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改稿版
39-2 結婚式【第二部 完】
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「エルザ、おめでとう」
お姉様の作って下さったヴェールは、とても柔らかで、美しい赤い薔薇の花が刺繍してあります。
まるで、お姉様のようです。
「……お姉様……嬉しいです……!」
こんな日、来ないと思ってました。お姉様の結婚式は出られなかった。だけど、わたくしの結婚式はお姉様が一緒に居てくれる。更に、嬉しい参列者がたくさん来て下さっています。
リリィも、ジェラール様も来てくれました。他にも……。
「エルザが誰を呼んでも良いって言うからお父様達も来ているわ。会っても大丈夫?」
「ええ。もう何も怖い事はありませんわ。万が一お父様達の魔力が下がっても気にしません」
「強くなったわね。マックス様のおかげかしら」
「そうですね。マックスが居てくれるなら、誰に嫌われても構いません。勿論、お姉様達から嫌われる事なんてないと信じてますわ」
「エルザからそんな言葉が聞ける日が来るなんてね。王妃教育ばかりで、人に嫌われないようにと振る舞っていたエルザが……こんなに、自由に笑う日が来るなんて……本当におめでとう」
「ありがとうございます。今はお姉様が王妃様ですものね。大変でしょう?」
「確かに大変だけどエルザが王妃教育をしていた頃よりは、やりやすいわよ。クーデターが起きたから色々変わったのよ。それにね、わたくしはあの人の隣に居る為なら王妃でもなんでもやってやるわ」
「分かりますわ! わたくしも、マックスと一緒にいる為なら大抵の事は頑張れそうですもの! けど、マックスはわたくしのやりたい事もサポートしてくれるんですの」
「あら、わたくしの旦那様だってそうよ!」
姉妹で夫自慢をしていると、真っ赤な顔で照れている旦那様達が現れました。
「エルザ……式の前に恥ずかしさでどうにかなりそうだから手加減してくれ」
マックスと同じように顔の赤い国王陛下が、お姉様を連れて行きました。マックスは、わたくしのウエディングヴェールに花を飾ってくれました。
「ご両親と、お兄さんも来てる。連れて来たのは俺だけど……本当に大丈夫か?」
「ええ、せっかく結婚式をするんですから来たい方はみんな来て頂きたいですもの。みんなにマックスを自慢してやるんですわ」
「照れるから程々に頼む。あとな……シモン様も来てる。今は、ジェラールの侍従として姿を変えてるけど……本当に大丈夫か?」
シモン様達は、公開処刑されましたが皆様生きておられます。
お姉様達も手を尽くしたそうですが、今は国内の情勢を安定させる事が最優先でシモン様達に恩赦を与える事は出来ませんでした。庶民の不満を解消するには処刑するしかなく、伸ばしに伸ばした処刑の日がついに決まってしまいました。ジェラール様は散々悩まれて……マックスにひとつのお願いをしました。
「大丈夫よ。マックスとジェラール様は命の恩人なんだもの。さすがのシモン様もおとなしくしてるでしょ。命の恩人の結婚式で無礼な事をする人ではないわ」
マックスがわたくしの死を偽装した時に使った魔法。それを使い、シモン様達の偽物を作り出しました。そして、偽物を処刑させたのです。
処刑場の隅でマックスが魔法を使い偽物を動かしました。わたくしも見ておりましたが、喋れないだけで不自然なところは全くありませんでした。本当にシモン様達が処刑されたようでしたわ。聴衆は大喜びしておりました。偽物だと分かっていても、胸が苦しくなりました。
その後、シモン様達はジェラール様の国で顔と名前を変えて暮らしています。
「やっぱ、婚約者をしてたからそう思うのか?」
「んー……そうね。シモン様は傲慢だけど、受けた恩を忘れる人ではないわ」
「エルザに受けた恩は忘れてたみてぇだけどな」
「わたくしは婚約者だったから、身内として甘えが出ていたんだと思うわ」
「そうかよ」
ん……?
どうしたのでしょう。幸せな結婚式なのに、マックスが不機嫌です。
「マックス、どうしたの?」
「なんか、ムカつくんだよ。なぁ、シモン様より俺の方が好きだよな?」
「そりゃそうよ。わたくしは、マックスだけを愛してるわ。ねぇ、もしかしてマックスも嫉妬してくれたの?」
「みてぇだな。悪い、大事な式の前なのに。エルザが俺よりシモン様を選ぶなんて思ってねぇ。けど、なんかムカつく。エルザも、師匠の事を知った時こんな気持ちだったんだな」
「そうね。でも、わたくしはお師匠様の事を知れて良かったわ」
「200年以上生きてんのにエルザの方が大人だなぁ。情けねぇや」
「あら、年数なんて関係ないって言ったのはマックスよ」
「そうだったな。エルザ、これからもよろしくな。俺、どうやらエルザが居ねえと駄目みてぇだわ」
「わたくしもよ! おあいこね」
結婚式では、気まずそうにしている両親やお兄様、変装しているシモン様もいらっしゃいました。
親でも兄弟でもないと言われた時は悲しかった。けど、わたくしは生きる事に精一杯で……きちんと話をせず一方的に壁を作ってしまった。
シモン様の顔を見ても、怖いとは思わなくなりました。以前のように好きになる事はないし、嫌いになる事もない。
……けど、今日は。
「来てくれて、ありがとうございます」
素直にそう言えるのです。難しい事を考えるのはやめました。わたくしの特殊能力の事を知っているのはマックスとお姉様、ジェラール様とリリィ、それからシモン様だけ。勘づいている人はいるかもしれません。
けど、大丈夫。
わたくしの居場所を知っているのは、マックスだけ。
マックスは、隠れ家を時折移動しています。ジェラール様やお姉様に渡した転移の魔道具はもう使い物になりません。使っても、森の中に転移するだけです。
お姉様やジェラール様、リリィと話す事は出来ますが会う時はいつもわたくしが出向いています。
もしわたくしの特殊能力に気が付いた方がわたくしを狙っても、そもそも居場所を特定出来ないのだから大丈夫。しかも、マックスが常に大量の魔法をかけて守ってくれているのです。
お姉様曰く、わたくしの守りは大国の王族より強固だそうですわ。
そんな事を簡単にやってのけるマックスは、とっても凄いと思います。
マックスと会えて良かった。
平民となってからの日々は、楽しく、満たされておりました。そう思えたのも、マックスと会えたから。勿論、貴族と違い生活費の心配をする必要はあります。貴族として生きていた時は、お金を触る事すらありませんでした。家事は自分でする必要がありますし、時にはお金が不足して悩む事もあります。他にも、貴族の時とは違う苦労はありますわ。
けれど、隣に大好きな人が居てくれる。マックスが笑えば、わたくしも楽しい。それで良いんだと思えるのです。
これからもわたくしは、マックスと共に生きていきますわ。
お姉様の作って下さったヴェールは、とても柔らかで、美しい赤い薔薇の花が刺繍してあります。
まるで、お姉様のようです。
「……お姉様……嬉しいです……!」
こんな日、来ないと思ってました。お姉様の結婚式は出られなかった。だけど、わたくしの結婚式はお姉様が一緒に居てくれる。更に、嬉しい参列者がたくさん来て下さっています。
リリィも、ジェラール様も来てくれました。他にも……。
「エルザが誰を呼んでも良いって言うからお父様達も来ているわ。会っても大丈夫?」
「ええ。もう何も怖い事はありませんわ。万が一お父様達の魔力が下がっても気にしません」
「強くなったわね。マックス様のおかげかしら」
「そうですね。マックスが居てくれるなら、誰に嫌われても構いません。勿論、お姉様達から嫌われる事なんてないと信じてますわ」
「エルザからそんな言葉が聞ける日が来るなんてね。王妃教育ばかりで、人に嫌われないようにと振る舞っていたエルザが……こんなに、自由に笑う日が来るなんて……本当におめでとう」
「ありがとうございます。今はお姉様が王妃様ですものね。大変でしょう?」
「確かに大変だけどエルザが王妃教育をしていた頃よりは、やりやすいわよ。クーデターが起きたから色々変わったのよ。それにね、わたくしはあの人の隣に居る為なら王妃でもなんでもやってやるわ」
「分かりますわ! わたくしも、マックスと一緒にいる為なら大抵の事は頑張れそうですもの! けど、マックスはわたくしのやりたい事もサポートしてくれるんですの」
「あら、わたくしの旦那様だってそうよ!」
姉妹で夫自慢をしていると、真っ赤な顔で照れている旦那様達が現れました。
「エルザ……式の前に恥ずかしさでどうにかなりそうだから手加減してくれ」
マックスと同じように顔の赤い国王陛下が、お姉様を連れて行きました。マックスは、わたくしのウエディングヴェールに花を飾ってくれました。
「ご両親と、お兄さんも来てる。連れて来たのは俺だけど……本当に大丈夫か?」
「ええ、せっかく結婚式をするんですから来たい方はみんな来て頂きたいですもの。みんなにマックスを自慢してやるんですわ」
「照れるから程々に頼む。あとな……シモン様も来てる。今は、ジェラールの侍従として姿を変えてるけど……本当に大丈夫か?」
シモン様達は、公開処刑されましたが皆様生きておられます。
お姉様達も手を尽くしたそうですが、今は国内の情勢を安定させる事が最優先でシモン様達に恩赦を与える事は出来ませんでした。庶民の不満を解消するには処刑するしかなく、伸ばしに伸ばした処刑の日がついに決まってしまいました。ジェラール様は散々悩まれて……マックスにひとつのお願いをしました。
「大丈夫よ。マックスとジェラール様は命の恩人なんだもの。さすがのシモン様もおとなしくしてるでしょ。命の恩人の結婚式で無礼な事をする人ではないわ」
マックスがわたくしの死を偽装した時に使った魔法。それを使い、シモン様達の偽物を作り出しました。そして、偽物を処刑させたのです。
処刑場の隅でマックスが魔法を使い偽物を動かしました。わたくしも見ておりましたが、喋れないだけで不自然なところは全くありませんでした。本当にシモン様達が処刑されたようでしたわ。聴衆は大喜びしておりました。偽物だと分かっていても、胸が苦しくなりました。
その後、シモン様達はジェラール様の国で顔と名前を変えて暮らしています。
「やっぱ、婚約者をしてたからそう思うのか?」
「んー……そうね。シモン様は傲慢だけど、受けた恩を忘れる人ではないわ」
「エルザに受けた恩は忘れてたみてぇだけどな」
「わたくしは婚約者だったから、身内として甘えが出ていたんだと思うわ」
「そうかよ」
ん……?
どうしたのでしょう。幸せな結婚式なのに、マックスが不機嫌です。
「マックス、どうしたの?」
「なんか、ムカつくんだよ。なぁ、シモン様より俺の方が好きだよな?」
「そりゃそうよ。わたくしは、マックスだけを愛してるわ。ねぇ、もしかしてマックスも嫉妬してくれたの?」
「みてぇだな。悪い、大事な式の前なのに。エルザが俺よりシモン様を選ぶなんて思ってねぇ。けど、なんかムカつく。エルザも、師匠の事を知った時こんな気持ちだったんだな」
「そうね。でも、わたくしはお師匠様の事を知れて良かったわ」
「200年以上生きてんのにエルザの方が大人だなぁ。情けねぇや」
「あら、年数なんて関係ないって言ったのはマックスよ」
「そうだったな。エルザ、これからもよろしくな。俺、どうやらエルザが居ねえと駄目みてぇだわ」
「わたくしもよ! おあいこね」
結婚式では、気まずそうにしている両親やお兄様、変装しているシモン様もいらっしゃいました。
親でも兄弟でもないと言われた時は悲しかった。けど、わたくしは生きる事に精一杯で……きちんと話をせず一方的に壁を作ってしまった。
シモン様の顔を見ても、怖いとは思わなくなりました。以前のように好きになる事はないし、嫌いになる事もない。
……けど、今日は。
「来てくれて、ありがとうございます」
素直にそう言えるのです。難しい事を考えるのはやめました。わたくしの特殊能力の事を知っているのはマックスとお姉様、ジェラール様とリリィ、それからシモン様だけ。勘づいている人はいるかもしれません。
けど、大丈夫。
わたくしの居場所を知っているのは、マックスだけ。
マックスは、隠れ家を時折移動しています。ジェラール様やお姉様に渡した転移の魔道具はもう使い物になりません。使っても、森の中に転移するだけです。
お姉様やジェラール様、リリィと話す事は出来ますが会う時はいつもわたくしが出向いています。
もしわたくしの特殊能力に気が付いた方がわたくしを狙っても、そもそも居場所を特定出来ないのだから大丈夫。しかも、マックスが常に大量の魔法をかけて守ってくれているのです。
お姉様曰く、わたくしの守りは大国の王族より強固だそうですわ。
そんな事を簡単にやってのけるマックスは、とっても凄いと思います。
マックスと会えて良かった。
平民となってからの日々は、楽しく、満たされておりました。そう思えたのも、マックスと会えたから。勿論、貴族と違い生活費の心配をする必要はあります。貴族として生きていた時は、お金を触る事すらありませんでした。家事は自分でする必要がありますし、時にはお金が不足して悩む事もあります。他にも、貴族の時とは違う苦労はありますわ。
けれど、隣に大好きな人が居てくれる。マックスが笑えば、わたくしも楽しい。それで良いんだと思えるのです。
これからもわたくしは、マックスと共に生きていきますわ。
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