18 / 21
17.お似合い
しおりを挟む
「ジョゼ! 会いたかったわ!」
「私もお会いしたかったです。お嬢様、大切なお話があります。ご一緒に来て頂けますか?」
「勿論よ! あ、待って。聞きたい事があるの! ステファン、マリアベルは元気?」
「ああ、元気だよ。一時は狙われていたけど、もう大丈夫だ」
「良かった!」
「全て片付けたら、またクリステル様と会いたいと言っていた。良いかな?」
「勿論よ! 楽しみにしてるわね」
「ああ、それじゃあジョゼ様。また後で」
「はい。後でしっかり話し合いを行いましょう。きちんとご家族を手綱を握って下さいね。お嬢様、私はステファン様と少しお話がありまして。先にお部屋に戻って荷物をまとめておいて下さいますか? すぐに新しいお家にご案内します。ご安心下さい。私はこれからずっと、お嬢様と離れる事はありませんから」
「本当……?」
「はい。あまりこの場では申し上げられませんから、後でゆっくりお伝えします。だから安心して下さい」
「分かったわ。クリストフ様、アリーゼとご結婚なさったそうですね。おめでとうございます。わたくしのような悪女と結婚せず、愛する方と結ばれて良かったですね。もう2度とお会いする事はないでしょうけど、どうかお幸せに」
「待って! 待ってくれクリステル!!!」
「お嬢様、お辛かったのにきちんとご挨拶が出来て素晴らしいですね。よく頑張りました。さ、もうお部屋を出て下さい。ご自分を裏切った元婚約者なんて、見たくないでしょう」
「そうね。クリストフ様もわたくしみたいな悪女の顔は見たくないでしょうし。信じて頂けず悲しかったですわ。でも、今はもうどうでも良いです。どうかアリーゼとお幸せに。アリーゼ、頑張ってね」
何か言いたげな元婚約者と元親友に背を向け、クリステルはすぐさま部屋を出た。
「そんな……クリステル……」
クリステルが部屋を出た途端、ジョゼは冷たい目でイオネスコ侯爵家の者達を蔑んだ。
「ステファン様、見張る約束ではなかったのですか?」
「申し訳ない。今後は勝手に動かないように厳重に見張る。兄貴の処置をしていたら、隙を見てアリーゼが逃げ出したんだ」
「次はありませんからね」
「分かってる。もうこんな失態は犯さない。イオネスコ侯爵の名にかけて誓う」
「……まぁ、イオネスコ侯爵がそう仰るなら良いでしょう。クリストフ様とアリーゼ様にはお嬢様への接見禁止令が出されました。次にお嬢様の前に姿を表したらあなた方は牢屋行きです」
「なんで……! ジョゼは単なる執事でしょう! そんな力、無いはずよ!」
「この馬鹿! 申し訳ありませんジョゼ様! すぐに言い聞かせますのでこの場はお許し下さい!」
「今回だけは見逃します。ですが、この調子ではそのうちイオネスコ侯爵家に害をもたらすのではありませんか?」
「そうですね。追い出す準備を始めさせて頂きますよ」
冷たいステファンの声に、クリストフとアリーゼがビクリと肩を震わせた。アリーゼはジョゼとステファンの殺気に当てられ、クリストフの腕に擦り寄った。
だが、クリストフはアリーゼの腕を振り払う。ショックを受けたアリーゼが必死にクリストフに擦り寄っている姿を見て、ジョゼは笑い始めた。
「お嬢様を捨ててまで選んだ女性が、自分を愛してないと知ったお気持ちはいかがですか?」
「まさか聞いてたの……?! 違うの! わたくし、クリストフ様を愛してるわ!」
必死にクリストフに甘えようとするアリーゼの手を振り払い、アリーゼを殴ろうとしたクリストフはステファンに殴られて気を失った。
「さすが、嘘がお上手ですね。お嬢様を悪女に仕立てただけはある。ステファン様、もうクリストフ様の処置は済んでいるのですか?」
「はい。兄は子を成すことは出来ません」
「え! なんでよ!」
「貴女がクリストフ様を誘惑なさったからですよ。簡単に貴女を信じるクリストフ様にも問題はありますけどね。お似合いのご夫婦ですね。おふたりの間に子は産まれませんが、愛し合う者同士お幸せにお過ごし下さい」
「マリアベルに手を出そうとしたんだ。優雅に暮らせると思うなよ」
クリストフを抱えたステファンがアリーゼに笑いかける。その笑みはとても恐ろしく、アリーゼは恐怖で気を失った。
「私もお会いしたかったです。お嬢様、大切なお話があります。ご一緒に来て頂けますか?」
「勿論よ! あ、待って。聞きたい事があるの! ステファン、マリアベルは元気?」
「ああ、元気だよ。一時は狙われていたけど、もう大丈夫だ」
「良かった!」
「全て片付けたら、またクリステル様と会いたいと言っていた。良いかな?」
「勿論よ! 楽しみにしてるわね」
「ああ、それじゃあジョゼ様。また後で」
「はい。後でしっかり話し合いを行いましょう。きちんとご家族を手綱を握って下さいね。お嬢様、私はステファン様と少しお話がありまして。先にお部屋に戻って荷物をまとめておいて下さいますか? すぐに新しいお家にご案内します。ご安心下さい。私はこれからずっと、お嬢様と離れる事はありませんから」
「本当……?」
「はい。あまりこの場では申し上げられませんから、後でゆっくりお伝えします。だから安心して下さい」
「分かったわ。クリストフ様、アリーゼとご結婚なさったそうですね。おめでとうございます。わたくしのような悪女と結婚せず、愛する方と結ばれて良かったですね。もう2度とお会いする事はないでしょうけど、どうかお幸せに」
「待って! 待ってくれクリステル!!!」
「お嬢様、お辛かったのにきちんとご挨拶が出来て素晴らしいですね。よく頑張りました。さ、もうお部屋を出て下さい。ご自分を裏切った元婚約者なんて、見たくないでしょう」
「そうね。クリストフ様もわたくしみたいな悪女の顔は見たくないでしょうし。信じて頂けず悲しかったですわ。でも、今はもうどうでも良いです。どうかアリーゼとお幸せに。アリーゼ、頑張ってね」
何か言いたげな元婚約者と元親友に背を向け、クリステルはすぐさま部屋を出た。
「そんな……クリステル……」
クリステルが部屋を出た途端、ジョゼは冷たい目でイオネスコ侯爵家の者達を蔑んだ。
「ステファン様、見張る約束ではなかったのですか?」
「申し訳ない。今後は勝手に動かないように厳重に見張る。兄貴の処置をしていたら、隙を見てアリーゼが逃げ出したんだ」
「次はありませんからね」
「分かってる。もうこんな失態は犯さない。イオネスコ侯爵の名にかけて誓う」
「……まぁ、イオネスコ侯爵がそう仰るなら良いでしょう。クリストフ様とアリーゼ様にはお嬢様への接見禁止令が出されました。次にお嬢様の前に姿を表したらあなた方は牢屋行きです」
「なんで……! ジョゼは単なる執事でしょう! そんな力、無いはずよ!」
「この馬鹿! 申し訳ありませんジョゼ様! すぐに言い聞かせますのでこの場はお許し下さい!」
「今回だけは見逃します。ですが、この調子ではそのうちイオネスコ侯爵家に害をもたらすのではありませんか?」
「そうですね。追い出す準備を始めさせて頂きますよ」
冷たいステファンの声に、クリストフとアリーゼがビクリと肩を震わせた。アリーゼはジョゼとステファンの殺気に当てられ、クリストフの腕に擦り寄った。
だが、クリストフはアリーゼの腕を振り払う。ショックを受けたアリーゼが必死にクリストフに擦り寄っている姿を見て、ジョゼは笑い始めた。
「お嬢様を捨ててまで選んだ女性が、自分を愛してないと知ったお気持ちはいかがですか?」
「まさか聞いてたの……?! 違うの! わたくし、クリストフ様を愛してるわ!」
必死にクリストフに甘えようとするアリーゼの手を振り払い、アリーゼを殴ろうとしたクリストフはステファンに殴られて気を失った。
「さすが、嘘がお上手ですね。お嬢様を悪女に仕立てただけはある。ステファン様、もうクリストフ様の処置は済んでいるのですか?」
「はい。兄は子を成すことは出来ません」
「え! なんでよ!」
「貴女がクリストフ様を誘惑なさったからですよ。簡単に貴女を信じるクリストフ様にも問題はありますけどね。お似合いのご夫婦ですね。おふたりの間に子は産まれませんが、愛し合う者同士お幸せにお過ごし下さい」
「マリアベルに手を出そうとしたんだ。優雅に暮らせると思うなよ」
クリストフを抱えたステファンがアリーゼに笑いかける。その笑みはとても恐ろしく、アリーゼは恐怖で気を失った。
28
お気に入りに追加
621
あなたにおすすめの小説
好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?
【完結】夫もメイドも嘘ばかり
横居花琉
恋愛
真夜中に使用人の部屋から男女の睦み合うような声が聞こえていた。
サブリナはそのことを気に留めないようにしたが、ふと夫が浮気していたのではないかという疑念に駆られる。
そしてメイドから衝撃的なことを打ち明けられた。
夫のアランが無理矢理関係を迫ったというものだった。
婚約者と親友に裏切られたので、大声で叫んでみました
鈴宮(すずみや)
恋愛
公爵令嬢ポラリスはある日、婚約者である王太子シリウスと、親友スピカの浮気現場を目撃してしまう。信じていた二人からの裏切りにショックを受け、その場から逃げ出すポラリス。思いの丈を叫んでいると、その現場をクラスメイトで留学生のバベルに目撃されてしまった。
その後、開き直ったように、人前でイチャイチャするようになったシリウスとスピカ。当然、婚約は破棄されるものと思っていたポラリスだったが、シリウスが口にしたのはあまりにも身勝手な要求だった――――。
【完結】悪女のなみだ
じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」
双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。
カレン、私の妹。
私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。
一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。
「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」
私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。
「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」
罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。
本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。
死を願われた薄幸ハリボテ令嬢は逆行して溺愛される
葵 遥菜
恋愛
「死んでくれればいいのに」
十七歳になる年。リリアーヌ・ジェセニアは大好きだった婚約者クラウス・ベリサリオ公爵令息にそう言われて見捨てられた。そうしてたぶん一度目の人生を終えた。
だから、二度目のチャンスを与えられたと気づいた時、リリアーヌが真っ先に考えたのはクラウスのことだった。
今度こそ必ず、彼のことは好きにならない。
そして必ず病気に打ち勝つ方法を見つけ、愛し愛される存在を見つけて幸せに寿命をまっとうするのだ。二度と『死んでくれればいいのに』なんて言われない人生を歩むために。
突如として始まったやり直しの人生は、何もかもが順調だった。しかし、予定よりも早く死に向かう兆候が現れ始めてーー。
リリアーヌは死の運命から逃れることができるのか? そして愛し愛される人と結ばれることはできるのか?
そもそも、一体なぜ彼女は時を遡り、人生をやり直すことができたのだろうかーー?
わけあって薄幸のハリボテ令嬢となったリリアーヌが、逆行して幸せになるまでの物語です。
妻と夫と元妻と
キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では?
わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。
数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。
しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。
そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。
まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。
なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。
そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて………
相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。
不治の誤字脱字病患者の作品です。
作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。
性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。
小説家になろうさんでも投稿します。
売られていた奴隷は裏切られた元婚約者でした。
狼狼3
恋愛
私は先日婚約者に裏切られた。昔の頃から婚約者だった彼とは、心が通じ合っていると思っていたのに、裏切られた私はもの凄いショックを受けた。
「婚約者様のことでショックをお受けしているのなら、裏切ったりしない奴隷を買ってみては如何ですか?」
執事の一言で、気分転換も兼ねて奴隷が売っている市場に行ってみることに。すると、そこに居たのはーー
「マルクス?」
昔の頃からよく一緒に居た、元婚約者でした。
訳ありヒロインは、前世が悪役令嬢だった。王妃教育を終了していた私は皆に認められる存在に。でも復讐はするわよ?
naturalsoft
恋愛
私の前世は公爵令嬢であり、王太子殿下の婚約者だった。しかし、光魔法の使える男爵令嬢に汚名を着せられて、婚約破棄された挙げ句、処刑された。
私は最後の瞬間に一族の秘術を使い過去に戻る事に成功した。
しかし、イレギュラーが起きた。
何故か宿敵である男爵令嬢として過去に戻ってしまっていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる