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辺境伯夫人は頑張ります
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「それで、あの王子は何をしたんだ?」
茶会の様子を説明すると、フレッドはどんどん不機嫌になってしまった。でも、予想通りだから大丈夫。
「少し手に触れられただけよ。フレッドの自慢話をしたらすぐに離して頂けたわ」
「……え、オレの自慢話?」
「ええ! フレッドの素晴らしさをたくさんアピールしておいたわ!」
「何を言ったんだ?」
どんな話をしたか説明すると、フレッドのお顔がみるみる赤く染まる。何度見ても可愛らしいわ。
「フレッド、可愛いわ」
「オレを可愛いなんて言うのは、シャーリーだけだ」
「だって本当に可愛いんだもの! フレッド……ずっと会いたかったわ。本当はすごく寂しかったの。お願い、いっぱい抱きしめて」
「ああ、オレも寂しかった。シャーリー、愛してる」
たくさん抱きしめて貰って、ようやく気持ちが落ち着いた。フレッドはそのままわたくしを寝室に運ぼうとしたけど、その前にきちんと伝えておかないと。
「あのね、あちらの兵士が痩せていたのはやっぱり昨年の飢饉のせいだと思うの。備蓄があった我が国は大丈夫だったけど、あちらは違うみたい」
「うちは後3年は大丈夫だが、他所は違うという事か」
「そう、国が違えば常識も変わるわ。これ、分かる範囲で調べてきたの。あちらの常識を知っておいた方が良いと思って」
「ありがとう、さすがシャーリーだ。早めに頭に入れた方が良さそうだな。悪いが、少し時間を貰えるか?」
「ええ、お茶を淹れる?」
「いや、深夜だから要らない。すぐに読むから、シャーリーはここに居てくれるか?」
「え、ここに?」
「ああ、ここだ」
さっきから、フレッドの腕に包まれて動けないんだけど……?
「分かったわ」
「嫌か?」
「そんな訳ないでしょ? ずっとこうしたかったの。フレッドの腕の中に居るととっても暖かくて幸せなの。だけど、安心し過ぎて眠くなってしまって……」
「深夜だからな。大丈夫、眠ったらちゃんと運ぶから」
「……やだ、せっかくフレッドが帰って来たんだから、もっとお話ししたいわ……」
既に瞼が重くなっているとは言えず、誤魔化すようにフレッドに擦り寄った。
それに、もっとたくさん触れ合いたい。
正直、ハンス様に馴れ馴れしく触れられたのはとても嫌だった。フレッドと触れ合って、わたくしはフレッドの妻だと感じたい。
だけど、そんなはしたない事……言えない。
「シャーリー、どうしたんだ? もうすぐ読み終わるが、先に寝るか?」
「や……待ってるから……一緒に……いたいの……」
精一杯のお誘いだったが、フレッドは優しく頭を撫でてくれるだけ。
「可愛い……早く帰って来て良かった。腕枕してあげるよ。待ってて、すぐに読むから。……はぁ、読めば読むほどふざけているな。こんな運営で国家が成り立つと思っているのか……無能な商会より酷いではないか」
「わたくし、自国の事ばかり勉強していた事を反省したわ。他国の事を調べて、初めて自分達がどれだけ恵まれてるか実感したわ。うちの両親ですら、規定通りきっちり備蓄をしていた。不正がないように、毎年調査されていた。だから民は飢えずに、生きていける。辺境なんだから、もっと接する国の内部事情も調べるべきだったわ。そうすれば、切羽詰まっていて攻めてくるかもしれないと予想出来た」
「突然だったからオレも予想なんて出来てなかった。けど確かに、そういった事を予想出来れば兵の被害も少なくて済むな。守りを固めるばかりでなく、こちらから攻める事も必要か。よし、早速明日から検討しよう。シャーリーは凄いな。たくさん調べてくれて、ありがとう。ご褒美、欲しいかい?」
わたくしの気持ちは、フレッドに筒抜けだった。耳元で囁かれると、頭がぼうっとしてフレッドの事しか考えられなくなってしまう。
「……欲しいわ。いっぱい欲しい」
うわ言のように呟くと、フレッドがニヤリと笑った。ああもう、かっこよすぎて直視出来ないわ。
「疲れてるんじゃないの?」
わざと焦らそうとするなんて、なんて意地悪なの。だけどそんなフレッドが愛おしい。
「フレッドの方が疲れてるでしょう?」
「ああ、だから癒してくれるかい」
「……喜んで」
茶会の様子を説明すると、フレッドはどんどん不機嫌になってしまった。でも、予想通りだから大丈夫。
「少し手に触れられただけよ。フレッドの自慢話をしたらすぐに離して頂けたわ」
「……え、オレの自慢話?」
「ええ! フレッドの素晴らしさをたくさんアピールしておいたわ!」
「何を言ったんだ?」
どんな話をしたか説明すると、フレッドのお顔がみるみる赤く染まる。何度見ても可愛らしいわ。
「フレッド、可愛いわ」
「オレを可愛いなんて言うのは、シャーリーだけだ」
「だって本当に可愛いんだもの! フレッド……ずっと会いたかったわ。本当はすごく寂しかったの。お願い、いっぱい抱きしめて」
「ああ、オレも寂しかった。シャーリー、愛してる」
たくさん抱きしめて貰って、ようやく気持ちが落ち着いた。フレッドはそのままわたくしを寝室に運ぼうとしたけど、その前にきちんと伝えておかないと。
「あのね、あちらの兵士が痩せていたのはやっぱり昨年の飢饉のせいだと思うの。備蓄があった我が国は大丈夫だったけど、あちらは違うみたい」
「うちは後3年は大丈夫だが、他所は違うという事か」
「そう、国が違えば常識も変わるわ。これ、分かる範囲で調べてきたの。あちらの常識を知っておいた方が良いと思って」
「ありがとう、さすがシャーリーだ。早めに頭に入れた方が良さそうだな。悪いが、少し時間を貰えるか?」
「ええ、お茶を淹れる?」
「いや、深夜だから要らない。すぐに読むから、シャーリーはここに居てくれるか?」
「え、ここに?」
「ああ、ここだ」
さっきから、フレッドの腕に包まれて動けないんだけど……?
「分かったわ」
「嫌か?」
「そんな訳ないでしょ? ずっとこうしたかったの。フレッドの腕の中に居るととっても暖かくて幸せなの。だけど、安心し過ぎて眠くなってしまって……」
「深夜だからな。大丈夫、眠ったらちゃんと運ぶから」
「……やだ、せっかくフレッドが帰って来たんだから、もっとお話ししたいわ……」
既に瞼が重くなっているとは言えず、誤魔化すようにフレッドに擦り寄った。
それに、もっとたくさん触れ合いたい。
正直、ハンス様に馴れ馴れしく触れられたのはとても嫌だった。フレッドと触れ合って、わたくしはフレッドの妻だと感じたい。
だけど、そんなはしたない事……言えない。
「シャーリー、どうしたんだ? もうすぐ読み終わるが、先に寝るか?」
「や……待ってるから……一緒に……いたいの……」
精一杯のお誘いだったが、フレッドは優しく頭を撫でてくれるだけ。
「可愛い……早く帰って来て良かった。腕枕してあげるよ。待ってて、すぐに読むから。……はぁ、読めば読むほどふざけているな。こんな運営で国家が成り立つと思っているのか……無能な商会より酷いではないか」
「わたくし、自国の事ばかり勉強していた事を反省したわ。他国の事を調べて、初めて自分達がどれだけ恵まれてるか実感したわ。うちの両親ですら、規定通りきっちり備蓄をしていた。不正がないように、毎年調査されていた。だから民は飢えずに、生きていける。辺境なんだから、もっと接する国の内部事情も調べるべきだったわ。そうすれば、切羽詰まっていて攻めてくるかもしれないと予想出来た」
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わたくしの気持ちは、フレッドに筒抜けだった。耳元で囁かれると、頭がぼうっとしてフレッドの事しか考えられなくなってしまう。
「……欲しいわ。いっぱい欲しい」
うわ言のように呟くと、フレッドがニヤリと笑った。ああもう、かっこよすぎて直視出来ないわ。
「疲れてるんじゃないの?」
わざと焦らそうとするなんて、なんて意地悪なの。だけどそんなフレッドが愛おしい。
「フレッドの方が疲れてるでしょう?」
「ああ、だから癒してくれるかい」
「……喜んで」
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