聖女は世界を愛する

編端みどり

文字の大きさ
上 下
41 / 82

41.その頃の外は

しおりを挟む
「ニック、うまくやってるかな」

「まぁ、大丈夫だろ。ダリス、大量の買い物に付き合わされたって?」

「おう、あんなに買って食い切れるかって言ったんだが、どれが好きかわかんねぇからって、この辺の有名店全部買ったんじゃね?」

「……マジか」

「アイツ、意外に一途なんだな。俺、聖女様はどんな人かって聞いたら、30分惚気に付き合わされた。お前らも、聞くときは時間ある時にしろよ」

「マジか。ニックはモテる割に女に興味ないっぽかったんだけどな」

「だよなー、ニック狙いの女の子、いつの間にか俺らの奥さんだったりするよな」

「あるある。あまりにニックに脈がないからって言ってたぜ。今は興味もないってさ」

「聖女様とうまくいけば良いが、うまくいってもこれから厳しくね?」

「そうだな、これじゃあな……」

街中は、神様が現れたと大泣きしている者が多数。騎士団には、大量の自首をしにきた犯罪者。

そのうえ、神の力なのか街中の病人や怪我人は全て健康になっており、空腹だったはずの路上生活者は、久しぶりの満腹感を感じており、気力も充分。働けないかと仕事を探し始めている。嫌がってやらなかった不人気な仕事も、希望者多数。街の者も心なしか優しくなっており、食料を分けたり、仕事を与えたりしている。

「今回の聖女様は特別強い力をお持ちだ!」

「聖女様がいれば、国は安泰だ!」

「聖女様はずっと神殿にいて頂くことは出来ないのか」

「そうだな! ずっと神殿に居て頂きたいな」

「だけど聖女様の幸せがいちばんだよっ!」

「聖女様は、シスターコリンナによると生涯神殿に仕える事をお望みだそうだぞ!」

「聖女様のご希望なら、問題ない。ありがたいねぇ」

……………………

「みんな、勝手だよな」

「あぁ」

「けど、事情知らなきゃ俺らも同じ事言ってたぜ、多分」

「そうだな」

「そもそも、聖女様ってなんなんだろうな」

「ダリス?」

「だって、おかしいじゃねぇか。ニックも言ってたけど、なんで俺らの世界の問題を他所の世界の女性に被せんだよ。聖女様ってあんなちっさな少女だぜ? 話せんのはあんなおかしな女だけ、それを素直に聞いてる。異常じゃねーか」

「……だな。俺らは我慢ができなくて、一回ずつ交代したもんな」

「ニック、どんだけ我慢したんだろうな。好きな子がいたぶられてて我慢しなきゃなんねぇんだろ」

「殺気出したまんま帰ってきた事、何度もあったもんな」

「手が切れてたこともよくあったぜ」

「とにかく、今は俺たちができる事をやろうぜ。ニックが帰ってきたら、存分にからかってやろう」

「ただな、オレは心配なんだよな」

「何が心配なんだ?」

「ニック、ちゃんと聖女様口説けるのかなって」

「……それは」

「言われてみりゃあ、ニックって女の子口説いてんの見た事もないぜ。多分気の利いた言葉も知らないんじゃないか」

「聖女様も、ニックを信頼はしてくれてるだろうけど、恋愛対象かは分かんなくね?」

「まぁ、そうだが、ひとまずニックの告白の成功を祈ろうぜ。どうやって告白するのか気になるよな」

「ニックなら、ストレートに言うんじゃねぇかな」

「まぁ、そうだよなぁ」

「帰ってきたら、どうやって告白したか、絶対聞こうぜ!」

「ニックと恋愛話する日が来るとはな」

「お前ら! 無駄話してる暇はないぞ! まだ犯罪者の取り調べが残ってんだからな!」

「やべ、仕事戻ろうぜ」

「おう」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者の浮気をゴシップ誌で知った私のその後

桃瀬さら
恋愛
休暇で帰国中のシャーロットは、婚約者の浮気をゴシップ誌で知る。 領地が隣同士、母親同士の仲が良く、同じ年に生まれた子供が男の子と女の子。 偶然が重なり気がついた頃には幼馴染み兼婚約者になっていた。 そんな婚約者は今や貴族社会だけではなく、ゴシップ誌を騒がしたプレイボーイ。 婚約者に婚約破棄を告げ、帰宅するとなぜか上司が家にいた。 上司と共に、違法魔法道具の捜査をする事となったシャーロットは、捜査を通じて上司に惹かれいくが、上司にはある秘密があって…… 婚約破棄したシャーロットが幸せになる物語

五人の少年はカプセルの中で惨めに身をよじる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【完結】キノコ転生〜森のキノコは成り上がれない〜

鏑木 うりこ
BL
シメジ以下と言われ死んでしまった俺は気がつくと、秋の森でほんわりしていた。  弱い毒キノコ(菌糸類)になってしまった俺は冬を越せるのか?  毒キノコ受けと言う戸惑う設定で進んで行きます。少しサイコな回もあります。 完結致しました。 物凄くゆるいです。 設定もゆるいです。 シリアスは基本的家出して帰って来ません。 キノコだけどR18です。公園でキノコを見かけたので書きました。作者は疲れていませんよ?\(^-^)/  短篇詐欺になっていたのでタグ変えました_(:3 」∠)_キノコでこんなに引っ張るとは誰が予想したでしょうか?  このお話は小説家になろう様にも投稿しております。 アンダルシュ様Twitter企画 お月見《うちの子》推し会に小話があります。 お題・お月見⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/804656690/606544354

熱気と淫臭の中で犬達は可愛がられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

デボルト辺境伯邸の奴隷。

ぽんぽこ狸
BL
シリアルキラーとして捕えられた青年は,処刑当日、物好きな辺境伯に救われ奴隷として仕える事となる。 主人と奴隷、秘密と嘘にまみれた二人の関係、その果てには何があるのか──────。 亜人との戦争を終え勝利をおさめたある巨大な国。その国境に、黒い噂の絶えない変わり者の辺境伯が住んでいた。 亜人の残党を魔術によって処分するために、あちこちに出張へと赴く彼は、久々に戻った自分の領地の広場で、大罪人の処刑を目にする。 少女とも、少年ともつかない、端麗な顔つきに、真っ赤な血染めのドレス。 今から処刑されると言うのに、そんな事はどうでもいいようで、何気ない仕草で、眩しい陽の光を手で遮る。 真っ黒な髪の隙間から、強い日差しでも照らし出せない闇夜のような瞳が覗く。 その瞳に感情が写ったら、どれほど美しいだろうか、そう考えてしまった時、自分は既に逃れられないほど、君を愛していた。 R18になる話には※マークをつけます。 BLコンテスト、応募用作品として作成致しました。応援して頂けますと幸いです。

浮気で得た「本当の愛」は、簡単に散る仮初のものだったようです。

八代奏多
恋愛
「本当の愛を見つけたから、婚約を破棄する」  浮気をしている婚約者にそう言われて、侯爵令嬢のリーシャは内心で微笑んだ。  浮気男と離れられるのを今か今かと待っていたから。  世間体を気にした元婚約者も浮気相手も、リーシャを悪者にしようとしているが、それは上手くいかず……。  浮気したお馬鹿さん達が破滅へと向かうお話。

青年は快楽を拒むために自ら顔を沈める

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

明け方に愛される月

行原荒野
BL
幼い頃に唯一の家族である母を亡くし、叔父の家に引き取られた佳人は、養子としての負い目と、実子である義弟、誠への引け目から孤独な子供時代を過ごした。 高校卒業と同時に家を出た佳人は、板前の修業をしながら孤独な日々を送っていたが、ある日、精神的ストレスから過換気の発作を起こしたところを芳崎と名乗る男に助けられる。 芳崎にお礼の料理を振舞ったことで二人は親しくなり、次第に恋仲のようになる。芳崎の優しさに包まれ、初めての安らぎと幸せを感じていた佳人だったが、ある日、芳崎と誠が密かに会っているという噂を聞いてしまう。 「兄さん、俺、男の人を好きになった」 誰からも愛される義弟からそう告げられたとき、佳人は言葉を失うほどの衝撃を受け――。 ※ムーンライトノベルズに掲載していた作品に微修正を加えたものです。 【本編8話(シリアス)+番外編4話(ほのぼの)】お楽しみ頂けますように🌙 ※こちらには登録したばかりでまだ勝手が分かっていないのですが、お気に入り登録や「エール」などの応援をいただきありがとうございます。励みになります!((_ _))*

処理中です...