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第十三話【カルロ視点】
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「団長、こんな時間にどうされましたか? 緊急の仕事ですかな?」
「ダミラノ伯爵、今日は仕事の話ではないのです」
「おや? そうなのですか? こんな時間にいらっしゃるから、てっきり緊急の仕事かと思いましたぞ。わざわざ私を敬称で呼ぶという事は、伯爵家当主である私に御用ですかな?」
怒ってる……やべぇ、やっぱり団長は怖え。あぁ、今はオレが団長だった。やっぱり慣れねえな。兄上に急かされて勢いで来ちまったけど、普通こんな時間に訪ねない。何やってんだオレは……。
けど、シルヴィアを狙ってる男は多いと兄上がけしかけるから、焦って来てしまった。
応接室に入れて貰えただけ奇跡だと思う。
「非常識な時間に訪問して申し訳ありません」
「いえいえ、団長がこんな時間に来るなんてよほど大事な用に違いありませんからな。なにせ、我が騎士団の団長は、清廉潔白なお方ですから」
圧が……圧が凄い。普段はオレを団長として立ててくれているが、本当はダミラノさんが騎士団長だったんだ。近衞騎士なんてもんができたせいでオレが騎士団長になってしまっただけ。団長はオレだからと、いつもオレを立ててくれるが、今はその気遣いが圧になってる。やっぱりこの人怖えよ。
近衞騎士は、必ず既婚者と決まっている。ダミラノさんは妻が他界しているから正確には違うのだが、成人になる子も居るし、厄介な仕事である近衞騎士を纏められるのは彼だけだった。
近衞騎士の仕事は、王族の護衛。庭師と王女様がキスして結ばれてから、近衞騎士が出来た。
キスしたら結婚って、色々問題あると思うんだけどなぁ。王女様は、自分からキスしたらしいけど。
お固いのも考えもんだよな。前例が出来ちまったせいで、強引なキスでも結婚できるって思う馬鹿が出てきた。特に、肉食系のお嬢様が王太子殿下を狙い始めちまった。王太子殿下は、婚約者がいるっつうのに。
未婚の騎士だと、そのまま肉食系のお嬢様に食われちまったら困るからと、近衞騎士は全員既婚者だ。既婚者に強引にキスしても、結ばれる訳じゃねぇからな。ふしだらな女性って事になって、結婚できなくなるだけだ。
既婚者で実力がある奴は全員近衞騎士になった。残った奴らでいちばん強かったオレが騎士団長になったが、最初はものすごくやりにくかった。
だけど、ダミラノさんがオレを団長として立ててくれたから騎士団は以前のように、まとまることが出来た。
そんな恩人と言える人の娘さんに婚約の打診……。ハードル高すぎんだろ。
緊張しすぎて胃が痛い。
今日のシルヴィアは、ものすごく美しかった。凛としていて、理不尽な事言われてんのに綺麗な顔して笑ってた。見惚れてた奴もいっぱいいた。ぼんやりしてたら他の男がすぐ婚約の申し込みに来るに決まってる。
だから、急いで来たんだが……。せ、清廉潔白……。胃が更にズシリと痛む……。
「おや? どうされました? 体調でも悪いのですかな?」
「いや、体調は万全です。その、評価を裏切るようで申し訳ないのですが、今日の私は、清廉潔白ではありませんでした。完全に私情で動いていました。申し訳ありません」
「私情ですか? どのような事をなさったのですかな?」
「王太子殿下の行動は、私がご相談をしたからです。書類の提出も、提出前に伯爵のご許可は頂きましたが、私がでしゃばる事ではありませんでした」
「王太子殿下はずいぶん協力的だと思いましたが、やはり団長の仕業でしたか。我々に有利に事が進みすぎだと思っておりました」
「本当に勝手な事をしました」
「理由をお聞かせ願えますか?」
「はい。私は、シルヴィア様に好意を抱いております。シルヴィア様がアルベルト様と良好な関係であればこのような事はしませんでした。ですが、シルヴィア様が婚約破棄を望んでおられるなら私にもチャンスがあると思いました。確実に婚約破棄をして欲しい。そのために友人である王太子殿下にご協力願いました。申し訳ありません」
「今日の事は我々も助かりましたから問題ありません。団長がシルヴィアに不利な事をする訳ありませんからな」
その信頼が、今は重い……。
「ダミラノ伯爵、どうか、シルヴィア様に婚約を申し込む許可を頂けないでしょうか? 私はシルヴィア様を大切にして、生涯守り抜くと誓います。もちろん、アルベルト様のように不誠実な事はしません」
コンコンッ……。
このタイミングでなんだ?!
「おや、ずいぶん早かったね。シルヴィア、団長がシルヴィアに話があるそうだよ。聞いてあげてくれるかい?」
「わかりました! わたくしもカルロ様にお会いしたかったんです」
し、し、シルヴィア?! 何故?!
なんで黄色と緑のドレスなんだ?! それは、オレの髪の色と瞳の色……。可愛い。思考が纏まらない。シルヴィアの側でダミラノ伯爵は笑ってる。
はぁ……やっぱりこの人は、すげぇ。オレの下心なんて、全部お見通しで試されてたのか。
「ダミラノ伯爵、今日は仕事の話ではないのです」
「おや? そうなのですか? こんな時間にいらっしゃるから、てっきり緊急の仕事かと思いましたぞ。わざわざ私を敬称で呼ぶという事は、伯爵家当主である私に御用ですかな?」
怒ってる……やべぇ、やっぱり団長は怖え。あぁ、今はオレが団長だった。やっぱり慣れねえな。兄上に急かされて勢いで来ちまったけど、普通こんな時間に訪ねない。何やってんだオレは……。
けど、シルヴィアを狙ってる男は多いと兄上がけしかけるから、焦って来てしまった。
応接室に入れて貰えただけ奇跡だと思う。
「非常識な時間に訪問して申し訳ありません」
「いえいえ、団長がこんな時間に来るなんてよほど大事な用に違いありませんからな。なにせ、我が騎士団の団長は、清廉潔白なお方ですから」
圧が……圧が凄い。普段はオレを団長として立ててくれているが、本当はダミラノさんが騎士団長だったんだ。近衞騎士なんてもんができたせいでオレが騎士団長になってしまっただけ。団長はオレだからと、いつもオレを立ててくれるが、今はその気遣いが圧になってる。やっぱりこの人怖えよ。
近衞騎士は、必ず既婚者と決まっている。ダミラノさんは妻が他界しているから正確には違うのだが、成人になる子も居るし、厄介な仕事である近衞騎士を纏められるのは彼だけだった。
近衞騎士の仕事は、王族の護衛。庭師と王女様がキスして結ばれてから、近衞騎士が出来た。
キスしたら結婚って、色々問題あると思うんだけどなぁ。王女様は、自分からキスしたらしいけど。
お固いのも考えもんだよな。前例が出来ちまったせいで、強引なキスでも結婚できるって思う馬鹿が出てきた。特に、肉食系のお嬢様が王太子殿下を狙い始めちまった。王太子殿下は、婚約者がいるっつうのに。
未婚の騎士だと、そのまま肉食系のお嬢様に食われちまったら困るからと、近衞騎士は全員既婚者だ。既婚者に強引にキスしても、結ばれる訳じゃねぇからな。ふしだらな女性って事になって、結婚できなくなるだけだ。
既婚者で実力がある奴は全員近衞騎士になった。残った奴らでいちばん強かったオレが騎士団長になったが、最初はものすごくやりにくかった。
だけど、ダミラノさんがオレを団長として立ててくれたから騎士団は以前のように、まとまることが出来た。
そんな恩人と言える人の娘さんに婚約の打診……。ハードル高すぎんだろ。
緊張しすぎて胃が痛い。
今日のシルヴィアは、ものすごく美しかった。凛としていて、理不尽な事言われてんのに綺麗な顔して笑ってた。見惚れてた奴もいっぱいいた。ぼんやりしてたら他の男がすぐ婚約の申し込みに来るに決まってる。
だから、急いで来たんだが……。せ、清廉潔白……。胃が更にズシリと痛む……。
「おや? どうされました? 体調でも悪いのですかな?」
「いや、体調は万全です。その、評価を裏切るようで申し訳ないのですが、今日の私は、清廉潔白ではありませんでした。完全に私情で動いていました。申し訳ありません」
「私情ですか? どのような事をなさったのですかな?」
「王太子殿下の行動は、私がご相談をしたからです。書類の提出も、提出前に伯爵のご許可は頂きましたが、私がでしゃばる事ではありませんでした」
「王太子殿下はずいぶん協力的だと思いましたが、やはり団長の仕業でしたか。我々に有利に事が進みすぎだと思っておりました」
「本当に勝手な事をしました」
「理由をお聞かせ願えますか?」
「はい。私は、シルヴィア様に好意を抱いております。シルヴィア様がアルベルト様と良好な関係であればこのような事はしませんでした。ですが、シルヴィア様が婚約破棄を望んでおられるなら私にもチャンスがあると思いました。確実に婚約破棄をして欲しい。そのために友人である王太子殿下にご協力願いました。申し訳ありません」
「今日の事は我々も助かりましたから問題ありません。団長がシルヴィアに不利な事をする訳ありませんからな」
その信頼が、今は重い……。
「ダミラノ伯爵、どうか、シルヴィア様に婚約を申し込む許可を頂けないでしょうか? 私はシルヴィア様を大切にして、生涯守り抜くと誓います。もちろん、アルベルト様のように不誠実な事はしません」
コンコンッ……。
このタイミングでなんだ?!
「おや、ずいぶん早かったね。シルヴィア、団長がシルヴィアに話があるそうだよ。聞いてあげてくれるかい?」
「わかりました! わたくしもカルロ様にお会いしたかったんです」
し、し、シルヴィア?! 何故?!
なんで黄色と緑のドレスなんだ?! それは、オレの髪の色と瞳の色……。可愛い。思考が纏まらない。シルヴィアの側でダミラノ伯爵は笑ってる。
はぁ……やっぱりこの人は、すげぇ。オレの下心なんて、全部お見通しで試されてたのか。
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