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35 【アルフレッド視点】
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「ねぇ、ところでアマンダは大丈夫なの?」
「わからねぇ。病気なのか怪我なのか……」
「わたくしとアルフレッドがお似合いだなんて噂が流れていたから、信じてしまってるんじゃないの? それで倒れたんじゃ?」
「んな訳ねーだろ。アマンダはそんな噂に踊らされるような子じゃねぇよ。あの後ちゃんと結婚式でエスコートする時もいつもみたいに笑ってたし……」
ふと、あの時のアマンダの顔を思い出す。
いつものような可愛らしい笑顔だった。けど、なんかおかしくなかったか?
「ねぇ、ちゃんと噂は誤解だって言った?」
「言ってねぇ……。けど! もうすぐだから待っててくれって言ったら笑ってた!」
「アルフレッド、まさかと思うけどアマンダに詳しく説明してないの?」
「詳しくって……?」
「アルフレッドはアマンダが好きで、ちゃんと結婚する為に頑張ってる。愛してるって言った? アマンダがアルフレッドを好いているのは分かるし、アマンダは何度もアルフレッドをお慕いしていますって言ってたわ! けど! アルフレッドはアマンダにちゃんと愛を伝えてるの?」
「……伝えて……ねぇ……」
正確には、アイドルしてる時に言ってるだけだ。けど、それじゃあ駄目だよな。
やべえ!
俺、アマンダの事が好きだって言ってねぇ!
「優秀な王子様は、異性の扱いに慣れておられないのね。言っておくけどアマンダを狙っているのはマリオンだけじゃないわよ。ボーッとしてたら、アマンダを取られちゃうわよ」
「……駄目だ……アマンダだけは……駄目だ……」
俺は必死で考えた。
アマンダが病気や怪我の場合、リチャードはあんな手紙を書かない。つまり、アマンダが倒れたのは心労。原因は、恐らく俺だ。
くそっ!
俺はなんて鈍いんだ。
アマンダが部屋から出てこないなんて事になったら、あの優しい公爵家の人達は無理に扉を開けないだろう。そうだ! レベッカ様なら!
俺は急いでレベッカ様に手紙を書き、伝書鳩で届けさせた。同時に、馬に乗ってひとりで国を出た。ついて来ていたお付きの奴らは放置だ。どうせ、王妃の指示を受けた見張りだからな。唯一信用出来そうな侍従には緊急の用があり帰るとだけ伝えた。
侍従は、父の指示を受けていたのだろう。黙って路銀を用意してくれた。
おかげで、どんどん馬を乗り継いで最短でアマンダの元へ駆け付ける事が出来た。ズタボロの姿なのに公爵家の人達は黙ってアマンダの元へ案内してくれた。
少し痩せたアマンダは、たくさんの人達に囲まれていた。
声を掛けると、いつものように可愛らしい顔で微笑んだ。みっともない姿なのに、世界一かっこいいと言ってくれた。
俺は初めて、アマンダを抱き締めた。出会った時は子どもだった婚約者は、優しい香りのする大人の女性になっていた。
そして、ようやく……俺の正体に気が付いた。
耳元で囁けば、真っ赤な顔で震えている。ああ、この顔、この顔が見たかった。
もう秘密はない。
俺は初めて、アマンダの頬に口付けをした。髭も伸びて不快だろうに、アマンダは嬉しそうに微笑んで俺の頬にお返しの口付けをくれた。
「わからねぇ。病気なのか怪我なのか……」
「わたくしとアルフレッドがお似合いだなんて噂が流れていたから、信じてしまってるんじゃないの? それで倒れたんじゃ?」
「んな訳ねーだろ。アマンダはそんな噂に踊らされるような子じゃねぇよ。あの後ちゃんと結婚式でエスコートする時もいつもみたいに笑ってたし……」
ふと、あの時のアマンダの顔を思い出す。
いつものような可愛らしい笑顔だった。けど、なんかおかしくなかったか?
「ねぇ、ちゃんと噂は誤解だって言った?」
「言ってねぇ……。けど! もうすぐだから待っててくれって言ったら笑ってた!」
「アルフレッド、まさかと思うけどアマンダに詳しく説明してないの?」
「詳しくって……?」
「アルフレッドはアマンダが好きで、ちゃんと結婚する為に頑張ってる。愛してるって言った? アマンダがアルフレッドを好いているのは分かるし、アマンダは何度もアルフレッドをお慕いしていますって言ってたわ! けど! アルフレッドはアマンダにちゃんと愛を伝えてるの?」
「……伝えて……ねぇ……」
正確には、アイドルしてる時に言ってるだけだ。けど、それじゃあ駄目だよな。
やべえ!
俺、アマンダの事が好きだって言ってねぇ!
「優秀な王子様は、異性の扱いに慣れておられないのね。言っておくけどアマンダを狙っているのはマリオンだけじゃないわよ。ボーッとしてたら、アマンダを取られちゃうわよ」
「……駄目だ……アマンダだけは……駄目だ……」
俺は必死で考えた。
アマンダが病気や怪我の場合、リチャードはあんな手紙を書かない。つまり、アマンダが倒れたのは心労。原因は、恐らく俺だ。
くそっ!
俺はなんて鈍いんだ。
アマンダが部屋から出てこないなんて事になったら、あの優しい公爵家の人達は無理に扉を開けないだろう。そうだ! レベッカ様なら!
俺は急いでレベッカ様に手紙を書き、伝書鳩で届けさせた。同時に、馬に乗ってひとりで国を出た。ついて来ていたお付きの奴らは放置だ。どうせ、王妃の指示を受けた見張りだからな。唯一信用出来そうな侍従には緊急の用があり帰るとだけ伝えた。
侍従は、父の指示を受けていたのだろう。黙って路銀を用意してくれた。
おかげで、どんどん馬を乗り継いで最短でアマンダの元へ駆け付ける事が出来た。ズタボロの姿なのに公爵家の人達は黙ってアマンダの元へ案内してくれた。
少し痩せたアマンダは、たくさんの人達に囲まれていた。
声を掛けると、いつものように可愛らしい顔で微笑んだ。みっともない姿なのに、世界一かっこいいと言ってくれた。
俺は初めて、アマンダを抱き締めた。出会った時は子どもだった婚約者は、優しい香りのする大人の女性になっていた。
そして、ようやく……俺の正体に気が付いた。
耳元で囁けば、真っ赤な顔で震えている。ああ、この顔、この顔が見たかった。
もう秘密はない。
俺は初めて、アマンダの頬に口付けをした。髭も伸びて不快だろうに、アマンダは嬉しそうに微笑んで俺の頬にお返しの口付けをくれた。
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