12 / 25
11.兄の思惑
しおりを挟む
真っ赤な顔で固まっているシルビアはとても愛らしい。
大騒ぎになる観客を眺めながら、フィリップは内心ほくそ笑んだ。
『フィリップ、楽しそう。ワタシたち、役に立った?』
フィリップのそばに寄り添う精霊が、念話で話しかけてきた。
『ああ、とても役に立ったよ。ありがとう。まさかいきなりガンツがシルビアにプロポーズするとは思わなかったが、いずれこうなっただろうから問題ない』
『ガンツがシルビアに惚れなかったらどうするつもりだったの?』
『考えてなかったな。シルビアに好意を向けられて好きにならない男がいるのか?』
『相変わらずだねぇ』
クスクス笑いながら、精霊達があちこちに散って行った。
『もっとガンツの事、調べてくるね!』
『ありがとう』
『フィリップはいつもお礼を言ってくれるから好き!』
フィリップが多くの仕事をこなせるのは、精霊達の協力があるから。
精霊達が離れたら自分を省みろ。そうガンツに教えられたフィリップは精霊達と共に過ごし、自分の本音を隠さず伝え続けた。
多少腹黒い事も民のためならやると精霊に伝えた時、フィリップは精霊が離れて行く覚悟をしていた。
精霊達が離れるなら、自分は間違っているのだから正さないと。そう思っていた。
だが、精霊達は正直に話したフィリップを気に入り、ますます懐くようになった。
こうして、精霊の加護を受けた腹黒王太子が誕生した。精霊達は、フィリップが苦しみながら仕事をしていると知っているから彼の為に情報を集める。
ガンツを見つけたのも精霊達だった。
国に入った瞬間、突然現れたフィリップを簡単に受け入れて大きくなったと豪快に笑うガンツは、以前と全く変わらなかった。
フィリップはホッとした。
彼なら、大切な妹を任せられる。
ガンツに恋人や婚約者、妻がいないと確認したフィリップは、求婚者の件を伏せて妹と戦って欲しいと頼んだ。
強さを求めるガンツはあっさりとフィリップの提案を受け入れ、この場に現れた。
挑戦者が求婚者になるなんて、ガンツは知らなかったのだ。
恩人相手に誠意がなかったかもしれないと眉を顰めたフィリップに、常に寄り添う風の精霊が問いかける。
『フィリップ、どうしたの?』
『ガンツを騙したみたいで、ちょっと心苦しい』
『正直に謝ったら、ガンツは笑って許してくれるよ』
『そうだな。後で謝るよ。これでシルビアは初恋の人と結婚できる。冒険者と王族が結婚するには、こうするしかないからな』
『でもガンツ、シルビアに勝てる?』
『勝つさ。彼はそういう男だ』
『1日しか会ってないのに』
『1日会えば充分だよ。シルビアはずっと、ガンツが好きだった。本人すら気付いていないけどな。あの子の心を捉えて離さないくらい、ガンツは魅力的だ。他の女性が彼の魅力に気が付かなくて良かったよ』
『ガンツはね、鈍いの。すぐフラフラどっか行っちゃうし、好きになった子もそのうち諦めるみたい』
『そうか……またどこかに行かれては困るな』
フィリップの心配事は、すぐに解決した。フィリップの謝罪をすぐに受け入れたガンツは真剣な顔で言った。
「頼む、騎士になる方法を教えてくれ!」
大騒ぎになる観客を眺めながら、フィリップは内心ほくそ笑んだ。
『フィリップ、楽しそう。ワタシたち、役に立った?』
フィリップのそばに寄り添う精霊が、念話で話しかけてきた。
『ああ、とても役に立ったよ。ありがとう。まさかいきなりガンツがシルビアにプロポーズするとは思わなかったが、いずれこうなっただろうから問題ない』
『ガンツがシルビアに惚れなかったらどうするつもりだったの?』
『考えてなかったな。シルビアに好意を向けられて好きにならない男がいるのか?』
『相変わらずだねぇ』
クスクス笑いながら、精霊達があちこちに散って行った。
『もっとガンツの事、調べてくるね!』
『ありがとう』
『フィリップはいつもお礼を言ってくれるから好き!』
フィリップが多くの仕事をこなせるのは、精霊達の協力があるから。
精霊達が離れたら自分を省みろ。そうガンツに教えられたフィリップは精霊達と共に過ごし、自分の本音を隠さず伝え続けた。
多少腹黒い事も民のためならやると精霊に伝えた時、フィリップは精霊が離れて行く覚悟をしていた。
精霊達が離れるなら、自分は間違っているのだから正さないと。そう思っていた。
だが、精霊達は正直に話したフィリップを気に入り、ますます懐くようになった。
こうして、精霊の加護を受けた腹黒王太子が誕生した。精霊達は、フィリップが苦しみながら仕事をしていると知っているから彼の為に情報を集める。
ガンツを見つけたのも精霊達だった。
国に入った瞬間、突然現れたフィリップを簡単に受け入れて大きくなったと豪快に笑うガンツは、以前と全く変わらなかった。
フィリップはホッとした。
彼なら、大切な妹を任せられる。
ガンツに恋人や婚約者、妻がいないと確認したフィリップは、求婚者の件を伏せて妹と戦って欲しいと頼んだ。
強さを求めるガンツはあっさりとフィリップの提案を受け入れ、この場に現れた。
挑戦者が求婚者になるなんて、ガンツは知らなかったのだ。
恩人相手に誠意がなかったかもしれないと眉を顰めたフィリップに、常に寄り添う風の精霊が問いかける。
『フィリップ、どうしたの?』
『ガンツを騙したみたいで、ちょっと心苦しい』
『正直に謝ったら、ガンツは笑って許してくれるよ』
『そうだな。後で謝るよ。これでシルビアは初恋の人と結婚できる。冒険者と王族が結婚するには、こうするしかないからな』
『でもガンツ、シルビアに勝てる?』
『勝つさ。彼はそういう男だ』
『1日しか会ってないのに』
『1日会えば充分だよ。シルビアはずっと、ガンツが好きだった。本人すら気付いていないけどな。あの子の心を捉えて離さないくらい、ガンツは魅力的だ。他の女性が彼の魅力に気が付かなくて良かったよ』
『ガンツはね、鈍いの。すぐフラフラどっか行っちゃうし、好きになった子もそのうち諦めるみたい』
『そうか……またどこかに行かれては困るな』
フィリップの心配事は、すぐに解決した。フィリップの謝罪をすぐに受け入れたガンツは真剣な顔で言った。
「頼む、騎士になる方法を教えてくれ!」
53
お気に入りに追加
262
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
【電子書籍発売に伴い作品引き上げ】私が妻でなくてもいいのでは?
キムラましゅろう
恋愛
夫には妻が二人いると言われている。
戸籍上の妻と仕事上の妻。
私は彼の姓を名乗り共に暮らす戸籍上の妻だけど、夫の側には常に仕事上の妻と呼ばれる女性副官がいた。
見合い結婚の私とは違い、副官である彼女は付き合いも長く多忙な夫と多くの時間を共有している。その胸に特別な恋情を抱いて。
一方私は新婚であるにも関わらず多忙な夫を支えながら節々で感じる女性副官のマウントと戦っていた。
だけどある時ふと思ってしまったのだ。
妻と揶揄される有能な女性が側にいるのなら、私が妻でなくてもいいのではないかと。
完全ご都合主義、ノーリアリティなお話です。
誤字脱字が罠のように点在します(断言)が、決して嫌がらせではございません(泣)
モヤモヤ案件ものですが、作者は元サヤ(大きな概念で)ハピエン作家です。
アンチ元サヤの方はそっ閉じをオススメいたします。
あとは自己責任でどうぞ♡
小説家になろうさんにも時差投稿します。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる