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第一話

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「かしこまりました。王家からの御命令で婚約破棄ですね。では、既定の慰謝料をお支払い致します。今後、王子と王子の関係者は、私と私の関係者に二度とお会いしないよう魔法契約を致しましょう」

「ふん、殊勝な態度だな。これで契約は成立だ。二度と会わないのだから、慰謝料はすぐに払え」

「もちろんです。執事に命じて急いでご用意させて頂きました。今後は、契約通り私と、私の関係者はこの国を出て行きます」

「お前のような田舎貴族が僕の婚約者など父上は何を考えておられたんだ。二度と王都に来るなよ」

「はい、かしこまりました。国を出ますから二度とこの国に足を踏み入れません。では、こちらに受け取りのサインを、すぐに魔法で国中に告知されます。国を出るまで1週間の猶予を頂きますね」

「3日だ。3日で出ていけ」

「かしこまりました。たった今、王子の御命令を関係者各所に魔道具で通知しました。王子の命令で3日で出て行く事になった為、急いで準備しろと申しつけます。残念ですが、現在この国に残っている商会の財産は放棄するしかありませんね。ついてきてくれる従業員はどのくらいいるかしら……」

王子はそう聞いて、いやらしい笑みを浮かべている。私が苦労して作った商会をタダで乗っ取ろうとしてるみたいね。3日で出て行けなんて無茶だから、従業員は残るだろうと思ってるのかしら。

私は、子爵家の当主。両親はもう他界したから執事の助けを借りて必死で領地経営をしてきた。そこそこの魔法の技術と、類稀なる商売の才能があった為になんとか領地を保てているが、商売の才能が評価されて、なりたくもない王子の婚約者とされてしまった。

けど、私はどうしても王子が好きになれなかった。顔は良いけどものすごく傲慢で、私を見下す王子なんて好きになれる訳ない。

私の誕生日には花ひとつ寄越さない癖に、自分の誕生日には、高額な物を当たり前のように要求して、用意出来なければ暴力を振るう。

お金がなかった王家に援助してるのは私の商会なのに、すっかり忘れて援助したお金を無駄遣いする。国民のために使えっつーの! 王子につられて、国王も王妃も贅沢するようになった時この国は終わりだと思ったわ。

今日は、王子がお気に入りの歌姫を披露するとか言って勝手に貴族を呼んでパーティを開いている。費用はすべて私持ち。どーしても我慢できなくて、誰にも聞こえないような小声でチクリと嫌味を言ったら大声で婚約破棄を突き付けられた。だから子どもをなだめるように説明したわ。

破棄をすれば、王家への援助はなくなること。
破棄をすれば、我が領地は独立すること。

そして、

領地が独立するのだから、慰謝料は私が払う事。

そしたら、王子は私の爵位を取り上げて、国から出て行くように命令した。

わたくしも貴族の端くれ。王家の命令には逆らえない。

国から出て行くから、領地は取り上げられる。

でも、契約は無効にならないから慰謝料は払わないといけない。

無茶苦茶だけど、これが通るのが王族の怖いところよね。特に今回は、王子に大臣というブレーンが付いてしまったから。

この国を出るしかない私は、大事にしている商会の従業員は連れて行かせてくれと懇願した。そうしたら慰謝料を上乗せすれば認めてやると言われたわ。
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