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「一生の不覚だわ……!」

アルフレッド殿下があまりにユナ様に似ていた為、すっかり我を失ってしまった。婚約はするつもりだったから問題ない。けど気を失うとは思わなかった。

「……かっこよかった……。ユナ様にプロポーズされてるみたいだったわ……」

いや待て、落ち着け!
アルフレッド殿下とユナ様は別人!

何度唱えたか分からない呪文を心の中で呟き、ベッドから降りる。どうやら、あまりに推しにそっくりなアルフレッド殿下に婚約の証に口付けを頂いたら、キャパオーバーで気絶したみたいだ。

「お嬢様、お目覚めになられましたか?」

メイドのアンリが心配そうに部屋に入って来た。わたくしがゴソゴソと動いたので起きたと判断したのだろう。10年の歳月で慣れたけど、メイドさん凄すぎる。決して主人の邪魔をせず、いつでも助けられるように待機しているなんて集中力が必要よね。アンリ、いつもありがとう。

「おはようアンリ。もう大丈夫よ」

「ようございました。皆様とても心配なさっておられたんですよ。すぐに皆様いらっしゃるでしょう。さ、今のうちにお着替えを致しましょう」

そう言って、アンリは手早くわたくしの着替えを済ませてくれた。

「わたくし、どのくらい寝ていたの?」

「2日でございます」

「ふ、2日?!」

「はい。2日でございます」

2回繰り返された。うっそぉ。そりゃ心配するわよね。

「アマンダ!!!」

着替えが済んだら早速心配をかけたであろう人が現れた。お兄様だ。どうやら部屋の前で待っていてくれたみたい。

「お兄様、心配かけてごめんなさい」

「ああ……こんなに痩せて……そんなに婚約が嫌だったのか? 安心しろ、兄様がなんとかしてやるから」

あ、まずい。
お兄様が完全に誤解している。

「違うのですお兄様。アルフレッド殿下との婚約は嫌ではありません。むしろ……嬉しいです」

だって別人とは言え推しとそっくりな王子様よ?!
しかも、お父様や国王陛下の話を聞く限り性格に問題はなさそうだもの。たとえ多少性格が悪くても、あの見た目なら許せる。

別人とは言えユナ様を間近で眺められる特権を誰にも渡したくない。

「嬉しい? アマンダはアルフレッドが好きなの?」

「まだお会いしたばかりですから性格は分かりませんが、お美しい方だと思います」

「ユナ様と似てるから? アルフレッド殿下との顔合わせでアマンダが言ってたって聞いたけど、そんな名前の人知らないよ。アマンダ、詳しく教えて」

ひぇぇ! お兄様の圧が凄い!

「いくら兄でも、病み上がりの令嬢に迫るなんて良くないぞ」

「くっ……! アルフレッドか……!」

「アマンダ嬢、体調はどうだい?」

「あ、アルフレッド殿下……?」
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