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【番外編】デヴィッドのその後
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「よし、今日の業務はここまで! みな、ゆっくり休むように。私は倉庫の在庫を確認して帰るから、先に皆は上がってくれ」
「我々もお手伝いいたしますよ?」
「いや、もう定時だし確認は30分もかからん。無駄な残業はせず、明日の英気を養ってくれ。明日は大口の取引があるから、いつもより早く出社を頼んでいるんだ。それなのに残業などありえないだろう。業務命令だ、今日は退社し、休んでくれ」
「そうですか、わかりました」
「「「お疲れ様でした!!!」」」
「会頭、今日も完璧な仕事ぶりだな」
「そうだな、正直、最初はエミリー様泣かせた奴の下で働くなんてお断りだと思ったが、エミリー様が惚れるだけあるよな」
「反発しまくってたけどなー、最初は。でも、反発すんのもバカバカしくなってきたよね。仕事は完璧だし、誠実だし、従業員の面倒を私生活まで介入してみてくれるしね」
「オレ、今の奥さんと出会ったの会頭のおかげだぜ」
「私の妹が病気になったとき、貴重な薬を必死で探してくださったの」
「それなのにさ、会頭は自分の幸せは追い求めないよな」
「そーそー、エミリー様とまたくっつけばいいのに」
「だって婚約破棄を神に誓っちゃったんでしょう? 無理じゃん」
「でもさー、エミリー様もデヴィッド様も他の人とくっつく様子ないわよね」
「エミリー様はデヴィッド様以外とは結婚しないでしょ。エミリー様のおうち、恋愛結婚推奨で、ご当主様すら好きな相手がいないの一言で結婚逃れてるんだぜ?」
「いや、ご当主様は狩りの準備中だろ」
「まあ、あの人狙いよね」
「そうそう! エミリー様の協力もあるし外堀は埋まってるわよね」
「気がついた時には、周りはガッチリ固められてんだろうな」
「この国の夜会は全部仕事で埋めて出させないのに、隣国の夜会は出すってエミリー様も策士だよね」
「ご本人も、まんざらじゃなさそうなのよ」
「そー、そー、こないだ好きなタイプ聞いたら、腹黒って言ってた」
「じゃあもう理想のタイプじゃん」
「「「だよねー」」」
「こうなるとエミリー様も幸せになって欲しいわよね」
「エミリー様は多分一生デヴィッド様しか好きにならないと思うけど」
「まあそうだよなー、ヨーク家の方とは会わないって言っちゃったから、2度と会えないってエミリー様が泣いてたの何度も見た」
「エミリー様、かわいそう」
「その分、影でめちゃくちゃ見てるわよね」
「見てる見てる」
「あのエミリー様、かわいいわよね」
「デヴィッド様もエミリー様の絵姿こっそり見てたりするのよ」
「きゃー! 素敵!!!」
「でも、おふたりは会うこともできないなんて」
しんみりした空気をなくそうと、わたしは発言する。
「あ、明日ってエミリー様来る日だったわよね?」
「そうそう! 会頭は出席できないって言ってたけど」
「それってやっぱり誓いがあるから?」
「ねー、ねー、誓いってよくわかんないんだけど、会わないって言うと、ホントにずっと会えないの?」
「これが不思議なんだけど、街ですれ違うことすらないらしいぜ」
「え?! でもエミリー様しょっちゅう変装してデヴィッド様の取引先に居るわよね?」
「ほんとだ! 誓いならそれもできないはずだぜ?」
「ねえ、わたし気がついたんだけど、エミリー様って、デヴィッド・スチュワート・ヨーク様との婚約を破棄したんでしょ? デヴィッド様って、ヨーク家廃嫡されたじゃない? だったらただのデヴィッド様なら、エミリー様と結婚できるんじゃないの?!」
「ありえる!」
「ホントね!」
「よっし、ひとまずおふたりが会えるか試してみようぜ!」
「「「賛成!!!」」」
ふたりが5年ぶりに出会い、しあわせになるのはほんの少し先の話。
「我々もお手伝いいたしますよ?」
「いや、もう定時だし確認は30分もかからん。無駄な残業はせず、明日の英気を養ってくれ。明日は大口の取引があるから、いつもより早く出社を頼んでいるんだ。それなのに残業などありえないだろう。業務命令だ、今日は退社し、休んでくれ」
「そうですか、わかりました」
「「「お疲れ様でした!!!」」」
「会頭、今日も完璧な仕事ぶりだな」
「そうだな、正直、最初はエミリー様泣かせた奴の下で働くなんてお断りだと思ったが、エミリー様が惚れるだけあるよな」
「反発しまくってたけどなー、最初は。でも、反発すんのもバカバカしくなってきたよね。仕事は完璧だし、誠実だし、従業員の面倒を私生活まで介入してみてくれるしね」
「オレ、今の奥さんと出会ったの会頭のおかげだぜ」
「私の妹が病気になったとき、貴重な薬を必死で探してくださったの」
「それなのにさ、会頭は自分の幸せは追い求めないよな」
「そーそー、エミリー様とまたくっつけばいいのに」
「だって婚約破棄を神に誓っちゃったんでしょう? 無理じゃん」
「でもさー、エミリー様もデヴィッド様も他の人とくっつく様子ないわよね」
「エミリー様はデヴィッド様以外とは結婚しないでしょ。エミリー様のおうち、恋愛結婚推奨で、ご当主様すら好きな相手がいないの一言で結婚逃れてるんだぜ?」
「いや、ご当主様は狩りの準備中だろ」
「まあ、あの人狙いよね」
「そうそう! エミリー様の協力もあるし外堀は埋まってるわよね」
「気がついた時には、周りはガッチリ固められてんだろうな」
「この国の夜会は全部仕事で埋めて出させないのに、隣国の夜会は出すってエミリー様も策士だよね」
「ご本人も、まんざらじゃなさそうなのよ」
「そー、そー、こないだ好きなタイプ聞いたら、腹黒って言ってた」
「じゃあもう理想のタイプじゃん」
「「「だよねー」」」
「こうなるとエミリー様も幸せになって欲しいわよね」
「エミリー様は多分一生デヴィッド様しか好きにならないと思うけど」
「まあそうだよなー、ヨーク家の方とは会わないって言っちゃったから、2度と会えないってエミリー様が泣いてたの何度も見た」
「エミリー様、かわいそう」
「その分、影でめちゃくちゃ見てるわよね」
「見てる見てる」
「あのエミリー様、かわいいわよね」
「デヴィッド様もエミリー様の絵姿こっそり見てたりするのよ」
「きゃー! 素敵!!!」
「でも、おふたりは会うこともできないなんて」
しんみりした空気をなくそうと、わたしは発言する。
「あ、明日ってエミリー様来る日だったわよね?」
「そうそう! 会頭は出席できないって言ってたけど」
「それってやっぱり誓いがあるから?」
「ねー、ねー、誓いってよくわかんないんだけど、会わないって言うと、ホントにずっと会えないの?」
「これが不思議なんだけど、街ですれ違うことすらないらしいぜ」
「え?! でもエミリー様しょっちゅう変装してデヴィッド様の取引先に居るわよね?」
「ほんとだ! 誓いならそれもできないはずだぜ?」
「ねえ、わたし気がついたんだけど、エミリー様って、デヴィッド・スチュワート・ヨーク様との婚約を破棄したんでしょ? デヴィッド様って、ヨーク家廃嫡されたじゃない? だったらただのデヴィッド様なら、エミリー様と結婚できるんじゃないの?!」
「ありえる!」
「ホントね!」
「よっし、ひとまずおふたりが会えるか試してみようぜ!」
「「「賛成!!!」」」
ふたりが5年ぶりに出会い、しあわせになるのはほんの少し先の話。
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