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番外編
王太子視点 4
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アルフレッドは、音楽の才能があった。見出したのはアマンダだ。街で流行りのオルゴールをアマンダが気に入り、全て購入した。それを知ったアルフレッドは、アマンダの為にオルゴールに歌をつけて踊っていると聞いた。
アマンダを溺愛しているアルフレッドらしいなと微笑ましく思っていたら、アマンダが家をなくした民の為にアルフレッドの歌を届けたいと言い出した。
私は反対した。いくらアルフレッドの歌が上手くても本職の歌い手には敵わない。恥をかくだけだ。それに、王族が派手な事をするべきではない。
しかし、可愛い妻に一度だけアルフレッドの歌を聞いてやって欲しいと頼まれれば、断れなかった。
初めて聞いてアルフレッドの歌や踊りは、素晴らしかった。聞き覚えのあるメロディに美しい歌が映えた。見る者全てを惹きつける強力な魅力があった。アルフレッドの歌をもっと聴きたい。もっと見たい。そんな気持ちが湧き上がった。音楽神の神官長が泣きながらアルフレッドの歌を求めていて当然だなと誇らしい気持ちになった。どんなに素晴らしい歌い手でも簡単に認めないと有名な神官長が泣く。アルフレッドの歌が素晴らしい証明だと思えた。
客観的な証拠と、目の前で魅せられた素晴らしい音楽。私は、アルフレッドに民の前で歌わないかと聞いた。
そしたら、アルフレッドが笑った。アマンダの事以外では作り笑いしかしなかったアルフレッドが、心の底から嬉しそうに笑ったのだ。
そうか、アルフレッドが求めていたものはこれだったのか。
私は初めて、弟の内面に触れた気がした。
アルフレッドが有名になった事で、アルフレッドは自分の血筋を知った。国に帰って来ないかと誘われたアルフレッドは堂々と母の母国に乗り込み、自分の血筋を公表し、たくさんのステージをこなし、大量の取引を纏めて帰って来た。
血筋をアルフレッド自らステージで公表し、国に残ると宣言する事であちらの出鼻を挫いた。散々私を褒め称え、兄の為に国に尽くしたいと涙ながらに訴えたらしい。
私は世界一寛大で素晴らしい為政者として各国の新聞の紙面を飾った。私の事を心から尊敬しているアルフレッドは、今後も国の為に歌い続ける。と締められていた。
これはもう、あちらの調査不足としか言えない。よりによってあのアルフレッドに、アマンダを捨てて帰って来いと誘うなんて馬鹿だとしか言えん。
私の前で取り繕う事をやめた弟は、乱暴な口調で母の母国を非難した。
「あの国に行ったら歌うことは禁じられるって匂わせといた。ま、嘘だけどな」
「そんな嘘を吐いて大丈夫なのか?」
「大丈夫、ハッキリ言ってねぇし。俺はただ兄上が寛大だから歌う事を許して貰えてるって言っただけ。普通なら王族がこんな風に歌うなんて許されねぇ、兄上に感謝してるって言いふらしただけだ」
「そのあとに自分の血筋を公表したら、誤解を招くだろうに」
「嘘は言ってねぇぜ」
「まるで私の弟だから特例で歌えていると言ってるみたいではないか」
「そう思って貰えるようにしたんだよ。俺だって自分の歌がどれだけの人を魅了してるかは分かってる。俺の歌が聞けないって事になりゃそこそこ反感は買うだろ。俺のファンには、王侯貴族も多いんだしさ。少しだけ植え付けられた拒絶反応は、後々効いてくると思わねぇ? 堂々と政治に介入する訳にいかねぇし、結構上手くやったろ」
アマンダを溺愛しているアルフレッドらしいなと微笑ましく思っていたら、アマンダが家をなくした民の為にアルフレッドの歌を届けたいと言い出した。
私は反対した。いくらアルフレッドの歌が上手くても本職の歌い手には敵わない。恥をかくだけだ。それに、王族が派手な事をするべきではない。
しかし、可愛い妻に一度だけアルフレッドの歌を聞いてやって欲しいと頼まれれば、断れなかった。
初めて聞いてアルフレッドの歌や踊りは、素晴らしかった。聞き覚えのあるメロディに美しい歌が映えた。見る者全てを惹きつける強力な魅力があった。アルフレッドの歌をもっと聴きたい。もっと見たい。そんな気持ちが湧き上がった。音楽神の神官長が泣きながらアルフレッドの歌を求めていて当然だなと誇らしい気持ちになった。どんなに素晴らしい歌い手でも簡単に認めないと有名な神官長が泣く。アルフレッドの歌が素晴らしい証明だと思えた。
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そしたら、アルフレッドが笑った。アマンダの事以外では作り笑いしかしなかったアルフレッドが、心の底から嬉しそうに笑ったのだ。
そうか、アルフレッドが求めていたものはこれだったのか。
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私は世界一寛大で素晴らしい為政者として各国の新聞の紙面を飾った。私の事を心から尊敬しているアルフレッドは、今後も国の為に歌い続ける。と締められていた。
これはもう、あちらの調査不足としか言えない。よりによってあのアルフレッドに、アマンダを捨てて帰って来いと誘うなんて馬鹿だとしか言えん。
私の前で取り繕う事をやめた弟は、乱暴な口調で母の母国を非難した。
「あの国に行ったら歌うことは禁じられるって匂わせといた。ま、嘘だけどな」
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「大丈夫、ハッキリ言ってねぇし。俺はただ兄上が寛大だから歌う事を許して貰えてるって言っただけ。普通なら王族がこんな風に歌うなんて許されねぇ、兄上に感謝してるって言いふらしただけだ」
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「まるで私の弟だから特例で歌えていると言ってるみたいではないか」
「そう思って貰えるようにしたんだよ。俺だって自分の歌がどれだけの人を魅了してるかは分かってる。俺の歌が聞けないって事になりゃそこそこ反感は買うだろ。俺のファンには、王侯貴族も多いんだしさ。少しだけ植え付けられた拒絶反応は、後々効いてくると思わねぇ? 堂々と政治に介入する訳にいかねぇし、結構上手くやったろ」
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