聖女は世界を愛する

編端みどり

文字の大きさ
上 下
77 / 82
番外編

8.夜会の終わり

しおりを挟む
結局、密偵は全員騎士団預かりになった。

『ニック、スパイとか大丈夫なの?』

『怪しそうなトコはいくつかあるぜ。だけど、泳がせた方が便利だろ?』

あ、そういうのもあるのね。ニック凄いなぁ。

「では、我々はそろそろ失礼してもよろしいでしょうか? 私も、妻もこの国から離れる気がない事はご理解頂けましたでしょうか?」

「「「もちろんです!」」」

各国の要人の、大合唱が会場中に響き渡った。

……………………

「これで愛梨沙に手を出そうとする国は減るだろ。これだけやって手を出してきたら、もう容赦しねぇよ」

「ま、大丈夫でしょ」

「怖いのぉ」

「イツキ! テメェなんでうちに居るんだよ!」

「国王陛下からの伝言じゃ。今回だけは良い仕事をしたから見逃すそうじゃ。次は他国の問題に首を突っ込む前に報告しろとの事じゃぞ」

「やば! アリサちゃん怒られてないかな?」

「ほぅ、アリサも関係者かのぉ」

「イツキ、お願い! 国王陛下には内緒にして!」

「構わんぞ。そのかわり、宮廷魔術師にならんかの?」

「……イツキ、愛梨沙が望まない事させんじゃねぇよ」

「英雄殿は怖いのぉ。冗談じゃ。アリサは何もしておらぬ。今回の事は、ニックと愛梨沙の暴走じゃ」

「……暴走……たしかにね。でも、後悔はないよ。むしろ、もっと早くやれば良かった」

「オレが国王陛下に説明して来る。イツキも来い。愛梨沙、メシ作っててくれ。チーズリゾットだっけか? オレも食べたいしな」

「わたしも説明に行くよ?」

「いや、愛梨沙もう疲れてるだろ。オレもすぐメシ食べたいからさ。作っててくれたら助かるんだ」

「分かった! いってらっしゃい」

……………………

「ニック・カスティール、お呼びにより参上致しました」

「単刀直入に聞く、スラムの件はお前たちか?」

「はい。報告しなかった事はお詫びします」

「何故あんな事をした」

「愛梨沙がスラムの事を知って、放っておけないと言い出しました。ですがわかりやすく癒してしまえば、愛梨沙に目をつけられます。だから、夜会の最中に抜け出して癒しに行きました。変装もしていましたから、癒したのは老人夫婦だと思われています」

「分かった。今後は連絡してくれ。ニックと愛梨沙の暮らしを邪魔したりしないから」

「愛梨沙を、宮廷魔術師にしようとなさっているでしょう?」

「それは、彼女が希望したらだ。無理強いなど決してしない。それから密偵の件は聞いていたが本当に良いのか?」

「いくつかまだ怪しそうな人物が居ますので、監視して、尻尾を出したところで潰す方が効率が良いでしょう? 国に不利益は出しませんし、情報が漏れる前に対処するのでご安心下さい。できたら、改心してくれれば良いんですけどね」

「そんなに甘くない事は分かっているだろう?」

「ええ、スパイは罪状が確定したら即死刑ですから、しばらくはオレが監視しますよ」

「何人残る?」

「あの家族を助けた男は大丈夫でしょう。もともと嫌々働かされていたようですしね。他は……半分残れば良い方ですかね。証拠が出たらオレが処刑しますよ。拾ったオレの責任ですし」

「ニック……其方こんな話をするから愛梨沙を置いて来たのかの?」

「ああ、愛梨沙に聞かせる話じゃねぇだろ?」

「だがこれでニックや愛梨沙への勧誘は減るだろう」

「勝手をして申し訳ありませんでした。次からは問題がなければ報告致します」

「問題があっても報告しろ!」

「御意」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者の浮気をゴシップ誌で知った私のその後

桃瀬さら
恋愛
休暇で帰国中のシャーロットは、婚約者の浮気をゴシップ誌で知る。 領地が隣同士、母親同士の仲が良く、同じ年に生まれた子供が男の子と女の子。 偶然が重なり気がついた頃には幼馴染み兼婚約者になっていた。 そんな婚約者は今や貴族社会だけではなく、ゴシップ誌を騒がしたプレイボーイ。 婚約者に婚約破棄を告げ、帰宅するとなぜか上司が家にいた。 上司と共に、違法魔法道具の捜査をする事となったシャーロットは、捜査を通じて上司に惹かれいくが、上司にはある秘密があって…… 婚約破棄したシャーロットが幸せになる物語

五人の少年はカプセルの中で惨めに身をよじる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【完結】キノコ転生〜森のキノコは成り上がれない〜

鏑木 うりこ
BL
シメジ以下と言われ死んでしまった俺は気がつくと、秋の森でほんわりしていた。  弱い毒キノコ(菌糸類)になってしまった俺は冬を越せるのか?  毒キノコ受けと言う戸惑う設定で進んで行きます。少しサイコな回もあります。 完結致しました。 物凄くゆるいです。 設定もゆるいです。 シリアスは基本的家出して帰って来ません。 キノコだけどR18です。公園でキノコを見かけたので書きました。作者は疲れていませんよ?\(^-^)/  短篇詐欺になっていたのでタグ変えました_(:3 」∠)_キノコでこんなに引っ張るとは誰が予想したでしょうか?  このお話は小説家になろう様にも投稿しております。 アンダルシュ様Twitter企画 お月見《うちの子》推し会に小話があります。 お題・お月見⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/804656690/606544354

熱気と淫臭の中で犬達は可愛がられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

デボルト辺境伯邸の奴隷。

ぽんぽこ狸
BL
シリアルキラーとして捕えられた青年は,処刑当日、物好きな辺境伯に救われ奴隷として仕える事となる。 主人と奴隷、秘密と嘘にまみれた二人の関係、その果てには何があるのか──────。 亜人との戦争を終え勝利をおさめたある巨大な国。その国境に、黒い噂の絶えない変わり者の辺境伯が住んでいた。 亜人の残党を魔術によって処分するために、あちこちに出張へと赴く彼は、久々に戻った自分の領地の広場で、大罪人の処刑を目にする。 少女とも、少年ともつかない、端麗な顔つきに、真っ赤な血染めのドレス。 今から処刑されると言うのに、そんな事はどうでもいいようで、何気ない仕草で、眩しい陽の光を手で遮る。 真っ黒な髪の隙間から、強い日差しでも照らし出せない闇夜のような瞳が覗く。 その瞳に感情が写ったら、どれほど美しいだろうか、そう考えてしまった時、自分は既に逃れられないほど、君を愛していた。 R18になる話には※マークをつけます。 BLコンテスト、応募用作品として作成致しました。応援して頂けますと幸いです。

浮気で得た「本当の愛」は、簡単に散る仮初のものだったようです。

八代奏多
恋愛
「本当の愛を見つけたから、婚約を破棄する」  浮気をしている婚約者にそう言われて、侯爵令嬢のリーシャは内心で微笑んだ。  浮気男と離れられるのを今か今かと待っていたから。  世間体を気にした元婚約者も浮気相手も、リーシャを悪者にしようとしているが、それは上手くいかず……。  浮気したお馬鹿さん達が破滅へと向かうお話。

青年は快楽を拒むために自ら顔を沈める

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

明け方に愛される月

行原荒野
BL
幼い頃に唯一の家族である母を亡くし、叔父の家に引き取られた佳人は、養子としての負い目と、実子である義弟、誠への引け目から孤独な子供時代を過ごした。 高校卒業と同時に家を出た佳人は、板前の修業をしながら孤独な日々を送っていたが、ある日、精神的ストレスから過換気の発作を起こしたところを芳崎と名乗る男に助けられる。 芳崎にお礼の料理を振舞ったことで二人は親しくなり、次第に恋仲のようになる。芳崎の優しさに包まれ、初めての安らぎと幸せを感じていた佳人だったが、ある日、芳崎と誠が密かに会っているという噂を聞いてしまう。 「兄さん、俺、男の人を好きになった」 誰からも愛される義弟からそう告げられたとき、佳人は言葉を失うほどの衝撃を受け――。 ※ムーンライトノベルズに掲載していた作品に微修正を加えたものです。 【本編8話(シリアス)+番外編4話(ほのぼの)】お楽しみ頂けますように🌙 ※こちらには登録したばかりでまだ勝手が分かっていないのですが、お気に入り登録や「エール」などの応援をいただきありがとうございます。励みになります!((_ _))*

処理中です...