聖女は世界を愛する

編端みどり

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18.逃走中

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真夜中になったので、逃走開始っ!
人の気配を察知するレーダーみたいな魔法もできたから、周りを警戒しながら透明化で進む。

あーでも、どこも閉まってるし道わかんないっ。

そうだ、そもそも道なりに行く必要なくね?! よくあるじゃん、壁すり抜けるやつ! 魔法はイメージ、魔法はイメージっと。

サクッと神殿を出れたな。うわっ、暗いけど街並みとか全然違う! アスファルトがない!

夜見かけないカッコの女がフラフラしてたら危ないし、しばらく透明化はしておく方が良いかな。結構神殿で迷ったから、もう明け方だし街の人たちの服見て似たカッコにならないと。

そういえば、今着てる服っていつの間にか着せられてたのよね。最初は気絶ばっかりしてたから、記憶にないんだよなぁ。わたしの私服どこに消えたんだろ。なんか気持ち悪いし、別の服作って捨てちゃおうかな。

そんな事を思っていると、小さな子どものすすり泣く声が聴こえた。

「えぐっ、えぐっ」

うわぁ、小さな女の子がめっちゃ泣いてる。てか、服もボロボロだし、身体中泥だらけ。

「どうしたの?」

姿を現して話しかける。この世界に来て初めて自分から話しかけたから、緊張したけど今はこの子の事が心配だし、勇気を振り絞る。

「おなか、すいたの……」

あああ! わかる、わかるよ! お腹空いたらツラいよね!!!

「ごめんね、お姉ちゃんもご飯は持ってないの」

女の子があからさまにガッカリする。そうよねー、でも、今のわたしなら助けられる。

「だけどね、ほら」

安心させる為に、手を握り光を少しだけ出して癒しをかける。あとついでに安心魔法もプラスする。

「どう? お腹すいたの良くなったんじゃない?」

「うん! ありがとう!」

よく見るとボロボロだねこの子。浄化もかけよう。範囲広すぎるとバレちゃうから、この子だけ浄化をかける。びっくりした様子だけど、服もキレイになったね。うん、かわいいかわいい。

「大丈夫? おうちまで送ろうか?」

「おうち、ここ」

「え?!」

ココって、橋の下ですけど?!
話を聞いてみると、少し前まではお母さんとここに住んでいたそうだが、ある日お母さんが動かなくなったんだと説明してくれた。

「そんな……」

今まで見たことない現実に、頭がガンガンする。

「でもね、お母さんがごはん用意してくれてたから平気だったよ。でも、昨日でもうなくなったの。だからね、お腹すいて泣いてたの。お姉ちゃんのおかげで助かったよ。ありがとう。ねぇお姉ちゃん、なんで泣いてるの?」

わたしは、女の子を抱きしめてずっと泣いた。神様お願い、この子がしあわせになるようにして。ちゃんとお腹いっぱいご飯たべれるようにして。

気がついたら、神様に祈っていたらしく、眩しい光を放っている事に気がつかなかった。

「聖女様、何をなさっているのですか?」

ラスボスが、鬼の形相で現れた事にも気がつかなかった。
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