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第十二話

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「さて、今後の事を考えるか」

「……今後?」

「いつまでもセーラを閉じ込めておくわけにはいかないだろ」

イオスは、心の底ではセーラをここに閉じ込めておきたいと思ってはいるが、日の光を浴びないと人は体調を崩す。セーラが体調を崩すなど、イオスには許しがたかった。

フォスは、自分の宮の庭などでセーラの訓練をさせていたから問題なかったようだが、イオスが安心できる場所は自分の部屋だけ。部屋の外の廊下すら常に監視されている。

「んー……ここに居ても良いけど……。そもそも、ここはどこなの? なんで鉄格子があるのよ?」

「ここは、3代前の皇帝が好んで使っていた部屋でな。王妃に隠れて、女性とお楽しみだったらしい。この部屋にきた女性が、勝手に城に入れねえように鍵かかってんだよ。セーラが下手に城に逃げたら危ないから閉じ込めてたけど、もうオレを信じてくれるなら好きにしていいぜ。街に出るか?」

「待って待って! やたら設備が整ってると思ったら、ここは愛人の隠し部屋ってこと?!」

「ああ。この部屋の上はオレの部屋なんだけど、ずっと放置されて掃除してなかったんだよ。兄貴の嫌がらせでこの部屋に決まったんだけど、誰も掃除しねぇから、自分で掃除してたら隠してある日記を見つけてな。この悪趣味な部屋の存在が分かったって訳。当時の皇帝と、口の硬い側近以外はこの部屋の事を知らないし、記録にも残してねえみたいだ。皇帝の死後は、ここは開かずの間だったから、今知ってる奴が居るかは分からねえ。ただ、兄貴は絶対知らないから安心しな。オレに逃げ道を作らない為に、隠し通路がない部屋を宛てがったらしいからな」

「王族のイオスの部屋なのに、よく皇帝陛下は認めたね」

「オレに興味がないのか、この部屋の事知ってたのか……まぁ、どっちでも構わねえよ。服やドレスは最初からあったんだ。汚れがないかは定期的にチェックはしてたけど、ここに居るなら、全部新品に替えるよ。城には信用できる奴が少ないから、ちょっとずつになっちまうけどな。この部屋は長い廊下のいちばん奥にあって、入り口はひとつなんだ。廊下を普通に歩いていたら部屋の入り口まで数分かかるんだよ。だからこの部屋に人が来るのが分かったら鈴が鳴るんだぜ。ご先祖様はよほど王妃様が怖かったんだろうな。鈴が鳴らなきゃ安心してこの部屋でいちゃつけるって訳だ」

「なんで、ドレスを定期的にチェックすんのよ……」

「おい! その目やめろ! 変装に使うんだよ! 実際オレは何度かこの服使って変装してるんだって! 今は男物もあるけど、最初は女物しかなくてだな……オレが城で買ったモンは兄貴に全部把握されてるから、以前はここから隠し通路で街に出て色々買ったりしてたんだ! 買う時に、男だとオレだとバレるリスクがあるから性別変えればわかんねえと思ってだな……」

「さっきから気になってたんだけど、閉じ込めてるのに隠し通路があるって矛盾してない?」

「あー……あのな、言いたくねぇけど、街から高級娼婦を呼んでたらしい。気に入った子がいたら、しばらく囲えるように快適空間になってるそうだ……」

「……へー……」

「オレは何もしてねぇぞ! そんな目で見ないでくれよ!」

「あはは、イオスがここで女の子とお楽しみでも怒らないよ」

「オレはセーラしか興味ねぇ!」

必死の様子のイオスを見て、セーラは2年ぶりに心から笑った。
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