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13.聖女召喚

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着替えをしたケネスは、ジーナと出会った時のゆったりした服ではなく王子らしいきっちりとした服を着ていた。

しきりに褒めるジーナに戸惑いながらも、ああ、この子は目が悪いんだったと冷めた気持ちになるケネス。

「そんな事言っても、見えてないでしょ……」

「確かにあまり見えませんが、凛々しい雰囲気が漂っておりますわ!」

全く気にせず、ケネスを絶賛するジーナ。

「なんなの……何でそんなに褒めるわけ……?」

「ケネス殿下は素敵なお方ですもの!」

「どこがだよ……そんな事言われた事ないよ」

「どうしてですの! ケネス殿下の魅力が貴族達に伝わらないなんて、おかしいですわ! 魔法による陰謀ではありませんの?!」

「魔法が使えるのは聖女様だけ。今は聖女様は居ないんだから、魔法による陰謀なんてあり得ないでしょ。まぁ、もうすぐ召喚されるけど……お世話役は、兄上かライアンかな?」

魔法と呼ばれる不思議な力は、異世界から呼ばれる聖女のみが行使できる。聖女を呼ぶには、この大陸を統治している3つの国の国王のみが知る秘術を同時に行使しなければならない。

聖女はさまざまな魔法を使い、枯れた土地を肥えさせて、水源を作り、人々を救ってくれる存在だ。

聖女の希望は最優先され、大陸を救って頂いた後は元の世界に帰って頂く。もちろん、聖女が望めば留まって貰うが、留まる事を選んだ聖女は1人だけだ。

聖女召喚は秘術であり、むやみに行う事はタブーとされており、20年に1回のみ召喚の儀を行う。

飢饉が続いた時に、20年経過してはいなかったがやむを得ず聖女を召喚した時は悲惨だった。土地は更に枯れて、とても優秀だった筈の聖女の力は弱く、何も出来ないと泣きじゃくった。神の怒りを感じ取った各国の王が謝罪して、すぐに聖女帰還の儀を行うと枯れた土地が回復したと伝えられている。

聖女召喚は、半年以内に帰せば元の場所、時間に戻れる。その為、聖女の活動期間は半年以内と定められている。何故そのような事が伝わっているかというと、過去に自らの希望で何度も呼ばれた聖女が居たからだ。その聖女は何度も召喚と帰還の儀を行い、最終的に元の世界に帰った。

聖女本人が希望した為か、聖女はいつ呼ばれても強い魔法の力を持っていた。探究心の強い聖女は召喚場所を変えさせたり、わざと長く滞在して時間経過を確認したりと、様々な実験を行った。そして、20年間経過するまで何度も世界を行き来して楽しんだ。今後呼ばれる聖女の為にマニュアルと呼ばれる書籍も執筆した。全て、後世に記録として残っている。

20年間は同じ人物が聖女として呼ばれると言われていたが、確信に変わったのは探究心の高い件の聖女のおかげだ。

以降の聖女召喚は、聖女の執筆したマニュアルに則り、事情を説明し納得頂けた場合のみ半年間だけ魔法の行使を依頼している。今のところ、王族が丁寧な説明をするおかげで、聖女が魔法の行使を拒否した事はない。

今年は聖女召喚の儀が行われる年で、来月には3ヶ国の王が揃い、この城の地下で儀式が行われる。場所は持ち回りで、召喚した国の王族が世話をする決まりだ。
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