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第四章 守りたいもの
12.知らなかった温もり【ミリア視点2】
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「ミリア様、ビオレッタ様との違いを探すのはやめましょう」
「……なにひとつ……あの女に勝てないから……?」
「無礼な物言いはおやめ下さい。モーリス様のお言葉は気にしない方がよろしいですよ。あの方はビオレッタ様を溺愛しておられますから、ビオレッタ様を馬鹿にしたミリア様に攻撃的になるのは当然です。反省して、次に活かせば大丈夫です。ビオレッタ様は貴女を妹と呼んで下さった。国を任せて下さった。それがどれほどの覚悟か、お分かりになりますか?」
「覚悟? 分からないわ」
「ビオレッタ様は、正当な王位継承権をお持ちだ。我々を追い出す事もできた。だけど、ビオレッタ様はミリア様にこの国を任せて下さった。ミリア様の失態はビオレッタ様の失態になります。帝国に嫁いだビオレッタ様にとって、失敗はなにより怖い事です。帝国は完全な実力主義。たとえ王族の妻になっても役に立たなければ粛正されます」
「粛正って……」
「最悪の場合、殺されるそうですよ。ミリア様のように礼儀のなってない人を代理にするなんて、私なら絶対にしません。ビオレッタ様は本当に慈悲深いお方です」
「なによ! 礼儀なんて知らない! あの女もできるんだから簡単でしょっ!」
「だから、ビオレッタ様を馬鹿にするのはやめて下さい! ビオレッタ様とミリア様は母親は同じでも育った環境がまるで違います! ビオレッタ様はキャスリーン様の元で王族としての教育を受けて育った。あのご様子から察するに、ご両親であるキャスリーン様とクリス様に厳しく教育されたのでしょう。ミリア様は、両親から可愛がられて我儘放題で暮らしていた。貴女が宝石やドレスに夢中になる間に、ビオレッタ様は勉学に励んでおられたのですよ。ミリア様には、王族としての知識が足りません。それは貴女のせいだけではない。私の父や、我々貴族達、亡くなってしまわれた貴女のご両親の責任でもあります」
「じゃあ……わたくしは悪くない……!」
「今まではそうです。でもこれからは違う。ここまで言われて何もしなければ貴女の責任ですよ。ビオレッタ様を見て狡いと思うだけですか? ミリア様だって、努力を重ねれば素晴らしい人になりますよ。人と比べる暇があるなら、一分一秒でも無駄にせず自分を磨くべきです。やり方が分からなければ、私がお教えします。教師の手配もします。私は貴女の夫です。一生、貴女の側にいます。たとえ、貴女が無礼な態度を取ってビオレッタ様の怒りを買い、城を追い出されても私は貴女から離れません。平民になっても、ミリア様の夫です」
「なんで……わたくしは我儘で……酷い女なのに……」
「今まではそうでした。でも、これからは違うでしょう? 私は、ミリア様を愛しています。私では不満かもしれませんが、どうか一生、貴女の側にいさせて下さい」
お母様も、お父様もわたくしを愛してるといつも言っていた。だけど、この人の愛してるはなにか違う。心が温かくなり、不安だった気持ちが少しだけ落ち着いた。
「……夫なら、落ち込んでる妻を慰めてよ」
「喜んで。愛してます、ミリア様」
初めて抱きしめられた夫の身体は思ったより大きくて、とっても安心感があった。わたくしは初めて夫の名を呼んだ。
「……なにひとつ……あの女に勝てないから……?」
「無礼な物言いはおやめ下さい。モーリス様のお言葉は気にしない方がよろしいですよ。あの方はビオレッタ様を溺愛しておられますから、ビオレッタ様を馬鹿にしたミリア様に攻撃的になるのは当然です。反省して、次に活かせば大丈夫です。ビオレッタ様は貴女を妹と呼んで下さった。国を任せて下さった。それがどれほどの覚悟か、お分かりになりますか?」
「覚悟? 分からないわ」
「ビオレッタ様は、正当な王位継承権をお持ちだ。我々を追い出す事もできた。だけど、ビオレッタ様はミリア様にこの国を任せて下さった。ミリア様の失態はビオレッタ様の失態になります。帝国に嫁いだビオレッタ様にとって、失敗はなにより怖い事です。帝国は完全な実力主義。たとえ王族の妻になっても役に立たなければ粛正されます」
「粛正って……」
「最悪の場合、殺されるそうですよ。ミリア様のように礼儀のなってない人を代理にするなんて、私なら絶対にしません。ビオレッタ様は本当に慈悲深いお方です」
「なによ! 礼儀なんて知らない! あの女もできるんだから簡単でしょっ!」
「だから、ビオレッタ様を馬鹿にするのはやめて下さい! ビオレッタ様とミリア様は母親は同じでも育った環境がまるで違います! ビオレッタ様はキャスリーン様の元で王族としての教育を受けて育った。あのご様子から察するに、ご両親であるキャスリーン様とクリス様に厳しく教育されたのでしょう。ミリア様は、両親から可愛がられて我儘放題で暮らしていた。貴女が宝石やドレスに夢中になる間に、ビオレッタ様は勉学に励んでおられたのですよ。ミリア様には、王族としての知識が足りません。それは貴女のせいだけではない。私の父や、我々貴族達、亡くなってしまわれた貴女のご両親の責任でもあります」
「じゃあ……わたくしは悪くない……!」
「今まではそうです。でもこれからは違う。ここまで言われて何もしなければ貴女の責任ですよ。ビオレッタ様を見て狡いと思うだけですか? ミリア様だって、努力を重ねれば素晴らしい人になりますよ。人と比べる暇があるなら、一分一秒でも無駄にせず自分を磨くべきです。やり方が分からなければ、私がお教えします。教師の手配もします。私は貴女の夫です。一生、貴女の側にいます。たとえ、貴女が無礼な態度を取ってビオレッタ様の怒りを買い、城を追い出されても私は貴女から離れません。平民になっても、ミリア様の夫です」
「なんで……わたくしは我儘で……酷い女なのに……」
「今まではそうでした。でも、これからは違うでしょう? 私は、ミリア様を愛しています。私では不満かもしれませんが、どうか一生、貴女の側にいさせて下さい」
お母様も、お父様もわたくしを愛してるといつも言っていた。だけど、この人の愛してるはなにか違う。心が温かくなり、不安だった気持ちが少しだけ落ち着いた。
「……夫なら、落ち込んでる妻を慰めてよ」
「喜んで。愛してます、ミリア様」
初めて抱きしめられた夫の身体は思ったより大きくて、とっても安心感があった。わたくしは初めて夫の名を呼んだ。
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