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第六話

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あれから、何食わぬ顔でアルベルトの手伝いをしながら、騎士団に入る為に鍛錬を増やしましたわ。

婚約者の語らいは当然なくなりました。

アルベルトの実家から問い合わせが来ましたので、アルベルトはサブリナ様と結婚なさると聞きました。既に熱い口付けを交わされたのでしょう? とお伝えしましておきました。

何度か問い合わせが来ておりますが、全てお父様が対応して下さっています。

学園でも、アルベルトの手伝いはしますが口は一切利きません。

すると、生徒会室でわたくしが仕事をしているというのに、アルベルトとサブリナ様がいちゃつくようになりました。何度もキスをしております。

おかげで、わたくしすっかりキスに慣れましたわ。これで、騎士団に入って巡回の仕事がきても大丈夫です。

それにしても、アルベルトはおバカだからでしょうけど、侯爵家の養女になられる程優秀な筈なのに、サブリナ様の貞操観念はどうなっていらっしゃるのかしら?

一度注意しましたが、婚約者に相手にされないからって嫉妬しないでとか訳の分からない事を言われました。アルベルトが、誰とキスしようが、それ以上の事をしようが、嫉妬なんてありえませんわ。

騎士になった時の練習台になって下さってるのはありがたいですけどね。

最初は少し元気がなくなっていましたが、毎日騎士団の鍛錬に混ざっていたら元気になってきました。夕方はアルベルトの尻拭いがありますので、早朝訓練に参加させて頂いています。

わたくしが騎士になりたい気持ちが本気だと伝わったのか、カルロ様はよく模擬戦をして下さいます。だけどやっぱり勝てませんの。悔しいですわ。

「アルベルトは、そんだけいちゃついてりゃ、証人とか取れねえのか? なんで婚約破棄を待たなきゃいけねえんだよ」

「それが、何度か教師を呼んだのですが、わたくしがいちゃもんをつけていると言われてしまいまして。今すぐ婚約破棄しましょうかって言っても、夜会はまだ先だ、働けってアルベルトは言いますの。卒業までわたくしを働かせたいみたいですわね」

「クズだな」

「サブリナ様も、お会いした時からわたくしに仕事を押しつけてきましたしお仕事出来ないのでしょうね。アルベルトの仕事だと押し付けてきましたが、明らかに生徒会長の仕事でしたので抗議したら、わたくしが孤立しましたの。今では生徒会の仕事をしてるからなんとか学園に置いてやってるんだって言われます」

「要は、サブリナ嬢の功績も嘘っぱちか。そこまで言われても、学園を辞められねぇのが、つらいよな」

貴族は、学園を卒業しないと成人と認められないのです。学園はいくつもありますから、転園する方も居ますが、婚約者が同世代なら必ず同じ学園に通わねばなりません。わたくしに、転園する選択肢はないのですわ。

「それも明日までですわ! 明日は卒業式の後卒業パーティーです! やっと、婚約破棄出来ますわ!」

「サブリナ嬢は、夜会でキスする事の重要性を分かってんのか?」

「一度、確認しましたところ、夜会でみんなの前でキスするだけでアンタから婚約破棄してくれるのね。ふん、夜会だけじゃなくて今もキスを見せてあげるわと言われて、激しいキスシーンを目撃させられましたわ……」

「どんな教育してんだよ……引くわ」

「引きますわよね! わたくしも心から引きました! あんな男を引き取ってくれるんだから、我慢しようと思っておりましたけど、サブリナ様もだいぶおかしいですわ!」

「そんなキスシーン見せられたら、自分達がお固いんじゃないかって思っちまうな」

「正直、キスなんて大した事ないのかしらって思いましたわ」

「んじゃ、オレとキスするか?」

「からかうのもいい加減にして下さいまし!」

最近、カルロ様はこんな冗談をよく仰います。最初は真っ赤になっていましたが、おそらくわたくしが騎士になった時に動揺しないよう、鍛えて下さっているんでしょう。

カルロ様の優しさに報いる為にも、わたくし必ず騎士になりますわ!
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