネ。
周りからは「ブス」と言われ、外見を笑われ、美しい婚約者とは並んで歩くのも忌わしいと言われていた。
婚約者のバロックはそれはもう見目の美しい青年。
ただ、美しいのはその見た目だけ。
心の汚い婚約者様にこの世の厳しさを教えてあげましょう。
本来の私の姿で……
前編、中編、後編の短編です。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。

さようなら、わたくしの騎士様
夜桜
恋愛
騎士様からの突然の『さようなら』(婚約破棄)に辺境伯令嬢クリスは微笑んだ。
その時を待っていたのだ。
クリスは知っていた。
騎士ローウェルは裏切ると。
だから逆に『さようなら』を言い渡した。倍返しで。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる