38 / 82
38.規格外【ニック視点】
しおりを挟む
「その、ニックさんのお母さんの話聞いてて、前から気になってて、美味しいもの食べて元気出たし、今なら街中の人を癒せたりしないかなぁと、思いまして、やってみた次第でございます……」
オレの一言で、癒しを街中全てにかけるなど、規格外にも程がある。母は元気になったのだろうか。気になるが、おそらく大丈夫だろうと確信が持てるのは、聖女様だからか。癒しをかける姿は、神々しくて見とれてしまった。
聖女様の魔法の力は素晴らしい。聖女様の頭の中にはどのような魔法のイメージが詰まっておられるのか。無限収納など思いつかなかったし、透明化も然り。見たことのない街すべてに癒しの力を広げるなど普通は不可能だ。しかし、今はおとなしくしておいて頂こう。
「聖女サマ結界を解かれるまでは、魔法を使われるならば、オレに、必ず、言ってくださいね?」
「はい……」
うっ、涙目で上目遣いなど反則ではないか。なんと愛らしい。
「でも、オレの母のことを案じていただきありがとうございます。離れていても聖女様と連絡が出来れば、元気なのが分かればすぐお知らせしてお礼を申し上げるのですが」
「あ、そっか! 出来るじゃん!」
出来るじゃん? 今度は何を思いつかれた!
「聖女サマ、どのような魔法を使うおつもりですか? オレに、必ず教えてから使ってください!」
「大丈夫です、これは外まで光ったりはしないはずっ! ってか魔法光らないようにしてたのに何でさっき光ったんだろう?」
「魔法を、光らないで発動……そうですね、出来てましたね」
規格外すぎて忘れていたが、聖女様の魔法は発動が光らない珍しいものだ。どのように光らないようにしてるのかを聞くと、魔力で身体を覆って光を抑えているらしい。身体強化の応用か。おそらく、光に暗幕をかけるようなイメージで光を抑えておられるのだろう。
「おそらく先程の癒しは、力が強すぎて光を抑えられなかったのでしょう。ですので、強い魔法を使う場合は、特に、警戒してくださいね!!!」
「わかりました! でもこれは大丈夫! ほら! できたっ!」
この人はオレの話を聞いておられたか? 何故いつの間に魔法が完成しているのだ!
「大丈夫じゃねぇよ! 使う前に説明しろって言っただろ!」
「う、ごめんなさい。でも、ホントに平気だったじゃん! これでいつでも連絡取れるよ! 違和感ないようにペンダント型にした!」
「なんだこれ?」
「つけてつけて!」
対の、ペンダントか? オレのほうには青い宝石が、聖女様には赤い宝石が光っている。ってこれまさか!
「通信魔道具か?!」
「電話だよ! あ、こっちの言葉わかんないけど、お互い通信できる感じだから、そんな名前かな? 見た目は可愛いからペンダントにした!」
とんでもないもの作りやがったな。通信魔道具は希少で、王族くらいしか持ってない。我が国にあるのは、公にされているのは3つ。全て交易のある国との連絡用だ。他にもあるだろうが、10あればいいほうだと思う。
「なぁ、これ持ってんの見られるとオレは牢屋行きだぞ」
「ええ?! マジで? なんで?!」
通信魔道具なんて、見る人が見ればすぐわかる。オレが持てるわけはないのだから、持ってる瞬間に盗難を疑われるか、そうでなくてもオレを投獄して取り上げるだろう。国王はそんな人ではないが、欲深いものは王城にもいる。たとえ通信が出来ない片割れでも、価値はものすごく高いし、聖女様と繋がってるとなれば、価値は天井知らずだ。
オレが透明化を使えれば良い。そうすれば、これを隠せる。聖女様との連絡手段を手放してたまるか!
「あ、あれ? ペンダント消えた?!」
「何とかなったようですね。透明化のコツがわかりました」
そう言って、聖女様の前で消えてみると、みるみる泣きそうな顔をしている。あわてて解除して、抱きしめたら嬉しそうにしておられる。なんと可愛らしいのだ。
「に、ニックさん?!」
「失礼しました。透明化ができるようになりましたので、聖女様のお手を煩わせることはありませんよ。聖女様も、そのペンダントは透明化にするか、無限収納にしまっておきましょうね? 通信魔道具は非常に貴重で王族しか所持を許されていないのです。でも、オレも聖女サマと話したいですからね。だからこのペンダントはオレたちだけの秘密ですよ?」
「わ、わかりました!」
「オレも乱暴な言葉で話してしまい失礼しました」
「いやその、それは全然かまわないというか。むしろそっちのほうがいいというか」
そうなのか? そういえばダリスもマリアとは敬語で話したりしていないな。騎士仲間の結婚を後押ししたことが何度かあるが、皆最初は丁寧な言葉遣いだが、カップルになってからは砕けた口調が多い気がする。というか、いつまでも聖女様でいいのか? なんとなく意識してもらうために、少しだけ砕けて聖女サマなどと呼んでいるが、そもそも彼女の名前は何だ? 愛し合う者同士は名前で呼ぶのではないのか? オレは、口説こうとしておきながら基本的なことができていなかったではないか!
「じゃぁ、結界の中だけはお互い敬語をやめるか。オレのこともニックでいいぜ。いちいちさん付け要らねぇよ。それで、オレも聖女サマを名前で呼びたいんだが、名前、教えてくれるか?」
「なまえ……」
ちょっと待て! 何故号泣しておられるのだ! オレは何を間違えた! やはりきちんとした言葉遣いのほうが良かったのではないか?! だが、表情は笑っておられる! どうなってるんだ!
「こっちにきて、初めて名前聞かれた……嬉しい」
そう言って聖女サマは、しばらく泣き続けた。
オレの一言で、癒しを街中全てにかけるなど、規格外にも程がある。母は元気になったのだろうか。気になるが、おそらく大丈夫だろうと確信が持てるのは、聖女様だからか。癒しをかける姿は、神々しくて見とれてしまった。
聖女様の魔法の力は素晴らしい。聖女様の頭の中にはどのような魔法のイメージが詰まっておられるのか。無限収納など思いつかなかったし、透明化も然り。見たことのない街すべてに癒しの力を広げるなど普通は不可能だ。しかし、今はおとなしくしておいて頂こう。
「聖女サマ結界を解かれるまでは、魔法を使われるならば、オレに、必ず、言ってくださいね?」
「はい……」
うっ、涙目で上目遣いなど反則ではないか。なんと愛らしい。
「でも、オレの母のことを案じていただきありがとうございます。離れていても聖女様と連絡が出来れば、元気なのが分かればすぐお知らせしてお礼を申し上げるのですが」
「あ、そっか! 出来るじゃん!」
出来るじゃん? 今度は何を思いつかれた!
「聖女サマ、どのような魔法を使うおつもりですか? オレに、必ず教えてから使ってください!」
「大丈夫です、これは外まで光ったりはしないはずっ! ってか魔法光らないようにしてたのに何でさっき光ったんだろう?」
「魔法を、光らないで発動……そうですね、出来てましたね」
規格外すぎて忘れていたが、聖女様の魔法は発動が光らない珍しいものだ。どのように光らないようにしてるのかを聞くと、魔力で身体を覆って光を抑えているらしい。身体強化の応用か。おそらく、光に暗幕をかけるようなイメージで光を抑えておられるのだろう。
「おそらく先程の癒しは、力が強すぎて光を抑えられなかったのでしょう。ですので、強い魔法を使う場合は、特に、警戒してくださいね!!!」
「わかりました! でもこれは大丈夫! ほら! できたっ!」
この人はオレの話を聞いておられたか? 何故いつの間に魔法が完成しているのだ!
「大丈夫じゃねぇよ! 使う前に説明しろって言っただろ!」
「う、ごめんなさい。でも、ホントに平気だったじゃん! これでいつでも連絡取れるよ! 違和感ないようにペンダント型にした!」
「なんだこれ?」
「つけてつけて!」
対の、ペンダントか? オレのほうには青い宝石が、聖女様には赤い宝石が光っている。ってこれまさか!
「通信魔道具か?!」
「電話だよ! あ、こっちの言葉わかんないけど、お互い通信できる感じだから、そんな名前かな? 見た目は可愛いからペンダントにした!」
とんでもないもの作りやがったな。通信魔道具は希少で、王族くらいしか持ってない。我が国にあるのは、公にされているのは3つ。全て交易のある国との連絡用だ。他にもあるだろうが、10あればいいほうだと思う。
「なぁ、これ持ってんの見られるとオレは牢屋行きだぞ」
「ええ?! マジで? なんで?!」
通信魔道具なんて、見る人が見ればすぐわかる。オレが持てるわけはないのだから、持ってる瞬間に盗難を疑われるか、そうでなくてもオレを投獄して取り上げるだろう。国王はそんな人ではないが、欲深いものは王城にもいる。たとえ通信が出来ない片割れでも、価値はものすごく高いし、聖女様と繋がってるとなれば、価値は天井知らずだ。
オレが透明化を使えれば良い。そうすれば、これを隠せる。聖女様との連絡手段を手放してたまるか!
「あ、あれ? ペンダント消えた?!」
「何とかなったようですね。透明化のコツがわかりました」
そう言って、聖女様の前で消えてみると、みるみる泣きそうな顔をしている。あわてて解除して、抱きしめたら嬉しそうにしておられる。なんと可愛らしいのだ。
「に、ニックさん?!」
「失礼しました。透明化ができるようになりましたので、聖女様のお手を煩わせることはありませんよ。聖女様も、そのペンダントは透明化にするか、無限収納にしまっておきましょうね? 通信魔道具は非常に貴重で王族しか所持を許されていないのです。でも、オレも聖女サマと話したいですからね。だからこのペンダントはオレたちだけの秘密ですよ?」
「わ、わかりました!」
「オレも乱暴な言葉で話してしまい失礼しました」
「いやその、それは全然かまわないというか。むしろそっちのほうがいいというか」
そうなのか? そういえばダリスもマリアとは敬語で話したりしていないな。騎士仲間の結婚を後押ししたことが何度かあるが、皆最初は丁寧な言葉遣いだが、カップルになってからは砕けた口調が多い気がする。というか、いつまでも聖女様でいいのか? なんとなく意識してもらうために、少しだけ砕けて聖女サマなどと呼んでいるが、そもそも彼女の名前は何だ? 愛し合う者同士は名前で呼ぶのではないのか? オレは、口説こうとしておきながら基本的なことができていなかったではないか!
「じゃぁ、結界の中だけはお互い敬語をやめるか。オレのこともニックでいいぜ。いちいちさん付け要らねぇよ。それで、オレも聖女サマを名前で呼びたいんだが、名前、教えてくれるか?」
「なまえ……」
ちょっと待て! 何故号泣しておられるのだ! オレは何を間違えた! やはりきちんとした言葉遣いのほうが良かったのではないか?! だが、表情は笑っておられる! どうなってるんだ!
「こっちにきて、初めて名前聞かれた……嬉しい」
そう言って聖女サマは、しばらく泣き続けた。
0
お気に入りに追加
332
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は婚約破棄されて破滅フラグを回収したい~『お嬢様……そうはさせません』イケメンツンデレ執事はバッドエンドを許さない~
弓はあと
恋愛
悪役令嬢は断罪されて平民落ち?望むところよ!
平民になれば、身分を気にせずに彼と恋ができる。ビバ平民ライフ!
私がいるこの世界は、前世で何度も繰り返しやっていた乙女ゲーム『メイド・イン・パラダイス~聖剣の乙女は誰?~』の世界。
そして悪役令嬢の私は、ゲームの中でモブですらなかった執事のクリフに恋をしている。
だから破滅フラグを回収して、王太子殿下に婚約破棄されたいの。
って、クリフ!?なに私の邪魔してるのよ!!??
※このお話は、悪役令嬢としてバッドエンドを目指しているのに、なぜか無自覚に周りから愛されてしまう令嬢のお話です。
悪役令嬢の弟はシスコンでヤンデレかも?
異世界ファンタジーのため、設定はゆるふわ仕様となっております。
また、ご都合主義満載です。ごめんなさい。
R15指定は念のため。
※なんだか弟君や王太子の方が腹黒キャラな雰囲気に仕上がったため、タイトル「腹黒執事」から「ツンデレ執事」に変更しました。
婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。
妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。
……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。
けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します!
自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。
(完結)妹の婚約者である醜草騎士を押し付けられました。
ちゃむふー
恋愛
この国の全ての女性を虜にする程の美貌を備えた『華の騎士』との愛称を持つ、
アイロワニー伯爵令息のラウル様に一目惚れした私の妹ジュリーは両親に頼み込み、ラウル様の婚約者となった。
しかしその後程なくして、何者かに狙われた皇子を護り、ラウル様が大怪我をおってしまった。
一命は取り留めたものの顔に傷を受けてしまい、その上武器に毒を塗っていたのか、顔の半分が変色してしまい、大きな傷跡が残ってしまった。
今まで華の騎士とラウル様を讃えていた女性達も掌を返したようにラウル様を悪く言った。
"醜草の騎士"と…。
その女性の中には、婚約者であるはずの妹も含まれていた…。
そして妹は言うのだった。
「やっぱりあんな醜い恐ろしい奴の元へ嫁ぐのは嫌よ!代わりにお姉様が嫁げば良いわ!!」
※醜草とは、華との対照に使った言葉であり深い意味はありません。
※ご都合主義、あるかもしれません。
※ゆるふわ設定、お許しください。
聖女である御姉様は男性に抱かれたら普通の女になりますよね? だから、その婚約者をわたしに下さいな。
星ふくろう
恋愛
公爵家令嬢クローディアは聖女である。
神様が誰かはどうだっていい。
聖女は処女が原則だ。
なら、婚約者要りませんよね?
正妻の娘である妹がそう言いだした時、婚約者であるこの国の王子マクシミリアンもそれに賛同する。
狂った家族に婚約者なんか要らないわ‥‥‥
クローディアは、自分の神である氷の精霊王にある願いをするのだった。
他の投稿サイトにも掲載しています。
英雄になった夫が妻子と帰還するそうです
白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。
愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。
好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。
今、目の前にいる人は誰なのだろう?
ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。
珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥)
ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。
見捨てられたのは私
梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。
ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。
ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。
何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ご愛妾様は今日も無口。
ましろ
恋愛
「セレスティーヌ、お願いだ。一言でいい。私に声を聞かせてくれ」
今日もアロイス陛下が懇願している。
「……ご愛妾様、陛下がお呼びです」
「ご愛妾様?」
「……セレスティーヌ様」
名前で呼ぶとようやく俺の方を見た。
彼女が反応するのは俺だけ。陛下の護衛である俺だけなのだ。
軽く手で招かれ、耳元で囁かれる。
後ろからは陛下の殺気がだだ漏れしている。
死にたくないから止めてくれ!
「……セレスティーヌは何と?」
「あのですね、何の為に?と申されております。これ以上何を搾取するのですか、と」
ビキッ!と音がしそうなほど陛下の表情が引き攣った。
違うんだ。本当に彼女がそう言っているんです!
国王陛下と愛妾と、その二人に巻きこまれた護衛のお話。
設定緩めのご都合主義です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる