29 / 48
29.ライアンの心
しおりを挟む
ライアンは、ジーナの部屋をノックしたが全く返事がなかった。
「いないのかな?」
「彼女には監視が付いています。部屋を出たとの報告はありません」
「……ならなんで返事しないの?」
「分かりません」
「ああもう! 早くしないと兄様の授業が終わっちゃう! ジーナ! 居る?! ねえってば!」
「あまり大声を出すとケネス殿下に気付かれますよ」
「もう……あれ? 鍵開いてる……」
「いくら王子でも、女性の部屋に無断侵入するのはどうかと思います」
「ちょっとだけ! ほら、倒れてたりするかもしれないし!」
「言い訳するくらいなら堂々と入られてはいかがですか? 王子である自分が呼んでるのに来ないとは何事だ! とか言えばジーナ様なら謝罪すると思いますよ。純真な令嬢を弄ぶ、さすがライアン殿下です」
「……さっきから僕への当たりがキツくない?」
「最初に八つ当たりしたのはライアン殿下でしょう。もう開けてしまったのですから、さっさと入りましょう」
「分かったよ。なんか納得できないけど、時間もないし入ろう」
ライアンが部屋に入ると、部屋の隅でジーナは本を読み耽っていた。
「ジーナ! ジーナ!」
呼びかけても、集中しているジーナは全く返事をしない。仕方なく、ライアンはジーナの顎に手をかけ無理矢理顔を上げさせた。
「ジーナ・オブ・ケニオン、返事をしろ」
「きゃ! え……そのお声はライアン殿下?! し、失礼致しました!」
慌てて本を閉じて、ジーナは起立した。
「何度も呼んだが、返事がないので入らせてもらった」
「申し訳ありません! 本に夢中で、全く気が付いていませんでした!」
「ふん、いい身分だな。何を読んでいたんだ?」
「ケネス殿下に薦めて頂いた本なのですが、どれも興味深くて……」
「詳細は良い。お前に話がある。手短に言うぞ、何を企んでいる?」
「何を……? と申しますと?」
全く分かっていない様子のジーナにイライラしたライアンは、大声で怒鳴りつけた。
「なんで兄様に近づいたんだよ! 兄様も、ジーナだけは信用してる。どんな手を使った!」
「……ちょっと落ち着きましょうか。初めまして、ジーナ様。ライアン殿下の侍従をしております、デューク・グラハム・コーと申します」
「もしかして、コー伯爵のご子息ですか?」
「はい。ライアン殿下とは乳兄弟です。現在は侍従としてお仕えしております」
「そうでしたか。はじめまして、ジーナ・オブ・ケニオンと申します。妹からお話は伺っておりますわ」
「ニコラ様とは、何度か夜会で踊らせて頂きましたからね。お噂通り、お優しい天使のような方でしたよ」
「妹をお褒め頂き、嬉しいですわ。ありがとうございます」
「おい、聞いてないぞ」
「今は情報が要らないと仰ったのは、ライアン殿下でしたよね?」
「……ちっ」
「おやおや、王子ともあろうお方が令嬢の前で舌打ちですか。みっともないですねぇ」
「うるさい!」
「あ……あの……」
「ああ、失礼しました。ほら、ちゃんと冷静に話して下さいよ。ライアン殿下は、だーい好きなケネス殿下の信頼をあっさり得たジーナ様が妬ましくてしょうがないんです」
「そんな事はっ……」
「あるでしょう? いつもの冷静さは何処へ行ってしまわれたのですか。いつものライアン殿下なら、ちゃんと私の話を最後まで聞いて下さいますよね?」
「う……それは……」
「ジーナ様が本当にケネス殿下に忠誠を誓っているのか不安なのは分かりますけどね、薦められた本をこれだけ夢中で読んでるんですから信じましょうよ。ってか、本当はとっくに分かってましたよね? 認めたくないだけで」
「……だって……僕のせいで……」
「あーもう! 帰るぞ! ジーナ様、失礼します。本日のお詫びはまた後日伺いますので、今日来た事はケネス殿下に内緒にして頂けませんか?」
「それがケネス殿下の為なら構いませんが、そうでないのなら全てご報告します。きちんと理由を述べて下さい」
「……厳しいっすねー……。おい、ライアン、しっかりしてくれよ」
「……だって……僕が……」
明らかにおかしな様子のライアンに、どう声をかけて良いか分からないジーナは、唯一理解出来た事を問うた。
「あ、あの、ライアン殿下は、とてもケネス殿下の事を大事に思われていらっしゃるのですよね?」
ジーナの質問は、ライアンの急所を突いた。ライアンはジーナの胸ぐらを掴み、叫ぶ。
「そうだよ! お前なんかよりずーと前から、僕は兄様が大好きなんだ!!!」
「やめろ、馬鹿」
デュークがライアンを引き剥がすと、騒ぎを聞きつけたケネスが部屋に飛び込んで来た。
「いないのかな?」
「彼女には監視が付いています。部屋を出たとの報告はありません」
「……ならなんで返事しないの?」
「分かりません」
「ああもう! 早くしないと兄様の授業が終わっちゃう! ジーナ! 居る?! ねえってば!」
「あまり大声を出すとケネス殿下に気付かれますよ」
「もう……あれ? 鍵開いてる……」
「いくら王子でも、女性の部屋に無断侵入するのはどうかと思います」
「ちょっとだけ! ほら、倒れてたりするかもしれないし!」
「言い訳するくらいなら堂々と入られてはいかがですか? 王子である自分が呼んでるのに来ないとは何事だ! とか言えばジーナ様なら謝罪すると思いますよ。純真な令嬢を弄ぶ、さすがライアン殿下です」
「……さっきから僕への当たりがキツくない?」
「最初に八つ当たりしたのはライアン殿下でしょう。もう開けてしまったのですから、さっさと入りましょう」
「分かったよ。なんか納得できないけど、時間もないし入ろう」
ライアンが部屋に入ると、部屋の隅でジーナは本を読み耽っていた。
「ジーナ! ジーナ!」
呼びかけても、集中しているジーナは全く返事をしない。仕方なく、ライアンはジーナの顎に手をかけ無理矢理顔を上げさせた。
「ジーナ・オブ・ケニオン、返事をしろ」
「きゃ! え……そのお声はライアン殿下?! し、失礼致しました!」
慌てて本を閉じて、ジーナは起立した。
「何度も呼んだが、返事がないので入らせてもらった」
「申し訳ありません! 本に夢中で、全く気が付いていませんでした!」
「ふん、いい身分だな。何を読んでいたんだ?」
「ケネス殿下に薦めて頂いた本なのですが、どれも興味深くて……」
「詳細は良い。お前に話がある。手短に言うぞ、何を企んでいる?」
「何を……? と申しますと?」
全く分かっていない様子のジーナにイライラしたライアンは、大声で怒鳴りつけた。
「なんで兄様に近づいたんだよ! 兄様も、ジーナだけは信用してる。どんな手を使った!」
「……ちょっと落ち着きましょうか。初めまして、ジーナ様。ライアン殿下の侍従をしております、デューク・グラハム・コーと申します」
「もしかして、コー伯爵のご子息ですか?」
「はい。ライアン殿下とは乳兄弟です。現在は侍従としてお仕えしております」
「そうでしたか。はじめまして、ジーナ・オブ・ケニオンと申します。妹からお話は伺っておりますわ」
「ニコラ様とは、何度か夜会で踊らせて頂きましたからね。お噂通り、お優しい天使のような方でしたよ」
「妹をお褒め頂き、嬉しいですわ。ありがとうございます」
「おい、聞いてないぞ」
「今は情報が要らないと仰ったのは、ライアン殿下でしたよね?」
「……ちっ」
「おやおや、王子ともあろうお方が令嬢の前で舌打ちですか。みっともないですねぇ」
「うるさい!」
「あ……あの……」
「ああ、失礼しました。ほら、ちゃんと冷静に話して下さいよ。ライアン殿下は、だーい好きなケネス殿下の信頼をあっさり得たジーナ様が妬ましくてしょうがないんです」
「そんな事はっ……」
「あるでしょう? いつもの冷静さは何処へ行ってしまわれたのですか。いつものライアン殿下なら、ちゃんと私の話を最後まで聞いて下さいますよね?」
「う……それは……」
「ジーナ様が本当にケネス殿下に忠誠を誓っているのか不安なのは分かりますけどね、薦められた本をこれだけ夢中で読んでるんですから信じましょうよ。ってか、本当はとっくに分かってましたよね? 認めたくないだけで」
「……だって……僕のせいで……」
「あーもう! 帰るぞ! ジーナ様、失礼します。本日のお詫びはまた後日伺いますので、今日来た事はケネス殿下に内緒にして頂けませんか?」
「それがケネス殿下の為なら構いませんが、そうでないのなら全てご報告します。きちんと理由を述べて下さい」
「……厳しいっすねー……。おい、ライアン、しっかりしてくれよ」
「……だって……僕が……」
明らかにおかしな様子のライアンに、どう声をかけて良いか分からないジーナは、唯一理解出来た事を問うた。
「あ、あの、ライアン殿下は、とてもケネス殿下の事を大事に思われていらっしゃるのですよね?」
ジーナの質問は、ライアンの急所を突いた。ライアンはジーナの胸ぐらを掴み、叫ぶ。
「そうだよ! お前なんかよりずーと前から、僕は兄様が大好きなんだ!!!」
「やめろ、馬鹿」
デュークがライアンを引き剥がすと、騒ぎを聞きつけたケネスが部屋に飛び込んで来た。
1
お気に入りに追加
734
あなたにおすすめの小説
お飾り王妃の受難〜陛下からの溺愛?!ちょっと意味がわからないのですが〜
湊未来
恋愛
王に見捨てられた王妃。それが、貴族社会の認識だった。
二脚並べられた玉座に座る王と王妃は、微笑み合う事も、会話を交わす事もなければ、目を合わす事すらしない。そんな二人の様子に王妃ティアナは、いつしか『お飾り王妃』と呼ばれるようになっていた。
そんな中、暗躍する貴族達。彼らの行動は徐々にエスカレートして行き、王妃が参加する夜会であろうとお構いなしに娘を王に、けしかける。
王の周りに沢山の美しい蝶が群がる様子を見つめ、ティアナは考えていた。
『よっしゃ‼︎ お飾り王妃なら、何したって良いわよね。だって、私の存在は空気みたいなものだから………』
1年後……
王宮で働く侍女達の間で囁かれるある噂。
『王妃の間には恋のキューピッドがいる』
王妃付き侍女の間に届けられる大量の手紙を前に侍女頭は頭を抱えていた。
「ティアナ様!この手紙の山どうするんですか⁈ 流石に、さばききれませんよ‼︎」
「まぁまぁ。そんなに怒らないの。皆様、色々とお悩みがあるようだし、昔も今も恋愛事は有益な情報を得る糧よ。あと、ここでは王妃ティアナではなく新人侍女ティナでしょ」
……あら?
この筆跡、陛下のものではなくって?
まさかね……
一通の手紙から始まる恋物語。いや、違う……
お飾り王妃による無自覚プチざまぁが始まる。
愛しい王妃を前にすると無口になってしまう王と、お飾り王妃と勘違いしたティアナのすれ違いラブコメディ&ミステリー
【完結】両親が亡くなったら、婚約破棄されて追放されました。他国に亡命します。
西東友一
恋愛
両親が亡くなった途端、私の家の資産を奪った挙句、婚約破棄をしたエドワード王子。
路頭に迷う中、以前から懇意にしていた隣国のリチャード王子に拾われた私。
実はリチャード王子は私のことが好きだったらしく―――
※※
皆様に助けられ、応援され、読んでいただき、令和3年7月17日に完結することができました。
本当にありがとうございました。
婚約者に見殺しにされた愚かな傀儡令嬢、時を逆行する
蓮恭
恋愛
父親が自分を呼ぶ声が聞こえたその刹那、熱いものが全身を巡ったような、そんな感覚に陥った令嬢レティシアは、短く唸って冷たい石造りの床へと平伏した。
視界は徐々に赤く染まり、せっかく身を挺して庇った侯爵も、次の瞬間にはリュシアンによって屠られるのを見た。
「リュシ……アン……さ、ま」
せめて愛するリュシアンへと手を伸ばそうとするが、無情にも嘲笑を浮かべた女騎士イリナによって叩き落とされる。
「安心して死になさい。愚かな傀儡令嬢レティシア。これから殿下の事は私がお支えするから心配いらなくてよ」
お願い、最後に一目だけ、リュシアンの表情が見たいとレティシアは願った。
けれどそれは自分を見下ろすイリナによって阻まれる。しかし自分がこうなってもリュシアンが駆け寄ってくる気配すらない事から、本当に嫌われていたのだと実感し、痛みと悲しみで次々に涙を零した。
両親から「愚かであれ、傀儡として役立て」と育てられた侯爵令嬢レティシアは、徐々に最愛の婚約者、皇太子リュシアンの愛を失っていく。
民の信頼を失いつつある帝国の改革のため立ち上がった皇太子は、女騎士イリナと共に謀反を起こした。
その時レティシアはイリナによって刺殺される。
悲しみに包まれたレティシアは何らかの力によって時を越え、まだリュシアンと仲が良かった幼い頃に逆行し、やり直しの機会を与えられる。
二度目の人生では傀儡令嬢であったレティシアがどのように生きていくのか?
婚約者リュシアンとの仲は?
二度目の人生で出会う人物達との交流でレティシアが得たものとは……?
※逆行、回帰、婚約破棄、悪役令嬢、やり直し、愛人、暴力的な描写、死産、シリアス、の要素があります。
ヒーローについて……読者様からの感想を見ていただくと分かる通り、完璧なヒーローをお求めの方にはかなりヤキモキさせてしまうと思います。
どこか人間味があって、空回りしたり、過ちも犯す、そんなヒーローを支えていく不憫で健気なヒロインを応援していただければ、作者としては嬉しい限りです。
必ずヒロインにとってハッピーエンドになるよう書き切る予定ですので、宜しければどうか最後までお付き合いくださいませ。
【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
最悪なお見合いと、執念の再会
当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。
しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。
それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。
相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。
最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。
【完結】美しい人。
❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」
「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」
「ねえ、返事は。」
「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」
彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい
LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。
相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。
何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。
相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。
契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる