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「アマンダ、お手をどうぞ」

な、なんでアル様が……。

「今日は騎士団長とレベッカ嬢の結婚式だろう? 招待を受けているのではなかったの?」

「けど……エスコートはお兄様に……アル様は、お忙しいから……」

「今日は大丈夫。あの我儘王女様は部屋から出ない。絶対にね。だから今日は、可愛い婚約者のエスコートをさせてくれ」

「……嬉しい……嬉しいです」

ああ、せっかくお化粧をしたのに……涙が止まらない。

「まだ時間はあるから大丈夫。ごめんね。寂しい思いをさせて。あと少しだから……待っていて」

そうか。あと少し。

「あと少しで……アル様の望みは叶うのですか?」

「ああ。あと少しだ」

「……わたくし、アル様の幸せを望んでおります。その為なら……なんでもしますわ」

アル様が幸せなら、婚約を解消されても良い。また涙が出そうになったら、アル様に頭を撫でられた。

初めてだ……。嬉しい……。

「こら、簡単にそんな事言ってはいけないよ。お化粧を直しておいで。待ってるから」

そうだ。アル様と一緒に居られるのは今日で最後かもしれない。

アル様は優しいから、わたくしに最後の思い出をあげようとしてくれているのかも……。

わたくしが出来る事は、アル様に罪悪感を抱かせないように、笑う事。

「はい! アル様と一緒に結婚式に行けて嬉しいですわ」

馬車の中でも、アル様はずっとわたくしに優しかった。幸せだ。また泣きそうになったけど、駄目。

笑うんだ。

アル様の望みが叶うまで、笑うって決めた。

「来てくれたのね。ごめんなさい……会いに行けなくて……」

「謝らないで下さい。レベッカ様、とってもお綺麗ですわ。ご結婚、おめでとうございます」

「「ありがとうございます」」

「まさか、アルフレッド殿下がいらっしゃるとは思いませんでしたよ」

騎士団長様が、驚いておられる。けど、嫌な感じはない。やっぱりアル様は、お城で頑張っておられるのね。

「今日の私はアマンダの付き添いです。王族として来ている訳ではありません。私はおふたりの結婚を心から祝福します」

「今日という日を迎えられたのは、アルフレッド殿下のおかげです。それなのに、堂々と招待出来ず申し訳ありません」

「お互い立場もありますからね。アマンダはレベッカ様の友人として参列しただけ。私はアマンダの付き添いで来ただけです。誰にも文句は言わせませんよ」

「ええ。正式な招待状をお持ちですからね。私はアルフレッド殿下をご招待しておりません」

「わたくしは、親友のアマンダを呼んだだけですわ」

「親友……」

レベッカ様は、わたくしを親友と呼んで下さるのね。嬉しい。

「何よ、違うの?」

くっ……!
ツンツンしてるのに縋るような目で見るなんて可愛い!

「違いません! わたくしもレベッカ様の事を親友だと思っておりますわ!」

「そ、そうよね! もうアマンダって呼ぶわよ! 良いわよね?」

「はい! 親友を結婚式に呼ぶのは普通の事ですわ!」

アル様も、騎士団長様もクスクス笑ってる。

「騎士団長様、レベッカ様は本当に可愛らしい方ですわね」

「レベッカの魅力に気付いた方が増えて嬉しいよ。今後もレベッカと仲良くして下さい。彼女はもう、自由ですから」

「またお家に伺って良い?」

「もちろんです。お待ちしておりますわ」

レベッカ様はとっても幸せそうだ。
いいな。羨ましい。

わたくしはこんな風に笑える未来はないんだろう。それでも良い。アル様が幸せなら。
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