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書籍発売御礼 エリザベスとイアンの出会い

4.お荷物とは思わない【エリザベス視点】

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急いで休憩室にお連れしました。庭園から直接入れる休憩室が空いていて助かりましたわ。幸い、休憩室に貴族の方はおられませんでした。控えている使用人の方が数名いらっしゃいましたので、ブロンテ侯爵の関係者へ渡すようにと手紙を託しました。手紙には、休憩室の番号とリリアン様をお預かりしていると記載しました。30分探して見つからなければブロンテ侯爵家に直接届けるようにと指示して多めにお金を渡します。ブロンテ侯爵家はお城の近くにお屋敷があったと記憶しておりますので、いざとなれば直接歩いて届けて頂きます。そうすれば会が終わる前には確実に迎えが来るでしょう。

その後、すぐにリリアン様のお化粧を直しました。

「さ、これで大丈夫ですわ。リリアン様は肌が美しいので、薄化粧の方が素敵ですわ」

「……これ、わたくしですか?」

「ええ。素顔でも充分可愛らしいので、涙の跡だけ隠しました。とっても素敵です」

「子どもっぽいんじゃないかしら?」

「可憐でお美しいです。無理して濃い化粧をする必要はありません。肌に負担をかけると、リリアン様の絹のような美しい肌が荒れてしまいますわ」

「それは、嫌ね」

「そうでしょう? リリアン様のお肌が荒れては、お兄様も心配なさいますわ」

「……そうよね。お兄様はいつも優しくて……わたくしの事を大事にして下さるわ。だから、わたくしはお兄様にとってお荷物なの」

なるほど、お兄様がリリアン様を冷遇しているのかと思いましたがそうではないのですね。それなら話は簡単ですわ。

「わたくしも、妹がおりますわ。妹が困った事をする事も多いですけど、お荷物とは思いません」

「どうしてよ?」

「妹ですもの」

ドロシーは両親に甘やかされて我儘に育っておりますが、先日から家庭教師の先生がついて学んでおります。甘えっ子のドロシーも、学べば変わるでしょう。本当は、ポールの家庭教師をお願いしたかったのですが両親はわたくしとポールにお金をかけようとはしません。だから、ポールの家庭教師代を稼いでいる最中です。

親に呆れる事は多いですけど、ドロシーの事は心配しております。折に触れドロシーと話をするのですが、どうやら両親の教育のせいでわたくしを疎んじているようです。わたくしが声をかけると、うるさいとすぐ逃げてしまいゆっくり話せません。

ドロシーと仲良く出来ると良いなと思っているのですが、なかなか上手くいきません。ケネス様も、最近はドロシーの事を気にして下さっているようですから、いつかドロシーと仲良く話せる日が来ると良いなと願っておりますわ。

「……そんなもの?」

「ええ、そんなものです」

拗ねていたリリアン様の顔が少し明るくなりました。ホッとしていると、休憩室のドアが乱暴に開かれました。
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