聖女は世界を愛する

編端みどり

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4.クビにはなりたくない【ニック視点】

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「また気絶なさったわね。まったく、なんて貧弱なのかしら」

気絶した聖女様を、シスターコリンナは冷たく見つめている。
聖女様はこちらに召喚されてまだ数日だ。なのに、なんでこんなことをするんだ? 神殿に懲罰があることは知っていたし、騎士仲間でも受けたことがあるやつはいたが、こんなにひどいもんなのか? 

「疑問に思うことはありません。聖女様の教育係は、わたくしです。犬猫のしつけも、最初が肝心でしょう?」

得意げに笑うシスターコリンナが、悪魔に見えるのはオレだけか?

「私は、神殿のご指示通り聖女様をお守りするだけでございます」

「いい心がけね。いいこと、聖女様と会話をしていいのは、わたくしだけよ。護衛騎士は、聖女様をお守りするため、そばにいるだけ。決して話しかけたり、聖女様から話しかけられても返事をしてはなりませんわ! 話したら鞭打ちの上、クビよ!!!」

「承知いたしました」

教会の指示に逆らえば、オレは職をなくす。オレには病気の母がいる。今オレが無職になるわけにはいかない。

「だから、これでいいんだよな……」

だけど、聖女様の言葉が頭から離れない。助けてって、あれはオレに言ってたんだよな?

いや、ダメだ!
どちらにしろ、常にあのシスターコリンナが聖女様のそばにいるんだ。オレができるのは、護衛をすることだけだ。仕事を全うしろ。
騎士になって、自分の意に沿わないことでも、上官の命令は聞いてきたじゃないか。その時も、苦い気持ちになったもんだが、今回もそれと同じ。
シスターコリンナは、今回の騎士団の依頼人でオレたちの上官にあたる。彼女の指示は必ず聞くように言われているんだ。

「くそっ!」

騎士やってても、イヤなことはある。そんな時は、酒場で一杯飲んで帰るんだ。
そうすれば、すぐに忘れられた。

だと言うのに今日は、何杯飲んでも、聖女様の顔が忘れられなかった。
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