聖女は世界を愛する

編端みどり

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番外編

12.独占欲

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「愛梨沙、先にうち帰ってろ。もう心配事はねぇだろ?」

「う、うん! それじゃ、ルネさん、今後も頑張って下さいね。ニック、早く帰ってきてね?」

ニックの腕をつかんで、じっと見てから帰ってやった。ニックは地味にわたしの上目遣い好きなんだよね。殺気は消えたから大丈夫かな。

「そんなに囲ってたらそのうち逃げちゃうよ?」

「……うるさい」

「いやぁ、あのニックが振り回されてるなんてね。良いもの見れたねぇ。とにかく、作戦は成功だね。僕はみんなを助けたい。ニックは、愛梨沙様を狙う奴らを潰したい。僕の情報は役に立ったでしょ?」

「ああ、手を出してきた国はほとんどルネの言ってた国だった。愛梨沙にプロポーズした奴もな。明日正式に抗議する」

「ふふっ、癒しの代金には足りないだろうけどね」

「それは愛梨沙が望んだ事だから代金を請求する気はねぇよ。オレも気になってたからな」

「これで各国は、手に入らない元聖女様よりも、手に入るかもしれない謎の老夫婦の調査に躍起になるだろうね。しっかり噂を流しておくから安心してね。なんなら、老夫婦姿であちこち癒してあげれば良いんじゃない?」

「国王陛下に報告しなきゃなんねぇからなぁ」

「そんなの、報告すればいいじゃない。うちの国王と違って話は分かるんだからさ」

「……ま、そうだな。だけど、愛梨沙を囲おうとするのが気に入らねぇんだよ」

「あの国王なら、愛梨沙様が望まなければ無理強いなんてしないでしょ? 仲良くして誘導するくらいはするだろうけど」

「そこが気にいらねぇんだよ。最近は王妃様と仲が良いしな」

「……ああ、王妃様も元聖女様だっけ? 単に君の分からないあちらの世界の話が出来る王妃様に嫉妬してるだけでしょ」

「……うるせぇ」

「図星か。案外分かりやすいね。さっきから見てると愛梨沙様はニックにべったりだし、何が不安なのさ?」

「オレは、偶然愛梨沙の護衛になっただけだからな」

「……恋なんてどんなものでも、始まりは偶然だよ? 近所に住んでた。街で出会った。護衛だった。そこから仲が深まったのは、ニックと愛梨沙様がお互いを信頼して、愛しあったからでしょ?」

「分かってるつもりなんだけど、こっちにきて最初に会った男がオレだっただけだとも思っちまうんだよな」

「おやおや、そんな事言ってたら愛梨沙様を取られちゃうよ? 僕みたいな男にね」

「あぁ?!」

「冗談だよ。愛梨沙様を狙う男なんてもう居るわけないじゃないか。愛梨沙様もニック以外に興味なさそうだしね」

「そう見えるか?」

「ああ、さっきも赤くなってたけど僕を気に入ったとかじゃなくて、僕が手にキスしたからびっくりしただけだね。なんで既婚者であんなに慣れてないわけ?」

「……ほとんど男に会わせてないし、会う時はオレが居るからな」

「わぁお、独占欲の塊だね。でも愛梨沙様も嬉しそうだし、良いんじゃない? どうせ離す気はないんでしょ?」

「ないな」

「なら、また情報収集しておくからたまには顔出してね。愛梨沙様も連れておいでよ」

「……オレだけで来る」
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