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第三十一話

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「フォス、其方は生涯幽閉だ」

「何故だ……何故だ……何故だ……」

「弟と父に暗殺者を仕向け、他国を滅ぼす。その罪を多数の人の前で暴露したフォスを、処罰しない訳にはいかぬ。だが、皇帝であるイオスは、フォスを処刑するなと命じた。王命により、フォスは塔に生涯幽閉される」

フォスにそう伝えたのは、前皇帝である父親だった。幽閉、幽閉……この俺が……幽閉などありえない……。フォスは、現実を受け入れられず、部屋でぼんやりしていた。だが、宣告を受けて3日、未だに部屋にいて、見張りは居るが自由がある。食事も、王族に相応しいものが運ばれてくる。その状況に、幽閉は、間違いだったのだと思うようになった。それならまだチャンスはある。しばらくしたらイオスを殺して俺が皇帝になる。

フォスはそう思っていた。そんな時に、部屋に息も絶え絶えなフランツが現れた。

「フォス様……フォス様……」

フランツは、脚の腱を切られており歩くのもやっとの状態だった。ふん、コイツが余計な事を言ったせいで俺は皇帝になれなかったんだ。そう思ったフォスは、フランツを無視した。

「何故……何故お声掛け頂けないのですか……私は、フォス様の忠実な配下でしょう? フォス様の御命令通り、セーラ様を暗殺者に仕立てました。何度もイオス様を暗殺しようとしました。毒の手配も行いました……それに……」

「ふん、貴様が余計な事を言ったせいで貴族の支持を失ったんだ」

「それは! 貴方様が平民が貴族になるなど烏滸がましいと仰ったからでしょう! イオス様から聞きました! この国の貴族は大半は元は平民だと! 我が家は違うのでそのような教育は受けませんでしたが、半数以上の貴族は、平民から貴族となった事を誇りに思っていると! 過去の教訓を活かして平民を養子にする事は日常茶飯事だと! 王族としての仕事をしていれば、半年もすれば気がつくと仰っておられました! 何故フォス様はご存知ないのですか! 貴方様があのような迂闊な事を仰らなければ、フォス様が皇帝になれたのですぞ!」

「なんだと? 僕のせいだと言うのか!」

「その通りです! 貴方が無知なせいで俺は廃嫡された! 貴方の指示で皇帝の暗殺をしたら返り討ちにあって足の腱を切られた! もう歩く事もままならない! アンタのせいで俺の人生はめちゃくちゃだ!」

「僕のせいな訳があるか! お前が余計な事を言ったせいだ!」

「おやおや、見苦しいですねぇ。さ、王命のお時間になりました。この2人を運んでください」

「宰相! 貴様が騙していたから!」

「お前のように仕事もせず威張っている人間が、私は一番嫌いなんだ。王族としての義務を果たさず全てを押し付けていた男など皇帝陛下の治世には不要だ。王命が発動まで3日かかるほど重いものとも知らなかったんだろう? 王命は発動してしまえば王命を出した皇帝陛下すら撤回できない重いものなんだ。だから、3日の猶予期間がある。そんな事も知らずに、ハッタリだのなんだの舐めた事を言いやがって。お前たちは生涯幽閉だ。フランツ、貴様の罪は本来ならば公開処刑だが、お優しい皇帝陛下は、心から信頼しているフォス様と共に生涯塔に幽閉して下さるそうだ。良かったなぁ、生きていて」

「嫌だ! 嫌だ! 嫌だぁぁぁ!!!」

「やめろ! 僕は王族だぞ! 王位継承権もあるんだ!」

「そんなもんとっくに剥奪されてるに決まってるだろ。イオス様の慈悲で命がある事を忘れるな。さて、罵りあうお前たちはどのくらい保つのかね。ああ、フランツの武器は取り上げるなよ」

フォスとフランツは塔に生涯幽閉された。2人がいつまで生きていたのか、記録は一切残っていない。

その後、皇帝陛下は民の為にさまざまな事を行った。道は整備され、子どもは教育を受けられるようになった。民は賢く豊かになり、国はますます豊かになった。皇帝陛下は、賢王として他国にも讃えられた。

毎日忙しく働く皇帝陛下の隣には、美しいお妃様が常に寄り添っていたという。
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